テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#山中柔太朗
⭐︎
448
コメント
1件
**みぅ🤍🥀:** 第5話、すごく熱かったです……。「今度は俺が」ってタイトル、もうそのまま舜太くんの覚悟でしたね。酸素ボンベを持たずに飛び込んだ柔太朗さんを、今度は舜太くんが助ける番で。勇斗さんの「今そこにいる医者はお前だ」が、あの場面でちゃんと生きてるのが胸に刺さりました。教授の説教も「助かったからよかった」じゃ済まされない厳しさ、わかるなあ。最後に全員で笑い合える日常が戻ってきて、じんわり来ました🥀 次も読みますね、永絆さん。
舜太side
「〇〇さん、調子はどうですか?」
「大丈夫?良かったです!」
「体温だけ測りましょうか」
今日もいつも通り患者さんの対応をしていた。
カルテを確認して、血圧と体温を測定。
1人ずつ担当の患者さんの病室を回っていた。
「次は……」
『_工事現場にて火災発生!!』
『重傷者も多数見られる模様!』
『EBiSU MERの出動を要請する!!』
『繰り返す_』
「まじかっ……!?」
「すみません、〇〇さんの対応任せました!」
俺は急いで階段を駆け下りて、MERカーへ向かう。
俺が到着した頃には全員揃っていた。
「舜太、いくぞ!!」
「はい!」
「現場の様子は?」
「消防隊によって消火活動が行われ、火は消えているそうですが救出された人達の中に重傷者も複数名いる模様です。」
「了解」
現場に着いた瞬間。
俺は思わず息を飲んだ。
建物の1部から、まだ煙が上がっている。
消防隊が消火活動を終えたところらしく、周囲には何台もの消防車が止まっていた。
「中にいた人は?」
勇斗さんが消防隊員に聞く。
「ほとんど救出済みです!」
「負傷者は?」
「火傷を負っている人が複数。煙を吸っている人もいます!」
「分かりました!」
勇斗さんが振り返る。
「仁人、柔太朗、 火傷の患者頼む!」
「了解」
「太ちゃん、呼吸器系の患者を!」
「任せて!」
「舜太、こっち!」
「はい!」
俺たちは一斉に動いた。
火傷を負った人たちの状態を確認し、必要な処置を行っていく。
「医師の佐野です、分かりますか?」
「どこが痛いですか?足?」
「手動かせます?……大丈夫ですね!」
「舜太、この方救急隊の人と救護テントまで運んで」
「了解です!」
「…大丈夫ですからね!!」
「こちら、搬送準備お願いします!」
「こっちの患者の対応誰か!!」
現場は慌ただしかった。
けれど、ある程度処置が終わった所で、消防隊員が叫んだ。
「まだ1人、中にいる!!」
「……!」
俺たちが振り返る。
「確認できていません!」
「場所は?」
「建物の奥です!」
すると柔太朗さんが立ち上がった。
「俺、中行ってきます」
「柔太朗!」
勇斗さんが呼び止める。
「無理すんなよ!」
「分かってます!」
柔太朗さんはそう言って、建物の中へ走っていった。
俺も一瞬、その背中を目で追った。
そして すぐに患者さんの処置へ戻った。
それからしばらく。
「搬送、完了しました!」
消防隊員の声が聞こえた。
「よし」
勇斗さんが頷く。
「残りの患者は?」
「全員、外へ!」
「了解!」
俺は周囲を見渡した。
けれど。
「……あれ?」
何かがおかしい。
「柔太朗さんは?」
誰も答えない。
「……」
俺は建物を見る。
まだ煙が残っている。
そのとき、 ふと気づいた。
「…これって」
俺は救命道具を確認する。
「酸素ボンベ……」
1つは俺の分。
もう一つは……
「……柔太朗さんの分、?」
「まさか……」
柔太朗さん。
酸素ボンベを持っていない。
「……!」
俺は急いで周囲を見る。
勇斗さんは別の患者の処置。
仁人さんも手が離せない。
太智さんも対応中。
誰も気づいていない。
「……」
どうする。
俺が言えばいい。
でも 今、この場で動けるのは。
俺しかいない。
気づいた瞬間 身体が動いていた。
「舜太!」
勇斗さんの声。
「どうした!?」
「俺、柔太朗さん探してきます!」
