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1件
長くなってしまいました!ごめんなさい!!🙇♀️🙏
⚠️第一次我々だ!⚠️
BLあり/Hシーンなし/恋愛系
キャラ崩壊あり
h表現あり⭕️(ヤってる表現はあっても喘ぎは入ってません。)
視点主定まってはいないけど基本shaでちょくちょくrbrです。
rbrとsha結ばれないです。
男モブ出てきます。
死ネタあり
王城の高い石壁の中で、俺は生まれてから一度も外に出たことがない。
広間も庭園も、どこも美しい。
けど外の景色を描いた絵画や、旅人が語る物語の方が、ずっと胸をざわつかせる。
「母上……俺も、外に出てみたいです」
何度目かの願いを、やっと母が聞き届けてくれた。
父の厳しい反対を押し切って、ほんの短い散歩の許可をくれたのだ。
城下町を歩いていると、道端で荷物を抱えて困っている少年を見つけた。
背は低く、黒髪をくしゃりと掻きあげている。年下だと思ったが、近づいて話してみれば同じくらいの年で、名前をロボロといった。
「ありがとな! 助かったわ!」
「いえ……」
ロボロは話し上手で、外の世界のことを何でも教えてくれる。
青く輝く海、白い砂浜、山の木々や鳥の声。城の中では決して味わえない、生きた景色が次々と広がっていった。
「いいなぁ……俺も、行ってみたいなぁ」
「そのうち一緒に行こうや!絶対楽しいで!」
そう言って笑うロボロの横顔が、眩しく見えた。
次の日もロボロと話した。
ロボロのは友達がいるらしい。
賑やかで、個性的で、みんな自由気ままな性格をしているらしい。
彼を羨ましく思っていると心を読んだかのようにロボロは明日そいつら連れてくるなと言ってくれた。
いつもの場所に座り空を眺めていると騒がしい集団がこちらへ近づいてきた。
視線をやるとロボロは宣言通り連れてきた。
そいつらの名はトントン、コネシマ、鬱兼大先生、エーミール、ゾム、ショッピ、チーノと言うらしい。
彼らと遊んだり雑談をしたりとしていると羨ましく思う。
そしてふと自分の境遇を思い出す。
――自分には、許婚がいる。
王家の血を継ぐための役目がある。
だから、心の奥に芽生え始めた感情を、言葉にすることはできなかった。
けれどロボロと過ごす時間は、胸の奥がくすぐったくて、切なくて。
その日の夜、隣にロボロがいれば――そんな願いが、喉まで込み上げてきて、けれど声にはできなかった。
ロボロたちと過ごす日々は、夢のようだった。
でも城へ戻れば現実が待っている。
「シャオロン……許婚との顔合わせの日取りが決まった」
父の声は冷たく響いた。
「次代を継ぐ者として、逃れることは許されぬ」
母は黙って目を伏せた。
分かっていた。王家の血を残すために、自分はどんな役割を背負わされるか。
そして、そのために最先端の医療技術が持ち込まれていることも。
――人工子宮。
それを取り付けられれば、男である自分でも子を宿すことが可能になる。
王族の義務の名の下に、逃げ道は完全に閉ざされていた。
なんで俺が孕まないといけないのかはさっぱりわからんけど…
その日から、ロボロと会うたびに胸が痛むようになった。
笑い合いながらも、言葉の奥に沈む影をお互いに気づいている。
「なぁ、シャオロン」
ロボロが夕暮れの草原でぽつりと呟いた。
「お前、なんか……悩んどるやろ」
「……悩んでないよ」
これも嘘。けれど言えない。
王家のことも、許婚のことも、人工子宮のことも――全部、口にすればこの関係は壊れてしまう。
ロボロはそれ以上は追及せず、空を仰いだ。
「……ま、俺もなんとなく分かっとる。お前は……特別な人やからな」
その声色は、諦めの色を帯びていた。
帰ると父に呼ばれた
「シャオロン……お前の許婚との顔合わせが近い」
またこの話。
父の声は揺るがない。
王族である以上、愛する者を選ぶ自由などない。
