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星崎視点
深瀬さんは僕が怪我したことをスタッフから聞いたと話すが、
一瞬だけ妙な間があった。
少しだけ歯切れが悪い?
何でだろう。
おかしいな。
気のせいか?
「あ⋯藤澤さん!
今日もよろしくお願いしますね」
「⋯⋯え?」
ん?
何だろこの微妙な反応?
雑誌の表紙撮影は僕らが担当することになっているのに、
伝わっていないのだろうか?
「もしかして星崎が担当なの?」
勘のいい大森さんがそう話しかけてくれた。
僕が「そうです」と堪えるとやはり、
驚いた表情になる。
どうやら本当に聞かされていなかったようだ。
付け加えるように説明してくれた、
若井さんの話では担当が急に変わったことしか把握していなかったようで、
はっきりしないがどこかで伝達漏れがあったらしい。
「じゃあ安心だ!」
などと期待に満ちた眼差しと、
軽い口調のセットで、
若井さんがニカッと無邪気に笑う。
そう言ってくれるのは正直嬉しい。
(でもそれってやんわりプレッシャーじゃんか)
僕はすぐに移動してセッティングが順調かどうか確認を始める。
何故か気味が悪いほどにここ最近は、
社長による陰湿な妨害を受けていない。
だからこそ今日も何も起こらないかどうかが不安だった。
何もないのに安心出来ないだなんて、
矛盾しているが、
明らかにおかしかった。
この件に藤澤さんたちが巻き込まれなければいいが、
一抹の不安を抱えたままいつも通り衣装を見繕う。
ふらっ
まずいな。
今まで妨害が止まったことがないため、
最近は極度の緊張状態で、
夜はまともに眠れていなかった。
ここで倒れるわけにはいかない。
何とか両足で踏ん張って耐える。
しかしその一瞬でさえ彼は見逃さなかった。
衣装を準備する僕の方へおもむろに手を伸ばして、
目の下のクマをそっと撫でる。
(気づかれたか!?)
しっかり正面から彼と視線が合う。
心配そうな顔、
僅かに涙がたまる目元、
まだクマを撫でる指、
膝枕された時のことがブワッと鮮明に甦ってくる。
って何してるんだ!
今は仕事中だろ?
「また寝てないでしょ。
僕を頼ってよ」
甘くどことなく色気を感じる、
優しい語り口調で彼が言う。
間違いなく依存しそうだ。
「あ⋯お気遣いありがとうございます』
どうせこれは先輩だから、
気を遣われているだけだよ。
別に僕が好きだからじゃない。
小さな変化に気づいて、
心配してもらえて嬉しい反面、
申し訳なさでいっぱいだった。
「⋯⋯⋯ねえ、
後で話せる?」
急に真剣な顔をして彼がそう言うものだから、
僕は面食らった。
そんな表情をすることもあるのかと驚いて、
正直僕はうまく反応できなかった。
一体何の話?
いつも笑顔がトレードマークの藤澤さんが、
これほど表情を固くするような話だなんて、
よっぽどのことだろう。
その話を自分なんかが聞いてしまっていいのか?
他の人の方が適任なのでは?
と役不足すぎて気後れしそうなほど気が重い。
「はい」
かろうじてそう堪えるが、
実際はあまり気が進まなかった。
睡魔と戦いながら仕事だけはきっちりとこなして、
無事に撮影が終わり撤収作業となった。
だがーーーー
無事に終えられたことで気が緩んだのか、
僕は倒れそうになる。
「っ!?」
やばい。
眠すぎる。
もう限界かもしれない。
そこへ慌てた様子で藤澤さんが僕の顔を覗き込んできた。
だめだ。
もう頭が回らない。
この際もう引かれてもいいや。
半ばヤケになって呟く。
「僕のーーーーーになってくれますか?」
僕はそこで意識を完全に手放してしまった。
覚えているのは藤澤さんの腕に抱かれていたこと、
彼からいい匂いがしていたこと、
ただそれだけだった。
雫騎の雑談コーナー
はい!
まあそんな感じでですね。
果たして星崎が最後に言ったセリフは何だったのでしょうか。
まあ勘のいい方?いや良くなくても大概は想像つくかと思いますが、
答えは次回にて。
ということで本編に行きます。
たまたま現場被りをしていた星崎と藤澤さんですが、
何故か今まで起きていた妨害が不気味なほど音沙汰なしで、
却って不穏な空気が流れるんです。
そんな最中で緊張状態が続くことで不眠に悩まされていた星崎。
突然のタイミングで「話がある」と告げる藤澤さん。
さあこっからですよ。
だんだん話がややこしくなり、
甘々にもなりますよ。
↑そうしたい(予定)