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臣桜
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上野文
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「別世界ですね~」
私はトロリとした濃厚なジュースを味わい、吐息をつく。
「だな。凄く濃密で長く感じたけど、今晩で旅行も折り返しだ」
「明日は大阪ですか。食い倒れしないと」
「ブレねぇな」
尊さんはケラケラと笑い、私は目先の晩ご飯に向けて、お腹のエンジンをグルルン、グルルンと鳴らす。
どうやらこのホテル、本棟にツインが四部屋、別棟にダブル二部屋、ツイン二部屋の、合計八部屋しかないようだ。
そのうち私たちが四部屋使うと思うと、ほぼ速水家ご一行様貸し切り状態だ。
……と言っても、勿論行儀良くしているけれど。
どのお部屋も素敵なんだろうけど、大地さんが言うには本棟の部屋はお風呂が普通だけれど、別棟の部屋は景色を楽しみながら浸かれるらしく、別棟を四部屋とも予約したのだとか。
ホテルに着いた頃には夕方を過ぎていて、部屋で少し休憩、汗を流してからレストランでお料理をいただく事になった。
部屋にも素晴らしい個室露天風呂があるんだけれど、大地さんが別棟にある貸し切り露天風呂を予約してくれたそうで、そっちも覗いてみるつもりだ。
ウェルカムドリンクをいただいてチェックインしたあと、別棟の部屋に案内してもらう。
部屋割りは、私と尊さん、小牧さんと弥生さんがダブルで、残る四人はツインだ。
……まぁね、百合さんたちの年齢になったらツインのほうが落ち着くだろうし、大地さんはいくら親子でも、お母様と一緒のベッドはアレだからね……。
「おおー……」
ドアを開いて部屋の中を見た私は、思わず声を漏らす。
部屋は奥行きのあるタイプで、コンパクトに落ち着けるけれど十分に高級感がある。
出入り口の右手にはお手洗いがあり、左手はクローゼット。
入ってすぐに窓のほうを向いた大きなベッドがあり、ヘッドボードの裏側は幅広のデスクになっている。
ベッドの向こうの空間の右手には、アイボリーの革製のソファとオットマン、小さな黒い丸テーブル。
左手には黒いツヤツヤとした丸テーブルに、曲線が美しい一人掛けの椅子が二脚、壁に液晶テレビ。
テーブルの上には、ホテルのエンブレムが刻まれたチョコレートが一人につき二つと、冷やされたグラスの中に入ったスイーツがあった。
スイーツはパンナコッタの上に、柑橘のゼリーと果肉が入った物だ。
ミニバーにある飲み物は、お酒も含め全部飲み放題らしい。素晴らしい。
そして一応スライドドアで仕切れるようになっているけれど、奥には同じ空間に温泉がある。
作り的に、思わずシドニーで泊まったホテルを思い出してしまった。
あちらは仕切りがなかったけれど。
四角い浴槽の温泉はグレーの石でできていて、左右に四角いお湯の注ぎ口があり、掛け流しっぽくて格好いい。
その手前左右には二つの洗面台があり、ライトグレーとベージュ系が混じった品のいい壁に正円の鏡が掛かり、洗面ボウルは白の長方形だ。
アメニティの基礎化粧品はミキモトコスメティックス――現ムーンパールで、ボディ系はフランスのブランド、オムニサンス・パリだ。
ミキモトは本社が伊勢にあるし、地元の企業と連携しているのはとても素晴らしい。
そういえば、おかげ横丁にも真珠のお店があったなぁ……。
左手側の洗面台の奥にはシャワースペースがあり、そこで洗ってから景色を眺めつつ浸かる仕組みだ。
温泉の向こうはガラス戸を隔てて、テラスに英虞湾を望むゆったりとした椅子が二脚ある。
「すごーい! リゾートみたい」
「さすがにちょっと疲れたな」
尊さんは椅子に座り、冷たい水出しハーブティーを飲む。
私もウェルカムされたからには美味しくいただかねばと思い、彼の隣に座ってスイーツやチョコをいただく。
「座れてホッとしてますし、何よりクーラー嬉ぴい」
「分かる。さすがに夏場にあんだけ動くのはきついわ」
尊さんは「ははっ」と笑い、椅子の背もたれに身を預ける。
私はペロッとスイーツを食べたあと、溜め息をついて立ちあがる。
「疲れてますけど、べとべとさんになってるのでシャワー浴びます。ついでに温泉入ります」
尊さんは妖怪ネタを聞いてクスッと笑うも、私を見て微笑み、尋ねてきた。
「ご一緒していいですか?」
コメント
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第863話、読み終わりました〜。英虞湾を望むホテルの描写、すごく丁寧で旅番組を見ているような気分になりました!ミキモトコスメが地元企業だってところに、臣桜さんの細かいこだわりを感じました。お部屋の構造やアメニティまでしっかり書かれていて、自分もその場にいるかのような臨場感。最後の「ご一緒していいですか?」にはドキッとしました…尊さん、距離感が絶妙ですね🫣