「待て、舜太!」
もう走り出していた。
酸素ボンベを二つ。
一つは自分。
もう一つは柔太朗さんのために。
俺は無我夢中で建物の中に突っ込んだ。
煙が立ち込めていて、視界が悪い。
「柔太朗さん!」
返事はない。
俺は名前を呼びながら、できるだけ周囲を確認しつつ進んだ。
「柔太朗さん!!!」
「……柔太朗さん、!!」
その時、何かが見えた。
倒れている人影だった。
俺は急いでその人影に駆け寄った。
「柔太朗さん!!大丈夫ですか!?」
返事はなかった。
でも、よく見ると微かに呼吸をしている。
「……!!」
息が浅い。
意識も、あるのかよくわからない。
「柔太朗さん!」
「俺です、舜太です!!」
肩に触れる。
すると、僅かに瞼が開いた。
「………しゅ…」
「はい、大丈夫です!」
「酸素ボンベ持ってきましたから!」
俺は酸素ボンベを柔太朗さんの口に当てて酸素を確保した。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
「……」
柔太朗さんの呼吸が、少しづつ変化する。
その時だった。
「柔太朗さん、聞こえますか?」
「……」
反応がない。
何となく、嫌な予感がした。
「柔太朗さん、!!」
その直後。
柔太朗さんの身体が大きく動いた。
痙攣、恐らく一酸化炭素中毒だ。
意識障害もあり、かなり危ない状態だった。
「っ……柔太朗さん!!!」
俺は慌てて無線を取った。
「こちら曽野、!!!」
『舜太!!どうした!』
勇斗さんの声。
「柔太朗さんを発見しました!」
『場所は!』
「建物内です!」
『状態は!!』
「意識がありません!!」
「さっき、痙攣も起こしました!」
「……恐らく、煙を大量に吸ったことによる一酸化炭素中毒かと思われます、!!」
『了解!一旦出てこい!!』
『外で処置準備しとくから!!』
「はい!分かりました!!」
俺は柔太朗さんを支えながら、出口へ向かう。
1歩。
また1歩。
煙のせいで前が見えない。
「柔太朗さん、頑張ってください…!!」
「あと…あと少しですからね、!!」
煙の向こうに、外の光が見える。
「舜太!!」
外に出た瞬間、勇斗さんが駆け寄ってきた。
続けて、仁人さんも駆け寄る。
「今すぐ搬送しましょう」
「MERカー乗せて!!」
「あっ、でも運転は…?」
「俺がやるから、とにかく乗せろ!!」
「…はい、!!!」
柔太朗さんをMERカーに乗せ、勇斗さんの運転で恵比寿総合病院へ帰る。
「塩﨑先生、酸素ありますか?」
「あるけど…後3本しかないわ」
「十分です、ありがとうございます」
「曽野くん、状態確認よろしく」
「はい…!」
病院に着き、急いで処置をする。
「急性一酸化炭素中毒です」
「高気圧酸素治療が必要です、直ちに準備お願いします」
「了解!!」
俺ら以外の医者も対応してくれた。
無事に処置が終わる。
今は状態も落ち着いている。
俺は力が抜けそうになった。
「よかった……」
隣を見る。
勇斗さんも、仁人さんも、 太智さんも。
みんな疲れ切っている。
ただ、 柔太朗さんが助かる可能性が見えたことに、安堵していた。
今日。
俺は怖かった。
一人で建物の中へ入るのも。
柔太朗さんを見つけたときも。
もし間に合わなかったらと思うと、今でも手が震える。
でも あのとき、 俺が行かなかったら。
きっと、もっと危なかった。
以前、訓練の時に 勇斗さんに言われたことを思い出す。
”今そこにいる医者は、お前だ”
今日もそうだった。
そして今度は。
俺の教育係を、 俺が助ける番だった。
「……柔太朗さん」
眠っている柔太朗さんを見る。
「早く起きてくださいね」
「まだ、教えてもらいたいこといっぱいあるんですから」
そして。
その隣で勇斗さんが、静かに呟いた。
「……ほんと、無茶すんなよ。柔太朗」
仁人さんも小さく頷く。
「起きたら、全員で説教ですね」
「そうやな」
太智さんが苦笑する。
俺も笑った。
きっと、 柔太朗さんなら。
目を覚ましたら、いつもの優しい顔で笑ってくれる、 そう信じて。
