重い雰囲気のままスタジオでの撮影は進み
時計の針が…そろそろ日を跨ぐ、丁度その頃…
誰かが、慌ててスタジオの中に入って来た
「照!」
それは、渡辺の恋人である岩本照で…
手には何かを握っている
「照、その格好…」
岩本の服装は昨日のままで…
ズボンも上着も濡れていて…渡辺も、他の演者も驚いている
「翔太、これ…」
岩本が何かを差し出し、それを受け取る…
「照、これ!」
渡辺の手の中には、薔薇のカフス…
「川の中に落ちてたよ…」
そう言いながら、頬に泥を付けた岩本が笑う
スタッフに、それを渡して…そこから彼へ
「こんな汚い姿で、神聖な撮影現場を汚してしまい…申し訳ありません…」
岩本は、先に深々と頭を下げて謝罪する
「それでも俺は、メンバーの渡辺が他人を妬んで人のモノを盗む様な真似…する様な奴だとは思えなかったので、勝手に探させてもらいました」
彼を真っ直ぐ見据えて、そう話す岩本に…誰も口を挟めない
「このカフスは、あの橋の下の川の中に落ちていました。おそらく、撮影中に落ちたものだと思われます…。これで、渡辺の疑いは晴れたでしょうか?」
ハッキリと、そう問い掛ける岩本に…次は彼が言葉を返す
「今回は、俺の勘違いだった様だ…。それでも、疑われる様な事をした渡辺さんにも…落ち度があったと俺は思うが、どうだろう?」
スタッフや、共演者に声を掛けるが…誰も言葉を発しない
あくまで、悪いのは自分だけでは無いという言い方に…
「申し訳ありませんが、疑った事への謝罪は無いのでしょうか?今までも、色々とご指導頂いた様で…。感謝しておりますが。これ以上の渡辺に対する侮辱…暴言等あった場合、こちらも考えが有りますので…そのおつもりで」
そう言った岩本は、再び頭を下げ
睨みを利かす
「うるさい!今日は気分が悪い…。もうお開きだ!」
勝手に、そう叫んで彼が出て行く…
仕方なく撮影は終了となり…渡辺は岩本の側へ駆け寄った
「ずっと、探してくれてたの?」
「何とか見つかって良かったよ…。これで、有りませんでした…は、辛いだろ」
そう言って笑った岩本は、側を通った小道具を持ったスタッフから
花瓶の花を一本だけ、分けて貰う
「翔太…。誕生日、おめでとう///」
ニッコリ笑って、それを差し出す
「ありがとう」
その花を受け取った、渡辺の目が涙で滲み…
「本当は、もっと豪華にしたかったんだけど…。あ〜あ…格好悪っ…」
最初に計画を立てていた
大きな花束も、豪華なディナーも…ここには無い…
だけど、照が俺の側に居てくれる…
それがどんなに幸福なのか、渡辺は身を持って感じる事が出来ていた
「そんなの要らない…。俺は、照が居てくれれば…それでだけで良い…」
涙を流して微笑んでいる渡辺を
抱き締めたいが、場所が悪い…
「ハッ…ハクショィ!」
どうやら、身体が冷えた様で…
岩本は、大きなクシャミを一つした
「岩本君、シャワーして来てください…」
渡辺に同行していたマネージャーに急かされて…渋々、渡辺を置いてシャワー室へ
『全く…今回の誕生日は、散々だった…。来年、次こそは絶対…格好良く決めてやる…』
新たな野望を胸に秘め…岩本はスタジオを出て歩き出す
すれ違った人達が【何事か?】と、ボロボロの岩本を振り返るが…そんな事は気にしない
『取り合えず、早く来年の計画を練らないと…』
そう心の中で呟いた岩本は、早くもリベンジに燃えていた
【完】
コメント
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💛くんカッコいい!!😆これは💙惚れ直しちゃいますね✨

💙モテてんのかな?と思ったら違ったし、何なら💛くんカッコ良すぎるし、泣いちゃった。ありがとうございました。