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「嘘だろ……っ、なぁ、起きろよ!お前、踊ってただろ!?」
ギルは必死に揺さぶった。
汗と涙が混じり合い、声が掠れていく。
だが、返事はない。
静かに、菊の胸は上下をやめていた。
舞台袖に駆け寄る人々の声が遠く聞こえる。
医師の叫び、観客のざわめき。
だが、ギルには何一つ届かなかった。
「ふざけんなよ……!」
喉の奥から絞り出すように声が漏れる。
震える手で、菊の冷え始めた指を握りしめる。
その瞬間、ギルの胸の奥で何かが崩れ落ちた。
勝負も、決着も、全てが意味を失った。