俺たちは、静かな病室を見つめ続けた。
コンコンッ
「失礼する」
ノック音と共に入ってきたのは教授だった。
俺らは立ち上がって頭を下げる。
「お疲れ様です」
「あぁ、出動お疲れ」
「……山中くんの件なのだが」
「彼は酸素ボンベを携帯せず、建物内部へ進入した」
「…これは重大な規定違反だ」
「……はい」
「火災現場は、消化後であっても安全とは限らない、そうだろう?」
「煙や有害物質が残っている、それにもかかわらず装備を整えずに進入した」
「……結果、山中くん本人が負傷した」
誰も言葉を返せない。
いや、返せる 状況なんかじゃない。
教授の声は厳しかった。
「幸い命に別状はなかった」
教授は一度息を吐く。
「だが」
少し間を置いて。
「もし君たちが山中くんを発見できていなかったら?」
「……」
「もし曽野くんが建物内へ入っていなかったら?」
「……」
「山中くんは、さらに危険な状態になっていた可能性がある」
「……はい」
「曽野くん」
「はい」
教授が俺を見る。
「君もだ」
「……」
「君が単独で建物内へ進入したことも、決して安全な判断ではない」
「……」
「今回は結果的に二人とも助かった」
「はい」
「だが」
教授の声が低くなる。
「助かったからよかった、では済まされない」
胸が痛んだ。
「……申し訳ありません」
「君たちが倒れれば、誰が患者を救う?」
「……」
「救命隊は、勇敢さを競う場所ではない」
「山中くんには、意識が戻ったら改めて話す」
「今回の件は、隊員全員が今一度、安全管理について考えるように」
「……分かりました」
「以上だ」
教授が病室を出ていく。
太智さんが大きく息を吐く。
「……怖かったぁ」
「俺もです…」
「……でも」
「教授のおっしゃる通りですよ」
「命を救う立場である僕ら自身が1番安全管理をする必要があります」
「……」
分かっている。 本当に、その通りだ。
俺は火災現場で。
「柔太朗さんを助けなきゃ」
それだけしか考えていなかった。
もし俺まで倒れていたら。
もっと大変なことになっていた。
「……次は」
俺は小さく呟いた。
「ちゃんと考えてから動きます」
「うん」
柔太朗さんがいつも言っている。
焦らない、 周りを見る。
自分の安全も確認する。
その言葉を。
今になって、強く思い出した。
1週間後_
事故の翌日に目を覚ました柔太朗さんは、特に後遺症も残ることなく、少し休暇を取って復帰してきた。
俺らが地下訓練室で集まって話していた時。
「ちゃうって!佐野さんやろ!笑」
「はぁ!?俺じゃないし笑」
「はいはい、2人ともうるさいですよ」
ガチャッ
扉を開けて入ってきたのは、柔太朗さん。
「柔太朗!!」
「……ご迷惑おかけしてすみませんでした」
柔太朗さんは頭を下げる。
そこに太智さんが駆け寄った。
「…ええねん!!無事なんやろ?」
「ほら、顔上げ!今日からまた頑張るで!」
「ミスは誰にでもありますから」
「次から気をつければ良いだけですよ」
「まぁ、無事ならおっけーっしょ!」
「……すみません」
「はいはい、もうすみません禁止!」
「さっ、今日も頑張るぞ〜」
「…はい、!!」
太智さんに腕を引かれ、俺らの元へやってきた柔太朗さん。
真っ先に俺のところに近づいてきて「ごめん」と頭下げた。
俺は慌てて柔太朗さんの顔を上げさせる。
「いや…舜太くんまで危険に晒しちゃって」
「ほんとにごめん、反省してる」
「大丈夫?調子悪くない?」
「もしおかしいとこあったら……」
「もー柔太朗さん!笑」
「自分の心配してくださいよ、笑」
「俺は大丈夫です!」
「……そっか、ありがとう」
「…柔太朗、教授に怒られた?笑」
隣にいた勇斗さんが問いかける。
「…えぇ、結構……笑」
「怖かったっしょ?」
「……はい、笑」
「まぁ、それだけ教授も山中くんが大事ってことですよ」
「そうですかね…?」
「俺もそう思う!!愛あるお叱りやな!!」
「ははっ、笑そうならいいですけど……笑」
「じゃあ、柔太朗も来たってことで……」
「EBiSU MER、再始動だな!」
「はい!!」