血を繋ぐために、役目を果たすために、ただ定められた未来に歩を進めるしかない。
そして、自分の相手は女ではなく男であると告げられた。
人工子宮をつけると言うのだから薄々…いや、もう分かっていた。勘づいてた。
――王家の血を絶やさぬために、最先端の医療が使われる。
心臓を握り潰されるような感覚の中で、シャオロンはただうなずいた。
ロボロと会ったとき。
草原を歩きながら、彼は少しの沈黙を挟んで言った。
「なぁ、シャオロン。……お前、きっと許婚とかいるんやろ?」
シャオロンは息を呑んだ。
笑って誤魔化すこともできたはずだった。けれど、視線を逸らした時点で答えは出てしまっていた。
ロボロはわずかに笑って、けれどその瞳は寂しげだった。
「やっぱな。……そうやろうと思っとった」
「 分かっとったはずなんやけどなぁ…。お前は城の人間やし、俺なんかとは違う世界の人やから」
二人の間に風が吹き抜ける。
近づきたくても、踏み出すことは許されない距離。
――もし、すべてを投げ出して彼と並んで歩けたなら。
今日は手術の日。
俺がちゃんと男でいられる最後も日とも言える
「シャオロン。――心を決めよ」
――知っていた。分かっていた。
それでも、現実として突きつけられると息が詰まる。
母は黙って目を伏せている。
慰めの言葉は一つもなかった。
彼女もまた、王家の掟から逃げられない立場なのだ。
白い部屋。冷たい光。
鉄の匂いが鼻を刺す。
「安心なさい、シャオロン様。成功率は高いのです」
医師の声はやけに淡々としていた。
人工子宮を体内に取り付ける手術。
それは王家の未来を繋ぐためのもの。
拒む余地はどこにもなかった。
ほんの一瞬――ロボロの笑顔が、まぶたの裏に浮かんだ。
もしも今と違う立場で生まれも違ったなら…。
ただ彼と、自由に笑い合えていたなら。
けれどそれは、決して許されない。
手術から日が経ち、身体は思いのほか早く回復した。
けれど心の奥底は、ずっと深い霧に覆われたままだった。
ある朝、母が静かに告げた。
「……今日、許婚との顔合わせがあります」
その声には優しさがあった。
だがシャオロンには、同情よりも残酷な現実の響きとして届いた。
広間の扉が重く開かれる。
光を受けた赤い絨毯が長く伸び、奥に一人の青年が立っていた。
――これが、許婚。
同じように王家の血を引く、隣国の王子だ。
整った顔立ちに、鋭い瞳。
世間ではかっこいいイケメンだの騒がれているが、 俺にはかっこいいとは思えなかった俺の中のかっこいいはロボロだから。
一礼をする所作は美しく、まるで隙がない。
きっと、王族としては申し分のない相手なのだろう。
「初めまして、シャオロン殿下」
低く澄んだ声が響いた。
シャオロンは小さく頭を下げた。
「……はじめまして」
たったそれだけの言葉を絞り出すのに、胸がひどく痛んだ。
青年はにこやかに微笑んだ。
「我らの結びつきは、両国の未来にとっても大切なことです。共に歩んでいけることを、心から嬉しく思います」
――未来。
その言葉が重くのしかかる。
ロボロと笑い合った日々が、走馬灯のように蘇る。
草原の風、星を見上げた夜、あの無邪気な笑顔。
けれど、それは許されない願いだった。
父と母の視線が突き刺さる。
逃げ道はない。
「……ッはい」
小さな振り絞った声で答えた瞬間、胸の奥で何かが崩れ落ちた。
青年の笑顔は、未来を誓うものとして清らかだった。
その正しさが、かえって俺を苦しめた。
笑顔の裏で、自分と同じように諦めを抱えていたのだろう。
胸に残る痛みは、 たった一人の少年を選べなかった、自分自身のせいだった。
許婚との顔合わせを終えてから、城の外に出ることをほとんど許されなくなった。
ロボロや仲間たちと過ごした日々は、まるで夢だったかのように遠ざかっていく。
草原の道。
夕陽に照らされる背中が見えた。
――ロボロ。
「おう、久しぶりやな」
振り返った彼は、いつも通り笑っていた。
けれど、その笑顔の奥にかすかな影があった。
