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第24話(最終話):私は誰か
《願いの扉》が、光の洪水のように開かれていた。
その中心、浮かび上がる選択画面。
「壊す」/「叶える」――そして、そのどちらにも属さない、“無記名の空欄”がそこにあった。
 ユイナは、その前に立っていた。
 戦闘用の黒いバトルコート。
胸には《記憶の仮面:シン》。
背中のホルダーには、失われた仲間たちの仮面、揺らいだ願い、そして彼女が演じたすべてが格納されている。
 静かに息を吐き、彼女は指を動かした。
 第三の選択肢――
「壊さない。抱えて進む」
それは、今まで誰も選ばなかった道だった。
 次の瞬間、空間が激しく振動する。
《選択エラー》《 形式外行動》 《新たな“仮面使用者形態”を登録します》
 
 
 周囲の空間に裂け目が走り、仮面たちがざわめく。
 だが、ユイナは恐れなかった。
 「私は……誰かであろうとした“すべての自分”で、これからも生きていく」
 その声が届いたとき、彼女の《記憶の仮面:シン》が進化する。
 最終形態:マスク・シグナス
外装はグレー、中央に虹彩のような核。
内側には、今まで出会った仮面たちの“共鳴記録”が刻まれている。
 これにより、彼女は自分以外の記憶も、意志を持って制御・変換できる存在となる。
 すると、空間にひとつの影が現れる。
 “システムの自衛機構”――ORIGIN-M:000の最終形態、
“ジャッジマスク・ゼロ”。
 仮面の大群を纏ったような巨大な敵。
その目的は、“選択に従わなかった存在”の排除だった。
 「あなたは、“演技の外”に立った。ならば、破壊対象だ」
 ユイナは、静かにマスクを装着する。
 《マスクチェンジ:マスク・シグナス起動》
 瞳が虹色に光り、背中から感情データの翼が展開される。
周囲に漂う仮面たちが彼女の意志に共鳴し、共闘型のスキル群として起動する。
 アメトの「封印」
レオの「共鳴」
ヴァロの「防衛」
偽ユイナの「否定」
 ――すべてが、彼女の一撃の中に宿る。
 「私は、私のまま戦う。
たとえ仮面をつけたままだとしても――偽らずに、演じて、生きる」
 ジャッジマスク・ゼロとの最終決戦。
 多段スラスト、情動転写フィールド、記録圧縮カウンター。
全てが高速で交錯し、ユイナは仮面たちの想いを“折り重ねる”ことで全攻撃を防ぎ、そして貫く。
 最後の一撃――感情共鳴を限界まで上げ、
「私は誰か」と問う渦をゼロにぶつける。
 結果――ゼロのシステムはエラーを起こし、
初めて“答えのない問い”に破壊され、崩壊する。
 仮面の雨が降る。
 その中心に立っていたのは、仮面を外さず、しかし確かに“笑っている”ユイナだった。
 
 エピローグ
 ユイナは仮面をつけたまま、日常に戻った。
でも、もう誰もそれを“演技”とは言わなかった。
 なぜなら彼女は、“演じたまま本当の自分を守れる”人になったから。
 願いは叶えなかった。
でも――その代わり、彼女は“誰でもない誰か”ではなく、“誰でもあるユイナ”になったのだ。