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「間違いないと思う。マナの様子を見てピンときたの。それで昨日薬局で妊娠検査薬を買って、朝のホームルームの前にマナに使わせてみたの。そしたら――」
「嘘だろ? 何かの間違いだろ?」
血の気が引いて行くのがわかった。動揺しているのをゆずきに悟られないように平静をってはいるけど、明らかに戸惑いを隠しきれていなかった。
「ホントだよ。こんなこと嘘つける訳ないでしょ!」
「――――」
「どうしたらいい?」
ゆずきは今にも泣き出しそうな顔をしていた。冷静に振る舞ってはいたけど、誰にも言えなくて不安だったに違いない。
「マナは何て言ってたんだ?」
「産みたいって言ってた」
「高校生なんだから無理に決まってる」
「それともう1つ問題があるの――」
「何だよ?」
ゆずきの不安そうな表情から聞きたくないと思ってしまった。
「マナの相手の男性なんだけど――」
「3年の飯塚だろ?」
「そうとは言い切れないみたい」
「どういうことだよ? 飯塚じゃなければ一体他に誰がいるっていうんだよ?」
「あのさ、マナから聞いたんだけど――実は飯塚先輩に頼まれて、飯塚先輩の友達数人とやらされたらしいの――」
「はぁ? 何だそれっ! 飯塚のダチに回されたってことかよ?」
「そうみたい――」
「アイツ、ふざけやがって! マナを何だと思ってるんだ!」
「圭太、落ち着きなって!」
「落ち着いていられるかよ! アイツら全員ぶん殴らねえと気がすまねえ。今から行って2度とそんなことが出来ねえようにしてやるよ!」
俺はゆずきの言葉を無視して、階段に向かって走り出した。
「圭太、待ちなって!」
ドアノブを握って扉を開けようとした瞬間、背後からゆずきに腕を掴まれた。
「ゆずき、離せよ!」
「嫌だよ! 絶対に離さない!」
「離せって!」
「ダメっ!」
俺を睨みつけているゆずきの手を振りほどいた。
パシッ!
「圭太、いい加減にしなよ! 何自分を見失ってるの!」
「ゆずき――」
「落ち着いて考えなよ。ここで圭太が、飯塚先達たちを殴ってしまったら、マナが妊娠してることだってバレちゃうかもしれないんだよ。それだけじゃ済まないよ。圭太自身だって、暴力事件を起こしたんだから停学や退学処分だって免れないよ!」
「――――」
確かにゆずきの言う通りだった。
「もし、マナが助かったとしても圭太が退学なんてことになったら、この先誰がマナを守っていくの?」
「その時は――ゆずき、お前が守ってやってくれ」
「私には無理―――」
「どうして?」
「そっ、それは――無理なものは無理なの。ゴメン――」
ゆずきは今までに見たことのないような悩ましげな表情をしていた。