「元気そうやんか。……まあ、城の中で大事にされとるんやろ」
「……」
何も言えなかった。
大切にはされているかもやけど…大切にされていない気もするから
二人の間に沈黙が落ちた。
風の音、草の匂い、遠くの鳥の声。
何もかもが、これが最後だと告げているようだった。
ロボロは少しだけ笑って言った。
「お前は……特別や。どこにいても、誰といても。俺の…マブダチやからな…!」
その言葉に胸が詰まり、堪えきれなかった。
一歩踏み出し、そっとロボロの背に腕を回した。
「……ロボロ」
驚いたように肩が震える。
けれど彼は振り返らなかった。
ただ、背中越しに小さく息を吐き、苦しげに笑った。
「……あほやな。……泣くなよ」
頬を伝う涙が、ロボロの服を濡らしていく。
その声は優しく、そしてあまりに遠かった。
二人の間には、もう決して埋められない距離があった。
それでも、最後に確かに抱きしめた温もりだけが、胸に残った。
夕陽が傾き、草原に長い影が伸びていた。
「……ロボロ」
震える声。
言葉が喉に詰まる。
けれど、今しかない。
この瞬間を逃せば、二度と伝えられない。
「俺、……ずっと…ずーっと…」
「……大好きだよ。……愛してる」
世界が止まったように静かだった。
ロボロはしばらく動かなかった。
やがて、小さく、かすれる声で答えた。
「……あほか…。……なんで今なんやッ…」
振り返らないまま、彼の肩がわずかに震えた。
俺の手に水が落ちた ロボロは泣いているらしい。
「……俺もお前のことを、愛してる。けど……俺らは、もうそうなれへん」
最初で最後の好きな人で最初で最後の告白。
決して結ばれぬ運命の中で、確かに心を重ねた一瞬だった。
――その温もりと言葉だけが、一生の宝となった。
季節はめぐり、城の広場には人々が集まっていた。
王家の新しい未来を祝うために――俺は、許婚と共に姿を現したのだ。
豪奢な衣装に包まれた体。
その腹部には、はっきりと子を宿した膨らみが見える。
群衆からは歓声が上がり、祝福の声が響き渡った。
ゆっくりと微笑んだ。
王族として、未来を担う者として、求められた通りに。
その時だった。
人波の向こう――見覚えのある顔が目に入った。
ロボロ。
そして、かつて共に笑った仲間たち。
胸が詰まる。
思わず、ほんのわずかに笑みを深くした。
――会えた。見つけてくれて、ありがとう。
そう伝えたくて。
だがロボロたちの表情は苦しげだった。
笑ってはいたが、その笑みは痛みに耐えるように歪んでいた。
ロボロの目が揺れた。
それが無理をしていることに周りは嫌でも気づいてしまう。
こみ上げる涙を抑えられず、ロボロの頬を一筋の雫が伝った。
群衆の歓声に包まれながら、二人の視線は確かに交わった。
言葉も、触れることも許されない。
それでも、互いの想いは確かにそこにあった。
そして、王族として歩み続ける。
ロボロはその背を見つめながら、胸の痛みと共に涙を拭った。
――あの日の抱擁も、「愛してる」も。
二人だけの秘密のまま、永遠に心に刻まれていくのだった。
城の廊下に、静かな足音が響く。
産室から戻ったばかりの疲れ切った身体を支えながらも、表面上は笑顔を保つ。
国民や侍従たちの前では、王族としての役目を全うする「完璧な姿」だ。
だが、心の奥ではいつも空虚が渦巻いていた。
抱かれたいと思う人、愛しいと思う人――ロボロのことを思わずにはいられない。
会いたくても会えない、声を聞きたくても聞けない。
それでも、王族としての責務は容赦なく、次々と子を宿すことを要求する。
城で育つ子供たちは、父や母に従順で、未来の王族としての教育を受ける。
その成長を見守るたび、複雑な感情に胸を締め付けられる。
愛しても叶わない相手が心の奥にいるのに、目の前の命を守り、育てる責任を果たさねばならないのだ。
ある日、遠く城の外で、偶然姿を垣間見ることがあった。
大きく成長した子供たちを前に、微笑むシャオロンの姿。
