もしも、自分が好きなもの になれるとしたら
貴方はなりたいですか?
¿?
ほんの少しだけ開いた窓の隙間から肌寒い風が入ってくる深夜。
息を吸うだけで精一杯な現実から目を背ける様に、見始めた動画サイトの広告での言葉だった。
手癖のままにスキップした広告だったけれど、不思議とその言葉が頭に残って 少しだけ
飛ばさず見ても良かったかもな…
なんて思った。
でも、あんな言葉から始まる様な物だからロクなものでは無いだろう。
詐欺だとか、宗教だとか。
…所詮、予想にすぎないけれど。
「まぁ、考えるだけならいいかな。」
もしも、私の好きなものになれるなら…。
まず、私が好きなものはなんだろう?
猫、犬、ハムスター、フルーツ、リボン…
流石に、『なれるなら』と言ってるくらいだし人限定かな。
そうすると、目につくのは広告をスキップしてからずっと流れていたスマホに映る女の子。
正統派ヒロインの様なハリのある可愛らしいアニメ声で
ゲームも上手くて、トーク力も持ち合わせている。
更に、コラボ動画も難無くこなせるコミュ力と器用さ。
加えて、もうすぐチャンネル登録者も10万人を突破しそうなほど多くの人を魅了し、愛されている。
そんな彼女は、【個人勢VTuber】と言うものらしい。
話しを戻して、私がそんな彼女になれるならどうだろう?
私とは真逆の彼女になれるなら…。
きっと、宝の持ち腐れになってしまう。
今、こうして楽しそうに笑っている彼女も、始める当初は勇気とそれ相応の緊張があっただろう。
彼女はそれを乗り越える力があったけれど、私は?
私には、その勇気が無い。
そもそも、『人に見て欲しい』と思えるほどの自信が無い。
やっぱり、私は彼女にならない方が良い。
彼女以外で誰かになるなら、せめて、人と話す事が嫌だと思わない様な人になりたい。
そんな事を考えていると、ほとんど内容を聞いていなかった動画が終わってしまったので、仕方なく布団に潜り目を閉じた。
¡!
肌寒い感覚に驚いて体を起こす。
今日ってそんなに寒い予報だったっけ?
と思いつつ薄目を開ける。
目に入ったのは、タバコの吸い殻などの小さなゴミが散乱している薄暗い路地裏……
ん?
え??
「みー!?」
はい!?
今、子猫の鳴き声が…わ、私から…。
いや、待って、なに?
『子猫の鳴き声が、私から。』とか言う意味不明な言葉。
ここはひとまず、冷静になろう。
考えるのはそれから__。
コメント
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もしかして、私達_____ 「入れ替わってるーーーー!?」 ですねこりゃ とりあえず子猫引き取ってもいいですか