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 黒馬に乗った獅子の獣人、ヴィネ。対するは数多くの異界出土品《アーティファクト》を身に纏った特殊狩猟者、竜殺し。


「ふぅむ、お前は竜殺しか。情報は共有されているとも」


「そういうお前は何だ?」


 ヴィネは笑みを浮かべ、品のある仕草で礼をした。


「私はヴィネ。王と伯爵、二つの位を持つ悪魔だよ」


「王か……前に戦った公爵の悪魔より強そうだとは思ったが」


 竜殺しはその目を凝らし、ヴィネを観察した。竜殺しの眼が黄金色に変わり、悪魔の情報を映し出す。


「なるほどな……厄介そうだ」


「勿論、厄介だとも。私は王の悪魔だからね」


 ヴィネが杖を掲げると、魔力の波動がこの|氷見市《ひみし》を通り抜けた。同時に、竜殺しは一瞬でヴィネの懐まで潜り込むが、ヴィネは転移でその場から逃れる。


「当然、転移くらいは簡単に行使できる」


 空中に転移したヴィネ。黒馬の脚から滲んだ黒い何かが足場となり、まるで地面のように空を駆けている。


「そして、こういうことも出来る訳だ」


 瞬間、世界が揺れた。あらゆる場所から轟音が響き、周辺一帯の……いや、この街全ての建造物がガラガラと崩れ去り、瓦礫と化した。


「これは私の権能。どれだけ堅牢な要塞であろうと、杖の一振りで瓦礫の山となるのだよ」


「あぁ、見えているさ」


「ふぅむ。ならば、これも見えているか?」


 瓦礫と化した街が一斉に蠢き、それらは宙に浮き上がっていく。竜殺しは瓦礫が動くよりも早くアザミを拘束する蔦を切り裂き、黒い布をアザミに向けて放り被せた。


「ある程度の攻撃はこれで防げる筈だ」


「ッ、待って下さ――――」


 布はドーム状に広がり、アザミを守る結界と化した。それから竜殺しがその場を離れると、浮遊する瓦礫たちが一斉に竜殺しへと殺到した。


「見えているぞ、それも」


 竜殺しを中心に嵐が吹き荒れ、瓦礫が吹き飛んだ。だが、その隙間から赤黒い針が嵐を超えて竜殺しに迫り……剣に弾かれた。


「ふぅむ、確かに見えているようだ。だがしかし、これでも耐えられるかな?」


「ッ、これは……!」


 未来を見た竜殺しの表情に戦慄が走った。宙を舞って竜殺しに迫っていた無数の瓦礫。それはバラバラであれば竜殺しの巻き起こした嵐に吹き飛ばされるだけだったが、街一つ分の瓦礫たちは地面に落ちると、全方位から津波のように竜殺しに襲い掛かる。


「『目覚めろ、我が鼓動』」


 その光景を見た竜殺しは自身の胸を強く叩いた。


「『竜の血《ドラゴニフィケーション》』」


 ドクン。迫る瓦礫の波、その轟音すらかき消すような鼓動の音が一度鳴り、そして竜殺しの体が変容していく。


「おやおや、これは……」


 瓦礫の波の中から、何かが飛び出した。


「『竜血の騎士《ファクティ・サント・ドラコニス》』」


 それは、生物のように脈打つ赤黒い鎧を纏った騎士だ。その背からは竜の翼を生やし、両手にはそれぞれ別の剣を持っている。


「中々にグロテスク、しかし興味深いな」


 竜殺しの真下から瓦礫の波が集合し、その体を掴もうと上に伸びていく。


「興味深いのは結構だが、お前にそんな余裕は無い」


 竜の翼がはためき、竜殺しは一瞬で空中に浮遊するヴィネの下まで到達した。


「それはどうだろうね」


 竜殺しは目の前のヴィネに剣を振るう寸前に眉を顰め、後ろを振り向きながら剣を振った。


「ふぅむ。未来を見られるというのは厄介だ」


 何故か竜殺しの後ろに居たもう一人のヴィネは転移でギリギリ逃れ、正面に居たヴィネは鏡が割れるように自分から砕け散った。


「虚像、その程度で俺を騙せると思ったのか?」


「勿論。私達悪魔というのは、基本的に人間を舐め腐っているものだ」


 ヴィネの言葉と同時に、下で波打っていた瓦礫達が集まり、形を為していく。


「ゴーレムという奴だ。俊敏性には欠けるがね、力と耐久性は十分といったところだろう」


 瓦礫の集まり。それは巨大なゴーレムとなって竜殺しを睨んだ。


「さて、街一つ潰した訳だ。当然、これが一つとは行かない……どうかね、少しは怖気付いたかな?」


 百メートルを超える高さのゴーレムが、無数に作られていく。それらは全て竜殺しを標的に動き出す。


「俺が死の恐怖に怯えることは無い」


 竜殺しは自身を掴もうとする巨大なゴーレムの腕を一度の斬撃で斬り落とすと、両手の剣を消し去り、代わりに大剣を召喚した。


「俺が最も恐れているのは、このままずっと死ねないことだ。不死の恐怖に比べれば、死の恐怖なんて優しいものだろう」


 大剣がゴーレムの脳天に振り下ろされると、巨大なゴーレムは一撃で全身を砕け散らせた。

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