その笑顔は国民や侍従たちに向けたもの――だが、分かってしまった。
――その笑顔の裏には、痛みと孤独がある。
胸を締め付けられる思いで、俺は目をそらすしかなかった。
抱きしめたい、声を聞きたい――それでも、今はただ遠くから見守ることしかできない。
シャオロンは義務に従い、命を宿し、子を産み、育てる日々を繰り返す。
その心には、消えることのない想いが静かに燃え続ける。
愛は叶わない。だが、義務を全うしながら生きることで、王族としての責任を胸に抱き、孤独と共に未来を歩んでいくのだった。
ロボロへの想いは変わらず、胸の奥で燃え続けている。
それでも、許婚との結婚と子作りは止められない現実。
次々と子を孕み、産む日々。
体は疲弊し、精神も蝕まれる。
子供たちは無垢で、純粋に愛らしい存在。
俺の中では、子供たちは全て愛おしい命であり、守るべき存在となった。
子供たちを寝かしつけ、そっと抱きしめると、わずかな安らぎが胸に広がる。
義務として押し付けられた苦しみ、叶わぬ恋――そのすべてを抱えながら、子供たちに注ぐ愛だけは純粋で、決して揺るがないものだと知る。
悲しみの中にも、一筋の光がある。
それは、どんな運命を背負っても、命を繋ぎ、愛を注ぐ力を持っていることの証だった。
城の広間に、日差しが柔らかく差し込む。
すると、子供たちの笑い声が聞こえてきた。
「おかぁーさまー!」
小さな手が伸び、無邪気な笑顔で飛びついてくる。
その瞬間、胸の奥の重みが少しだけ軽くなる。
叶わぬ恋の痛み――すべてを一瞬忘れさせる、純粋な喜び。
静かに微笑み、抱き上げた子供たちをぎゅっと抱きしめる。
小さな笑い声と温もりが、心の奥にわずかな光を灯す。
外の世界や自由を思い描くことはできない。
年月は残酷だった。
俺の顔立ちは年を重ねるごとに磨かれていった。
若き日のあどけなさはそのままに、目元の線は柔らかさを増し、肌は透き通るように白く――
男であるはずなのに、女顔負けの美しさで人々の視線を奪った。
「母上は、どうしてそんなに綺麗なのですか」
年頃になった娘が、頬を赤らめながら問いかけてくる。
「……ふふ、どうしてだろうな」
鏡に映る自分の姿に、シャオロンは答えを見つけられなかった。
ただ、耐え忍んできた年月が、哀しみと優しさを削り出し、この美しさを形作ったのだと――心の奥でわかっていた。
夫は誇らしげに言う。
「我が妻は国一番の美しさだ。見よ、この姿を」
けれどシャオロンの胸は、その言葉に縛られるたび、締め付けられる。
思い出すのは、あの夏の日、海の中で抱きしめ合ったロボロのこと。
彼の視線だけが、自分を“美しい”ではなく“愛しい”と呼んでくれた気がした。
「母上……」
子どもたちに呼ばれるその声は、確かに幸福をもたらす。
だが同時に、鏡に映る麗しすぎる自分の姿が、逃れられぬ鎖のようでもあった。
――年を重ねてもなお。
女以上に美しく、可憐に咲き続ける宿命を背負っていた。
城の奥、冷たい寝室の中で静かに横たわる。
彼は王族の義務を忠実に守るスパルタな人物で、毎日のように身体を求めてくる。
人工子宮がついているため、すぐに命を宿すことはできるが、身体は休まらず、精神もすり減る。
「……もう、耐えられない……」
小さくつぶやく声は、誰にも届かない。
それでも、義務として子を産むために体を差し出す日々。
妊娠していなければ生理はくる――体は微妙に変化し、生理のような痛みが周期的に襲ってくる。
城の廊下を歩きながら、日中、子供たちが笑顔で飛びついてくる瞬間にわずかな安らぎを覚える。
腹を痛めて産んだ我が子を抱きしめると、胸の奥の孤独が少しだけ和らぐ。
だが夜になると、再び許嫁が部屋に現れ、義務としての性交が始まる。
身体は疲れ果て、精神はぎりぎりのところで耐えている。
柔らかい春の風が吹く昼下がり。
いつもの散歩道を歩いていた。
城の外に出るのは久しぶりだが、外の空気は少しだけ心を落ち着かせてくれる。
