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「尊さん、私、多賀宮がとても好きになってきました」
そう言うと、彼はプハッと笑う。
「確かに、色々お願いしたくなるよな。……ただ、『ああしてください、こうしてください』って一方的に願望を押しつけるよりは、『今こういう事を頑張っていて、成し遂げるために努力しているので、お見守りください』って、あくまで自分が頑張る方向で参拝したほうがいいと思う」
「そうですよね~。神様としても『便利屋じゃないんだから』って思っちゃいますよね」
思わず、「沢山食べても健康診断に引っ掛からず、元気でいられますように」とお願いしそうになっていたけれど、努力しなきゃ駄目だ。努力……。
そして別宮・荒祭宮への参拝を終えて、無事伊勢神宮のお参りが終わった。
「さて~! お陰様でのおかげ横町!」
「あはは! 朱里さん、水を得た魚みたい」
「朱里だから、赤福が呼んでるんですよ……」
それを聞き、大地さんが「わはは!」と笑う。
私たちはおかげ横町の街並みを楽しみつつ、赤福については本店に行きたいので、内宮前支店を横目で見ながら通り過ぎる。
「くんくん、こっちにお団子の匂いがしますね……」
途中でまた先ほどのように皆さんとばらけ、別行動になった私は、マップを見ながら足を進める。
「センサーがビンビンになってそうだな」
「この上ない感度です」
〝感度〟と聞いた尊さんは何か考えたようだけれど、今はそういう場合じゃないと思ったらしく、特に何も言わなかった。
そして私はお団子屋さんで、黒蜜だれの串団子を食べた。
さらにお目当ての赤福本店へ行き、お土産用の赤福、ぜんざいを大量購入し、夏季限定の水羊羹も買う。
そしてやはり夏季限定の、お抹茶味のかき氷を美味しくいただいた。
八月だし、汗ダラダラだけれど、こういう嬉しい夏季限定に出会えるので嬉しい。
さらに歩いて伊勢醤油本舗へ行き、伊勢醤油ソフトクリームを食べる。
「腹壊さんようにな」
「大丈夫です。自分、頑丈なので」
「どこの俳優だよ」
他にも色々と、漬け鮪のてこね寿司など心惹かれる物があったけれど、もう夕方近くでホテルでの豪華夕ご飯が待っているので我慢した。
尊さんはまた例によって、現地のコーヒー豆を買っていた。
**
駐車場から車に乗って四十分ほど経って、私たちはひらまるホテルの『ザ・ひらまるホテルズ&リゾーツ 賢島』に着いた。
ホテルが面している英虞湾は、太平洋に面した志摩半島がカギカッコみたいな形になっている内側にある。
中には大小様々な島がある上、リアス式海岸になっているので、地形が複雑だ。
臣桜
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上野文
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「ふわー! 疲れた!」
「ほんとね~! ピアニストと思えないぐらい汗を掻いちゃったから、ゆっくり温泉に浸からないと」
弥生さんの言葉を聞き、ちえりさんがチクリと言う。
「全力で演奏したら汗だくになると思うけどね」
「やーね、お母さん。汗の質が違うのよ」
「何を言ってるんだか」
私たちはそんなやり取りを聞いて笑いつつ、スタッフさんに迎えられて荷物を預けた。
ホテルの外観はどっしりとした四角いウッド調で、正面玄関の上にはホテルのエンブレムが刻まれてあった。
玄関の左右には白い柱と大きめの観葉植物が置かれてある。
レセプションは白で統一されていて、中央の通路の向こう側には海を望むテラスが見える。
通路の左右にロビーのソファがある作りで、品のいい静けさに包まれると、今まで汗を掻いてワチャワチャしていたのが嘘みたいだ。
「お疲れ様でございました。ウェルカムドリンクをお召し上がりください」
そう言って出されたのは、アラン・ミリアのジュースだ。
東京でもひらまる系列のレストランにお邪魔した事があったけれど、そこでもメニューにあったジュール類はアラン・ミリアだった。
私はメルローの赤ぶどうジュースを頼み、尊さんと一緒にテラスからの景色を楽しみながら飲む。
コメント
1件
お疲れ様です、はるです! このエピソード、すごくほっこりした空気で好きだわ〜。朱里さんの「赤福が呼んでる」ってダジャレみたいな流れ、思わず笑っちゃった(笑)。それに尊さんの「頑張ってる姿を見守ってください」っていう参拝の考え方、なんかすごく響いた。神頼みだけじゃなくて、ちゃんと努力しなきゃなって思わせてくれる感じがいいよね。 おかげ横町の描写も美味しそうで、抹茶かき氷とか伊勢醤油ソフトとか、読んでるだけで旅気分になれたよ。ホテルの静けさに切り替わる締め方も綺麗で、次回も楽しみにしてる!