テラーノベル
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放課後の夕焼けが、教室の窓にオレンジ色を映していた。
机に伏せながら、ぼんやりと指先をいじる。
(ちゃんと言えなかった。でも、もういいやって思えない)
隣の席にはいない彼の姿を思い浮かべながら、心の奥から浮かんできた感情に素直になる。
――もう、逃げたくない。
手帳を開いて、ページの隅に小さく書いた「週末予定」に視線を落とす。
その空白を、彼で埋めたくて仕方がなかった。
放課後の帰り道。
見つけた彼の背中に、声をかける。
『先輩!』
少し振り向いた顔が、思ったより優しくて、それだけで心があたたかくなった。
「ん? どうした?」
『今度さ、また……ショッピングモール、行かない?』
緊張して、息が少し詰まった。
出水先輩は一瞬、目を見開いたあと――
「……いいじゃん。久々に、またふたりで行こっか」
その笑顔が嬉しすぎて、今にも泣きそうだった。
けど、それを悟られたくなくて、あえて軽く笑う。
『うん、どうせヒマだし』
ほんとはすごく、行きたかったくせに。
ほんとはすごく、隣にいたかったくせに。
(またこうして、少しずつ近づけたらいい)
そう願いながら、夕焼けの帰り道を並んで歩いた。
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