ふと目の前に見覚えのある姿があった。
ロボロ達。
いつもの場所で待っていた、あの仲間たちだ。
「シャオロン!」
ロボロが手を振る。
足を止め、震える声で挨拶する。
少し離れた木陰に座り、雑談が始まる。
笑い声が聞こえ、普段のロボロ達のやり取りに胸が少し温かくなる。
「最近、なんしてたん?」
トントンが軽く聞く。
シャオロンは深く息をつき、言葉を選ぶように話し始めた。
「……城では……毎日、義務として孕んでは子を産んで、を繰り返してて…産後すぐ性交されて、…生活は……」
言葉が詰まり、視線を落とす。
胸の奥に渦巻く孤独と苦しみが、ついに抑えきれなくなり、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
「…ぁ、…ごめん、みんな……つい…」
ロボロは黙って隣に座り、そっとシャオロンの手を握る。
他の仲間たちも、何も言わずにただその場にいる――温かさだけがそこにあった。
止めようと思ったが口が言うことを聞かずあれこれ話してしまう。
「毎日、好きでもない夫に……体を差し出さなきゃいけなくて……でも、子供たちには罪はない…腹を痛めて産んだ子供は、愛してる……でも……ロボロ……」
声が震え、涙が止まらない。
思わずロボロの肩に頭を預け、嗚咽を漏らす。
「……俺……ロボロに会いたくて……でも、会えなくて……」
ロボロは静かに抱きしめ、肩を優しく撫でる。
「……わかっとる。俺らここにいる。お前の気持ちはちゃんと届いとる」
義務に縛られ、愛を奪われた日々――
でも、仲間たちの前では弱さを見せられる、ほんのひとときの安らぎがあった。
胸の奥の苦しみ、叶わぬ恋、毎日の義務――すべてが一度に押し寄せる。
そっと両手をお腹に当てる。
小さく膨らんでいる小さな場所に命が宿っている
「……まだここにいて……」
震える声で、シャオロンはつぶやく。
涙が頬を伝い落ち、手のひらで拭っても拭いきれない 。
「お願い……まだ、ここにいて……」
ロボロはそっと隣に座り、俺の肩に手を添える。
何も言わず、ただその気持ちを受け止める。
触れる手の温もりだけが心を少しだけ落ち着かせる。
「大丈夫、俺はここにいる……」
ロボロの声は低く、優しい。
それでも涙は止まらない。
いつもの広場で、ロボロ達と向かい合う
頬は涙で濡れ、肩は少し震えている。
「…聞いてほしい……」
声はかすれ、涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。
トントンやコネシマ、鬱、その他のやつらも、言葉はなくともその痛みを共有する。
「……辛いな……」
ロボロの声は小さいけれど、真剣さと優しさに満ちていた。
涙で濡れた頬を手で拭い、シャオロンは小さく息をつく。
肩はまだ震えているが、声には少しだけ強さが戻っていた。
「…まだ一緒にいたいけど、…もう、行かなきゃ……」
震える声で告げる。
「ありがとう……また、いつか……」
城の寝室、夜の静寂の中。
ベッドに座り、深く息をつく。
――傲慢で自己中心的な夫が、いつものように迫ってくる。
その姿を見るたびに、胸の奥が締め付けられる。
「……今日も、やらなあかんのか……」
小さく、震える声でつぶやく
怒りや苛立ち、疲労、そしてどうしようもない孤独が入り混じる。
夫は平然とし、俺の気持ちなどお構いなしに振る舞う。
しかし、その視線を避け、腹に手を当てる。
心の奥では、ロボロへの想いが胸を締め付ける。
愛する人と結ばれることも、笑い合うこともできず、ただ義務を果たすだけの日々。
涙がこぼれ落ち、胸の奥の痛みが押し寄せる。
義務として、王族として、そして許嫁の傲慢さに縛られた夜は、今日も容赦なく子宮に彼の性器を打ち付け種付けをする。
しかし俺の小さな体の奥には、まだ未来の命を守ろうとする意志が、かすかに光っている気がした。
