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ゆきのはな

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5.【揺れる尻尾】

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2023年09月15日

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楽しそうに口角をあげワナワナと両手を動かしながら雪乃ににじり寄っていくゾム。


さっきまで眠いと欠伸をしていたはずのゾムの首根っこを引っ張り捕まえるロボロ。


「こら、何してんねん」



良かった、今日は飼育員がいる。

雪乃はホッと胸を撫で下ろす。


とは言え危険は危険。


「美希、逃げよう」


背後からコソッと囁き、後ろへ後ずさっていく。


どんっ


誰かにぶつかった。


「すいませ…、…ッ!」


咄嗟に謝りながら後ろを振り返り、雪乃は息をのむ。


見上げたその顔は、よく知った憎き顔。

チーノだった。


「なっ!?何でいんの!?」


「その前に不注意でぶつかった事謝ってくれる?」


「知るか!そこにいたお前が悪い!そんな事より…っ」


何でこいつがこんな所にいるんだ…!?


雪乃は動揺して汗をかく。

いるはずのない敵と急に接敵してしまった。


「こんなとこまでストーカーしてくるなんて、お前どんだけ私のこと好きなんだよ!」


「勘違いすんな怪力女。俺は仕事で来ただけや」


ビシッと指差して声を上げれば、そう一蹴される。


仕事…?


「草凪先輩に頼まれたんや。宿泊先の風紀を取り締まるのも風紀委員の仕事だってな。…まぁ」


チーノは驚く雪乃を冷酷に見下ろす。


「アホのお前には頼めんかったみたいやな」


その一言は効果抜群だった。


雪乃の怒りは一気に頂点まで達する。


「よしっ、喧嘩しようぜ。そのムカつく眼鏡カチ割ってやんよ」


「ちょっと、雪乃!」


「ほんま脳みそまで怪力みたいやなぁ。そんなんで期末テスト俺に勝てるんか?

その前にここで騒ぎ起こして終わるかもしれへんけど」


グッと拳を握りチーノを睨みつける。

後ろで美希が必死に雪乃を押さえつける。


いつもいつも人のことを見下してニヤリと笑うその表情が、気に食わない。


どう足掻こうと負ける。


その現実を叩きつけられているようで、腹が立つ。


しかも春翔の名前まで出されて、余計に感情が昂っていた。


ムカつく。

そりゃ成績良くない奴には頼めないかもだけど、よりにもよってこいつに頼んだのが気に入らない。


「ほら、早く逃げんとゾムさんこっち来よるで」


「!!」


雪乃はその名前に過剰に反応し、美希を引っ張りその場から逃げ出した。


嘘だと分かっていても、体は言うことを聞かなかった。


くそっ!ムカつく!

全部あいつの思う壺だ!


雪乃は悔しさのあまり、ギュッと目を瞑った。


「雪乃、大丈夫よ。惑わされないで」


隣で優しく美希が言葉をかける。


「あんたはあんたのやれる事をやればいいの。目の前のことに集中しなさい」


力強い言葉に、掻き乱された感情が落ち着いていくのがわかった。


美希がいて良かった。


ありがとう、とお礼を言いながら、雪乃たちは校舎へと入っていった。




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ほうほう。やっべ。鼻血とまんねw

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