君の視線そのさきに
俺がいればいいのにな。
2/12
「好きです!付き合ってください!!」
あぁ、聞いてしまった。
告白してる子って学年一の美女って言われてる子だよね?
「俺なんかに勝ち目ないじゃん、」
目の前が少しだけぼやけ始めた。
帰ろ、
「ごめんなぁ、俺好きな人おんねん。」
「え、?」
「気持ちは嬉しいねんけど、ごめんな?」
嘘でしょ、?
こないだ『好きな人はいない』って言ってたじゃん‥‥、
俺は拳を握りしめてその場を後にした。
2/13
次の日の朝
俺は少しだけ腫れている目で学校に行った。
「紫ーくんおはようさん!」
今一番会いたくない君に一番に会ってしまった。
「橙くんおはよう」
泣かないように、泣かないように
神経を研ぎ澄まして君と会話する。
「紫ーくん目腫れてるで?」
君は人の変化にすぐ気付く。
「さっき目にゴミ入っちゃってゴシゴシしちゃったんだよねw」
咄嗟に出た嘘。
ドラマとかで良くある「目にゴミ入っちゃった」。
そんな嘘も橙くんは「そうなんやぁ〜、気ぃつけや〜」って返す。
「うん、。」
ねぇ気付いてよ、
「紫ーくん!」
そろそろ帰ろうと荷物をまとめていると前のドアから元気な声が聞こえてきた。
「え、!?」
いつもなら校門で待ち合わせしている橙くんが居た。
「はやく帰ろうや〜!」
「分かったから!先行ってて!!」
そういうと橙くんはニコニコな笑顔で校門に向かっていった。
幸いクラスメイトには何も言われなかった。
「お待たせ。」
俺の中で過去一といってもいいほどのスピードで荷物をまとめてきた。
「あ、紫ーくん!そんな焦らんでええのにw」
「はやくって言ったのは橙くんでしょ?」
「そやったそやったw」
相変わらず橙くんは意味の分からない事を言う。
「もう、先行くからね??」
俺は照れ隠しにスタスタと帰り道を歩いていく。
でも、いつもならすぐ隣にくる橙くんが今日は一向に隣にくる気配がない。
「橙くん??」
そう言って振り返るとまだ校門の前で止まっている君がいる。
「どうしたの?」
少し離れたところにいる君にも聞こえるように、声を出す。
そう言うと君はゆっくり俺に近付いてくる。
俺の目の前に来ると、ようやく口を開いた。
「明日」
「うん、?」
「明日待ってるから。」
「え、?」
「じゃぁな!!」
「え!?ちょっと橙くん!!」
君は意味のわからないことを言ってその場から走り去っていった。
「なんなの、?」
2/14
朝下駄箱に着き、靴を履き替えようと下駄箱を開くと中から大量に入っている何かが溢れ出てきた。
「え、?なにこれ嫌がらせ??」
急なことに眉を寄せながら一つ一つ手にとって確認してみる。
「チョコ‥‥‥‥?」
なんで俺なんかにチョコが届いたのだろう。
分からない。
「今日はバレンタインデーということで!チョコを作っていきたいと思います!!」
「やった〜〜!!!!」
今俺のクラスでは家庭科の授業をしている。
もともと、班で味噌汁を作る予定だったが生徒の希望で数週間前にチョコを作ることとなった。
「今日作ったものは、自分で食べてもよし!家族にあげてもよし!好きな人にあげてもよし!」
「イェーイ!!!!」
「張り切っていきましょ〜〜う!!」
「オーーーー!!!!!」
すごいな。
「イ‥‥‥イェーイ‥‥‥?」
やけにテンションが高いクラスメイトに俺一人だけ引き気味だった。
誰に作ろう、?
やっぱ家族かなぁ‥‥。
橙くん‥‥‥、
いや、好きな人いるって言ってたし‥‥‥。
好きじゃなくて取り柄もない俺なんかに貰っても困るよね。
うん、家族にあげよう。
その日の放課後。
俺はいつも通り橙くんと一緒に帰っていた。
「それでね‥‥‥」
俺は今日あった面白いことを橙くんの喋っていると、突然橙くんにストップをかけられた。
「ちょっとまって紫ーくん」
あ、これもしかして俺喋りすぎた‥‥‥??
「あ、ごめん橙くん!俺喋りすぎたよね!ごめんね、」
俺は必死に橙くんに謝った。
「あ、いやあの違くて!」
「へ、?」
絶対怒られると思ってた。
なのに橙くんは怒ってなんかなくて、不安そうな顔をしていた。
「え、?どうしたの橙くん?」
「紫ーくん、」
「なに、?」
「ちょーだい」
????
あれ?これもしかして橙くんお金欲しがってる??
どうしよう、今手持ちないんだよなぁ‥‥‥、
「橙くんごめん!今手持ち無くて‥‥‥‥、」
「?」
え、??
なんで橙くんがそんな不思議そうな顔してるの??
「えっと、?」
「フハッ紫ーくんおもろいなぁw」
「え?」
「いや、俺が欲しいんはお金やないで?」
「違うの?」
「うんw俺が欲しいんは」
橙くんはたっぷり溜めてから口を開いた。
「紫ーくんからのチョコ」
「え、?」
なんで??だって橙くんは好きな人いるんじゃないの?
「俺から貰ってどうするの?」
「どうするって、食べて紫ーくんからの愛を感じるんやで?」
「???」
何を言ってるんだろう目の前の彼は。
「俺チョコないよ?」
「あるやろ?今日作ったチョコ。」
あ、!家庭科の授業で作ったやつのことかな?
「家庭科の授業で作ったやつなら‥‥‥、」
「うん、!それでええんよ!ちょーだい?」
なんかよく分かんないけど、これをあげて橙くんが喜ぶならもうそれでいいや。
「はい、どうぞ!」
俺からの気持ちは渡さないまま君にチョコをあげる。
「うん、ありがと‥‥‥、」
俺はチョコをあげたのだが、何故か橙くんは不服そうな顔をする。
「??」
「紫ーくん!なんか言うこと無いん??」
え、??なんかあったっけ??
いや、なんもないはず。
「えっと‥‥‥?」
俺の表情を見て橙くんは何かを決意したような表情を作る。
「紫ーくん!」
「はい!?」
橙くんの急な大声に吊られて俺も大声で返す。
「好きです!!付き合ってください!!」
?????
え、?なんで橙くんが俺に告白してるの??
「橙くんって好きな人いるんじゃないの?」
俺は疑問に思ったことを橙くんに素直に聞いてみる。
「せやから、俺の好きな人は紫ーくんやねん!」
嘘‥‥‥‥、
未だに追いついていない俺の思考。
そんな俺に橙くんはこういった
「もう、これで本当って信じてくれる?」
チュッ
止まったままの思考はいつまで経っても動かない。
でも、何故か俺の見える世界はゆっくりと色付き始めた。
「好き。」
なにも考えていないのに、この言葉を放っていた。
「俺も橙くんが好き。」
「付き合ってくれますか?」
「もちろん。」
俺の思考回路が動き始めたのと同時に、
俺らの物語は第二章を迎えた。
没。
終わり方雑ですいません🙇