その日は確か10人目となる子を出産したばかりだった。
まだ痛みの残る体を抱えながら、息を整える。
しかし、――傲慢な夫はお構いなしに近づき、俺に覆い被さる。
「……今日も……」
シャオロンの心は締め付けられ、体の奥まで疲弊しているのに、夫は止まらない。
「……また、増やすつもり……?」
震える声で問いかける
しかし、答えはない。義務として、王族として、夫の欲望は際限なく続くのだった。
ハムスターのように次々と生まれる命――その速度は、シャオロンの体と心を容赦なく追い詰める。
胸の奥では、叶わぬロボロへの想いが静かに燃え続ける。
笑えず、自由もなく、愛する人に触れられない日々――それでも、命を紡ぐ役目を果たすしかない。
胸の奥では絶望が広がる。
――どうして、俺の意志は届かないのか。
――どうして、愛する人に触れられないのか。
心は悲しみと苛立ちで張り裂けそうだ。
体は従わざるを得ない現実が、自分の精神をさらに追い詰める。
義務として、絶望として、そして愛する命を守るために、今日も耐えるしかなかった。
しかし、全身は疲労と痛みに支配されていたが、心の奥で「逃げたい」という思いが炎のように燃えていた。
……もう、耐えられない……
夫の手が迫るその瞬間、必死に体をひねる。
快楽で痙攣し思うように動かない体を振り絞り、重い布団や家具を利用して距離を稼ぐ。
……行かなきゃ…
押さえつけられそうになりながらも、一瞬の隙をついて立ち上がる。
足は震えるが、必死に扉へと駆け出す。
夜の廊下は冷たく静かで、足音だけが響く。
息を切らし、涙で視界が滲む中、必死に走った。
「ロボロ……会いたい……!」
心の奥で叫ぶ声は、誰にも届かない。
城の外の空気が、少しずつ体を軽くする。
外の自由な風が、束縛と絶望に覆われた体を包み込み、わずかな安堵をもたらした。
深呼吸しながら、振り返らずに進む。
今はただ、逃げること――そして、生きること。それだけが希望だった。
出産後の疲労で痛みが走る。腰も重く、歩くたびに鈍い痛みが響く。
それでも、胸の奥の「逃げたい」という思いが、体中に力を与えていた。
ぎこちなく、腰を押さえながらも、一歩一歩確かめるように進む。
逃げる先は、心の奥に思い描くあの場所――ロボロと出会ったあの道だ。
外の木漏れ日の下、ようやく足を止めた。
体中に疲労と痛みが残り、腰もまだ痛む。汗と涙で濡れた髪が頬に張り付く。
その瞬間、偶然通りかかったロボロが視界に映る。
「シャオロン……!」
俺はうつむき、力なく肩を震わせるだけだった。
ロボロはすぐに抱き上げ、静かな声で呼びかける。
「大丈夫、俺がいる……もう安心し」
体を布で拭きながら、ロボロは驚きと胸の痛みを覚える。
痩せた体、青ざめた肌、出産と義務の日々で疲れ切ったであろう体――
今までたくさん子を孕み、産み、心も体も擦り切れるように生きてきたことが、一目で伝わってくる。
ロボロの胸は締め付けられるように痛む。
息をつき、弱々しくも目を上げる。
「……ロボロ……」
ロボロはそっと手を握り、背中を撫でる
「もう大丈夫、俺がここにいる。これからは一人じゃない」
好きな人のボロボロになった体に、胸が締め付けられる――
疲れ切った体をロボロに預ける。
言葉はなくとも、互いの心は触れ合い、過酷な日々で擦り切れた心が少しずつ溶けていく。
ロボロはそっと俺を優しく抱き、夫に抱かれ中に出された精液を掻き出し上書きしてもらった。
過去の痛みも義務も、今だけは消え、ただ二人だけの世界に溶けていく。
翌朝、二人は海辺に立っていた。
穏やかな波の音が、かすかに心を落ち着かせる。
ロボロの手を握り、目を閉じる。
海に身を委ねながら、二人は静かに寄り添う。
波が足元を洗い、空の光が反射する中、二人は心を重ね、最期の時間を共に過ごす。
誰にも邪魔されず、過酷な日々から解放される瞬間――
二人の心は、互いに寄り添い、最後の安堵と愛を感じながら、静かに溶けていった。