テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
カスみたいな間違いしてたから再投稿。
⚠️百合、MothStaff(もふもふ蛾なヴァイン)×CosmicScythe(お月様モチーフのサイスさん)、スキンごとに別人、性格も普通のヴァインやサイスと異なる(でも名前は同じ)
星の全く見えない真っ黒な空にのさばる雲の隙間から、大きな満月が顔をのぞかせる。月の光がよく届く綺麗な夜だった。
クロスロードの町は珍しく深夜に眠りにつき、明かりのついている建物は一つもない。
クロスロードの中央に聳え立つ塔の上で、大鎌の柄を膝の上に乗せた女が足を投げ出して座っていた。フードの下は笑いもせず無表情で、 右目だけで夜の空を眺めている。静かな夜をたった一人きりで楽しんでいる。
ふと、視界の端に黒い点がちらつく。そちらに興味を奪われ、つい目で追ってしまう。その点はだんだん大きくなり、形も次第にはっきりしてくる。不規則に飛びながら近づいてくるそれは、人型でありながら背中から羽が生えていた。月の光を背に浴び、女からは逆光で大まかな形しかわからない。
しかしそれとの距離がほんの数十メートルまで縮まった時、ようやくそれの容貌を認識した。柔らかな毛に包まれた人型の蛾だ。人畜無害そうな顔をしてどんどん接近してくる。
あっという間に蛾は女の目の前に来た。羽ばたいて浮遊しながら、好奇心たっぷりに彼女を見下ろしている。女は驚く素振りも見せず、それを見上げている。
「…こんばんは、迷える少女。」
そして物怖じせずに挨拶をした。蛾の瞳孔がかすかに収縮する。
「…こんばんわ?」
「お前も月を見に?ならばこちらにおいで。一緒に眺めましょう。」
女の鎌は彼女が手をかざすと明滅して消えた。蛾は何度か左右に視線を移したのち、おずおずと女の隣に座った。
「…意外と大きいのね。」
自分よりも数センチ背の高い蛾を見上げて女は言う。蛾はじっと女を見つめかえす。女が顔の向きを戻してもなお見つめ続ける。
「お前、名前は?」
「…名前…」
蛾は首を傾げた。視線をくるりと回し、
「…ヴァインスタッフ…」
蛾、もといヴァインスタッフは興奮気味に頷いた。
「素敵な名前ね。私はサイス。」
女、もといサイスは自分の名を名乗った。彼女の名を聞くと、理解するようにヴァインスタッフは何度か呟く。
「さいす…サイス…」
「そう。よく出来たわね。」
「…」
ヴァインスタッフは頬を赤らめ、体を傾けてサイスに体重を乗せる。
「おっと…ふふ、随分と甘えんぼさんなのね。」
そう言われると今度は逆にヴァインスタッフはサイスを抱き寄せ、さらに頬擦りをした。
「あらあら…」
困ったように笑うサイスを見つめるヴァインスタッフの瞳に宿っていたのは好奇心だけではなかった。
彼女はこの感情の名前を知らない。サイスが欲しいという感情。いわば一目惚れ。
「…お家に帰るところだったの。」
「お家?」
「そうよ。久しぶりに帰るんですもの。お土産が必要よ。」
「?」
ヴァインスタッフの言葉はサイスに話しかけているようではなく、むしろ自分に言い聞かせているようだった。彼女は数度頷くと、サイスを抱き上げた。所謂お姫様抱っこ。
「ヴァインスタッフ」
「そうよ、別に番一人持って帰るぐらい、普通よね。」
「ヴァインスタッフ?」
「それじゃあ行きましょうか。」
「ヴァインスタッフ!?」
ヴァインスタッフはサイスを抱き抱えたままふわりと飛び上がると、どこかへ飛んでいってしまった。サイスの焦った声もすぐに夜の静けさにかき消されてしまった。
眠れる町の中、月だけが蛾の初恋を見ていた。
。^ 。
77
ゑゐ(えい)
71
142
あるる
18
コメント
1件
うわ、めっちゃ良かった…!月明かりの静かな夜に、無表情だけどどこか優しいサイスと、無邪気で純粋なヴァインの出会いがすごく絵になる。最初はお互い探り合ってたのに、ヴァインが「番」って言ってお姫様抱っこで連れ去るところ、ギャップ萌えすぎる。最後の「月だけが蛾の初恋を見ていた」で全部持ってかれたわ。続き読みたい🔥