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【かまちょなお亮】
夕方、ソファで雑誌を読んでいると、
背後からふわりと腕が回ってきた。
「……ねえ、○○」
耳元で囁く声が、いつもより少し甘い。
「なに?」と振り返ると、
彼はソファに体を預けながら、頬を私の肩にすり寄せてきた。
「かまって」
その一言に思わず笑ってしまう。
「子供みたいだね」
そう言うと、ふくれっ面をして目を細める。
「子供じゃない。……○○に甘えたいだけ」
そのまま、腕の中に引き寄せられる。
髪に顔を埋められて、くすぐったくて息が詰まる。
「今日忙しかったんでしょ?」と聞くと、
「うん。でも、○○の匂い嗅いだら元気になった」
なんて、少し照れたように笑う。
「……だからもう少し、このままで」
そう言って、猫みたいに目を細める彼。
腕の中があたたかくて、
私もこのまま動けなくなった。
腕の中で甘えてくる亮くんを、
私は「ほんとに猫みたい」と笑いながら抱きしめ返した。
「○○、あったかい」
目を細めたまま呟く声が、心地よく耳に響く。
――そのはずだった。
次の瞬間、彼の腕の力が少し強くなる。
顔を上げた亮くんの瞳は、さっきまでのとろんとした猫の目じゃない。
捕まえた獲物を離さない、鋭い視線。
「ねえ、○○」
呼ばれた名前に返事をする前に、腰を引き寄せられた。
「さっきから俺のこと、子供扱いしてるでしょ」
唇の端が上がる。
「じゃあ、子供じゃないって証明する」
そう囁くと、唇が深く重なる。
甘いだけだった空気が、一瞬で熱を帯びる。
息が乱れるたび、
「ほら、全然子供じゃない」
と意地悪く笑う彼。
腕の中はあたたかいままなのに、
心臓の鼓動は猫のように速くなっていた。
深いキスの余韻を残したまま、亮くんはゆっくりと私を抱き上げた。
「……このままじゃ足りない」
低い声が耳元で響く。
気づけば、視界が揺れ、
次の瞬間、柔らかなベッドの上に下ろされていた。
すぐに覆いかぶさってくる影。
その瞳は、もう完全にさっきまでの猫ではない。
「○○、さっきまで俺のこと子供だって思ってたよね」
耳元に唇が近づく。
「もう二度と、そんなこと言えないくらいにする」
首筋に落ちる熱いキス。
声を押し殺そうとすると、
「我慢するな」
と低く命じられ、背筋が震える。
髪をかき上げられ、視線を絡め取られる。
「俺だけ見てろ。……ほかは全部忘れて」
そのまま、甘くも強引なキスが何度も落ちてきて、
私は彼の腕の中から逃げられなくなった。