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『白霞に溶ける声 ― 君という温度 ―』「……もうちょっとだけ、動かないで」
囁くように言った無一郎の声は、やけに静かで、なのに胸を締めつけるように甘い。
彼の手が、そっとわたしの髪に触れる。
さらさらと指先が滑って、耳の後ろをなぞったかと思うと、そのまま首筋に沿って触れられる。
「君の肌、すごく……あったかい」
囁きながら、彼はもう一度、わたしの唇に口づけてきた。
今度のキスは、ゆっくりで深くて、どこか確かめるような感触だった。
唇が何度も擦れ合い、彼の舌が遠慮なくわたしの中へと入り込んでくる。
「ん……ふ、ぁ……」
吐息がもれるたび、無一郎の指がわたしの腰に回され、ぎゅっと引き寄せられる。
「さっきまで泣きそうだったのに……今、すごく可愛い」
彼の言葉に、思わず視線をそらそうとした瞬間――
顎をすっと持ち上げられ、再び唇が重なった。
もう何度目かわからないキス。
それでも、彼は満足しないように何度も、何度も重ねてくる。
舌が絡むたび、彼の手が身体をゆっくりと撫でる。
背中を包むように触れ、指先が肩へ、鎖骨のあたりへ――
「震えてる。……怖い?」
問いかけとは裏腹に、彼の手つきはやさしくて、どこか迷いを含んでいた。
「……違う。怖くない、けど……」
わたしが答えると、無一郎はわずかに笑った。
子供のような無垢さと、大人びた執着が交差するその笑みは、どこまでも残酷で、どこまでも愛おしかった。
「じゃあ……もっと、触れてもいいよね」
静かに、けれど決して逃さない力で、彼はまたわたしの唇を塞いだ。
唇も、体温も、わたしの心までも――時透無一郎に、ゆっくりと奪われていく。