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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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それから一週間後――。


「えっ!!同棲してるのにまだ何もしてないの!?」


「あのっ!遥さん、声が大きいです!」


遥さんに誘われて、久し振りに二人きりでランチタイム。

職場のラウンジでお弁当を食べている。

遥さんには蒼さんに告白した後、帰ってからすぐ報告した。


「桜のお姉ちゃんになれる!」

そう喜んでくれ、嬉しかった。

遥さんが忙しく、なかなか直接話をすることができなかった。

今日は久し振りに昼食の時間が一緒になって、それで――。


「蒼とはどう?一緒に寝てるの?ヤることはやった?」


なんて聞かれてしまった。

蒼さんとは、あれから特にこれと言って何もない。

変わらない毎日だけど、蒼さんと一緒に住んでいること自体幸せなことだし……。


それに――。

こんなこと話して良いのかわからないけど……。


「夜帰って来ると、ただいまの……」


「ただいまの……?」

遥さんがさっきとは違い、ニコニコしている。


「ただいまの……。ハグをしてくれます!」


「そう!ただいまのハグしてくれる……って、ハグだけ?キスは?ただいまのチューでしょ!?」


ただいまのチュー!?

想像しただけで恥ずかしくて顔が赤くなっちゃう。


「もう。我が弟ながら奥手すぎて情けないわ……」

遥さんは顔を手で覆っている。


「そんなことないです!蒼さんはいつも優しいですし。ハグだけでも幸せで、心臓がキュンってなりますよ?」


玄関まで迎えに行くと、蒼さんはもちろんまだ椿さんの姿だ。

憧れの綺麗なお姉さんにギュッてしてもらえるだけで、嬉しい。


それに観覧車の中で蒼さんにキスされたことを思い出すだけで、ギューって胸が締めつけられて、心臓の鼓動が速くなる。

毎日あんなことしてたら、心臓がもたないよ。


「はぁ……。それは良かったわ」

遥さんは半ば諦めたという表情をしていた。


「今度、蘭子ママさんにも報告に行くつもりです。お世話になっているので、挨拶に行きたくて……」


お店では詳しいことは話せないかもしれない。|蒼《椿》さんは、ナンバーワンの人気らしいし、他のお客さんの前であまり話してはいけない気がする。


「そうね。蘭子ママも桜に会いたがっているから。会ったらよろしく伝えておいて?」


「はい!わかりました」


明日は休みだし、蒼さんに連絡をして今日会いに行こうかな。

こうやって遥さんともしっかり話せたし。

急な話で迷惑かなと思いながらも蒼さんに

<今日、蘭子ママさんに挨拶に行ってもいいですか?>

LIEEを送った。


午後の休憩時に携帯を見ると、蒼さんから返事が来ていた。

<良いよ。蘭子さんにも伝えておくから。気を付けて来てね?桜に会えるから俺も嬉しい>

文章を読んだだけでドキドキしてしまう。

蒼さんが初めての彼氏というわけではない。

けれど、初恋のように彼のことを想うだけでソワソワしてドキドキして――。


こんな幸せな私は、いつか罰が当たってしまうんだろうか。


「お疲れ様です」

何事もなく、定時で帰ることができた。

遥さんは外出先からの直帰みたい。後で連絡しよう。


ワクワクしながら、蒼さんが働いているBAR<STAR>へ向かう。

階段を下り、地下へ。

扉を開けると<カラン>と鈴の音が鳴った。


「こんばんは……」

挨拶をしながら入って行くと――。


「いらっしゃいませ――!!あらっ!桜ちゃん、久し振り!元気だった?って言っても、この間プライベートで偶然会ったばかりだったわぁ!!」

着物を着た蘭子ママさんが仕事の疲れを吹き飛ばすような元気な声で迎えてくれた。


「蘭子ママさん!」

第二のお母さんに会ったような気分になり、思わず蘭子ママさんに抱き付いてしまった。


「あらっ!嬉しい。よしよし」

大きな厚い手、そして抱き付いてみるとお父さんのようながっしりした身体つきだった。思わず安心感を抱いてしまう。


そんな時――。

「蘭子ママ、《《私の》》桜に何してるの?」


その声!?

「椿《蒼》さん!」

蘭子ママさんに抱きつきながら声の主を見ると、そこには椿さんが腕を組みながら立っていた。


あれっ?なんだか不機嫌そう。

そんな椿さんの様子を全く気にしない様子で

「桜ちゃんが可愛くて……。思わずよしよししちゃったわ。ごめんなさいね」

そう言いながらまだ私の頭を撫でてくれている。


「桜も……。私のこと、指名してくれるんじゃなかったの?嫉妬しちゃうわ」


そうだった。

私は椿さんを指名しているから、蘭子ママさんにこういうことしちゃいけなかったよね。

そうだ。そもそもスタッフさんにボディタッチはあんまりしちゃいけないんだった。


「ごめんなさいっ!」

私は慌てて蘭子ママさんから離れた。


「ごめんなさい。蘭子ママさんを見たらすごく嬉しくなっちゃって。お母さんに会ったような気分になって……。今度から気を付けます」


頭を下げて謝る私に

「そんな謝らないで頂戴。私も娘に会ったような気分よ?気にしないで。オーナーである私は、ボディタッチOK、いつでも大歓迎よ」

ウインクをしてくれ、その場の雰囲気を和ませてくれた。


「椿が嫉妬しすぎなのよ?本当に桜ちゃんのことが大好きなんだから」


オホホホホと口元に手を当てながら笑っている。

椿《蒼》さんをチラッと見る。


すると椿さんは私にグッと急に近寄り、耳元で

「帰ったらお仕置きね?」

他のスタッフさんに聞こえないような低い声でそう囁いた。

綺麗なオネエ?さんは好きですか?

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