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貴方に触れていたいだなんて。
フロリド いちご飴
ひくッ、と喉が震える。今、僕を抱きしめているのは、本当にフロイドなのだろうか。リドルには、自分が生み出した幻想だとしか思えなかった。嘘だ、こんなの。自分自身で否定をする。ありえない、と唱え続ける頭とは裏腹に、抑えきれない感情が膨れ上がるのを感じた。
「だぁいじょうぶ。俺、ちゃあんとぎゅ~してあげるから。だから、一緒に息頑張ろ?」
吸って、吐いて、と酷く優しい声がする。震える事しか出来なかった心が融かされてゆく。大きな温もりが、躰ごと心を包み込んで温めてくれた。
「金魚ちゃん、ごめんねぇ」
リドルの呼吸が落ち着きを見せ始めた時、フロイドが話し出した。
「俺、金魚ちゃんの事を全然考えきれてなかったよね。勝手なこと言って、ごめんねぇ」
リドルは静かに耳を傾ける。
「でもね、俺―――金魚ちゃんは、嫌かもしれないけど―――金魚ちゃん、いや、リドルの事、」
ちゃんと、好きだよ。
優しい響きに、リドルは耐えきれず涙をこぼす。隣に居られるんだという安心感は、リドルを救った。僕も好きだ、と言う前に言わなきゃいけないことが多すぎて、言葉も簡単には出てきやしない。
「~ッ、ふろ、いどッ…ふろいど、ぅう、」
幻想でも、夢でもなんでもいい。ただ、彼が自分を選んでくれた事実に、リドルは縋ることしか出来なかった。
「ごめッ、なさ、ぃ…っ、ぼく、っ…ひどいことッ、言って、ぇ…っごめ、…ひ、ぅ」
ぼたぼたと、大粒の涙が溢れ出す。感情よりも先に躰が反応し、リドルの脳内はパンク寸前だった。会いたかった。謝りたかった。歓喜と安堵がごちゃ混ぜだ。中でもいちばん強いのは、フロイドへの愛情だったと、後に彼は言う。
ふは、と笑ったのはフロイドだった。ぎゅぅとリドルを抱き締め、俺もごめんねと額に口付ける。もう傷つけないと固く誓い乍ら。
「俺と、お付き合いしてください。…リドル」
「っ、…あぁっ!!宜しく頼むよっ、」
その後、暫くして。
「それで、付き合えたのか?」
「えぇ、付き合えたみたいですよ。先日は2人でフロイドの部屋に泊まっていたようですし」
「はぁ…長かったな」
「ええ、本当に。でもいいじゃありませんか
幸せそうで」
「まぁ、そうだな」
結果オーライだ、とトレイは息を吐く。些か不器用な片割れを見守ってきたジェイドも、にこにこと笑顔を絶やさない。2人とも、保護者のような観点でそれぞれを見守っていたからか、どうも行先が心配らしい。
「ジェイド~、あげる~」
「おや、これは―――いちご飴でしょうか」
「そーだよ、金魚ちゃんと作ったんだ~」
ウミガメ君もあげる~、と差し出されたそれは艶々で、食欲を存分に唆る赤色だった。そういえば昨晩、リドルが作り方を聞いてきたことを思い出す。
「それにしても、どうしていちご飴を?」
「ん~?俺たちみたいだなって思ったの」
「何がだ?」
「だ~か~ら、」
真っ赤な苺を、飴が包んで守るんだよ。
頬を紅潮させたフロイドは、早口にそう言うと、どこかへ行ってしまった。
本当に、手のかかるカップルだこと。
ジェイドとトレイは顔を見合せて、2人で肩を竦ませてみせた。
その日、ケイトのマジカメには、仲睦まじく飴作りに勤しむ2人が投稿されたのだとか。