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蝶屋敷の庭先。
風に揺れる木漏れ日が差し込む昼下がり。
そこに集められたのは、珍しくそろった柱たちだった。
「なんでこんな昼間から呼び出されなきゃなんねぇんだよ」
不機嫌そうに腕を組んだ実弥が言うと、宇髄が実弥の肩を叩きながら笑う。
「まぁまぁ、息抜きも必要ってことだろ。蝶屋敷から“試食会”の招待だとよ。派手にな」
しのぶが静かに微笑む。
「このあいだ、煉獄さんの誕生日に作ったおはぎが好評でして。今日は皆さんにも味見していただきたくて」
「……おはぎ……?」
実弥の眉がピクリと動いた。思わず顔が少し和らぐ。
「不死川、甘いもの好きなのか?」
と、実弥の表情を見逃さなかった冨岡が、ぽつりと口にする。
「別に、普通だろ。……おはぎくらい、食ってやるよ…」
恥ずかしそうにそっぽを向く実弥。その背を、派手に叩く宇髄。
「いいねぇ!甘党男子!!」
「うるせぇ!」
笑い声が弾ける中、ふと、おはぎを運んでくるしのぶの姿が見えた。
器用に丸められたおはぎが、ずらりと並ぶ。
「いただきます!」
匂いにつられてきた炭治郎や善逸、伊之助まで飛び込んできて、にぎやかに試食会が始まる。
ひとつ、またひとつと口に運びながら、実弥はふと、小さく笑った。
「……悪くねぇな。こういうのも」
「お前が笑うとこ、初めて見たかもな」
隣に座った冨岡が、思わず呟く。
「はぁ? 俺はいつも笑ってんだよ、見てねぇだけだろ」
「……そうか。なら、今度もっと笑ってるとこ、見てみたい」
冨岡の言葉に、実弥はおはぎをひとくち――そして、視線を逸らす。
「……知らねぇよ、ばーか」
それを聞いた煉獄が豪快に笑い、甘露寺が「わあ~!」と目を輝かせる。
ほんのひととき、戦いも、鬼も、血の気も忘れて、柱たちは甘い時間を過ごした――。