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エルスを救ってから一週間が経った。
私はその中の数日、赤フードの冒険者として活動していたが、気づくとどこからともなくエルスが現れ、遠くから甘々な視線を送ってくる。
スキル研究所の仕事はどうしたのか、というよりも、なぜ私がいることにすぐ気づけるのかが怖いけれど、赤フードの幻惑効果はきちんと効いているらしく、正体がバレている様子はなかった。
ということで、今日は再び貴族のご令嬢が集まっての定期お茶会である。
面子はいつも通りの私、リン、エルス、アルメダの四人だ。
今日はアルメダの家、ヤーク家の庭園でお茶会が開催されていた。
「ふぁ~」
正面に座っているエルスはぽわ~とした様子で上の空である。
淡々として、周りを警戒していた彼女はどこに行ってしまったのか。
その理由がわかっているから、なお頭が痛い。
「なんですの、エルス。いつものあなたらしくないですわね」
アルメダもエルスの異変に気づいたらしく、怪訝そうな表情を浮かべていた。
「へ、そう?」
エルスはそう言われて、初めて自分の挙動がおかしいことを自覚したようだった。
しかし、態度を改める様子はない。
「実はね、わたし、運命の人を見つけちゃったんだぁ」
そうやって、ふにゃっとした笑顔で話すエルスはとても可愛らしい。
その内容さえ、わたしと関係ないものであれば。
「う、運命の人!?」
動揺するアルメダとリン。
一番そういうものと無縁だと思われていたエルスがいきなりそんなことを言ったのだから、そういう反応にもなるだろう。
「うん。わたしのことを守ってみせる、って言ってくれてね。すごくカッコよかったの……」
自分の発言を思い出して、なんだか恥ずかしくなってくる。
「そ、それでどんな人なの……?」
リンも恋愛話は好きなようで、彼女にしては前のめり気味に聞く。
「冒険者ギルドで噂の赤フードさまだよぉ。すっごく強いの」
「赤フード……確かに耳にしたことはありますわね」
アルメダはあごに手を当てて何やら考え込む。
「その赤フードは腕の立つ冒険者でしたの?」
「うん。本当に強かった」
「そうですか……」
アルメダの様子が少し変だった。
「どうかしたの、アルメダ……?」
リンも気づいたようでそう訊ねる。
「いえ、ちょっと冒険者ギルドに頼みたいことがあったものですから……少し聞いてみただけですわ」
アルメダが冒険者ギルドに依頼……?
いったいなんだろうか。