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藤澤視点
『僕のソフレになってくれますか?』
彼がそう言って僕の腕の中になだれ込んでくる。
慌てて受け止めるが、
もう意識がなくてぐったりしていた。
こんなになる前に頼ってほしかった。
でもそれよりも気がかりなのは、
彼の発言だ。
ソフレって何?
「え⋯星崎?」
「TASUKUさん倒れちゃったの?」
そこに元貴と若井が心配そうに声をかけてくる。
どうしよう。
かなり困った状況だ。
僕は彼とプライベート付き合いがないため、
自宅の場所を知らない。
おまけに僕はこの後も仕事があるため、
一緒にはいられないのだ。
そうはいってもこのままここで彼を放置することもできなかった。
「えっと⋯⋯」
元貴から「星崎が一番懐いてるんだから面倒見てあげなよ」と、
後押しされたこともあって、
マネージャーに頼み、
ひとまず僕のマンションで休ませることにして、
僕は次の現場に向かった。
目が覚めて一人は不安だろうから、
マネージャーは彼についてもらうことにした。
それでも間接的には放っておくことになるため、
心配はゼロになんてなってくれなかった。
(ソフレって調べたら出るかな?)
気を紛らわすように元貴が運転する移動車の中で、
僕はスマホで検索する。
ソフレは「添い寝するけどただの友達」と、
何とも簡単な説明文が出てきた。
え?
何これ?
僕はちゃんと恋人として付き合いたいくらい好きなのに、
彼は友達程度の関係で済ませたいってこと?
それって僕じゃなくてもいいってこと?
僕の存在はただの抱き枕?
ズシンッとまるで心が海底を目指すように沈んでいく。
好きな人に好きになってもらうことが、
こんなにも難しいなんて、
彼に出会って初めて知った。
(ヤバ⋯泣きそうかも)
それでも僕は彼を好きでいたい。
僕だけは味方でいたかった。
愛おしい。
この人を一番大事にしたいと、
そう思えるだけの人に巡り会えたのだから、
絶対に「諦める」とか「他の人に譲る」とか、
全然そんな気にはなれなかった。
不安な気持ちを奮い立たせるために、
ペチペチと自分の頬を軽い力で叩く。
音楽番組の収録をする時も、
そこにいるはずがないのに、
僕の目はついついスタッフに向けられた。
まるで裏方の中から彼を探すみたいにーーー
(こんなに好きになるなんて思わなかったな)
キーボードを運び終えて、
ステージに移動させると、
主要なメロディラインだけ音出しをして、
本番に挑む。
星崎くんは大丈夫かな?
ゆっくり休めてるといいな。
本当は一緒にいたかったよ。
そういえばマネージャーと面識ないけど、
不安になってないかな?
僕はキーボードを弾きながらも、
頭の中は彼のことで100%埋め尽くされていた。
早く会いたくてたまらない気持ちになる。
ああ、
これが恋ってやつなんだ。
人を好きになったり、
嫉妬してしまったり、
彼に会って知らないことばかりだ。
彼によって忙しくなる感情すら、
特別なものに思えた。
「なんかあった?
今日すごい調子いいじゃんか」
何故か僕を揶揄うようにニヤニヤしながら、
そう元貴が聞いてくる。
どうにも興味津々と言った感じだ。
彼のことを考えていたからだとは、
恥ずかしくて言えないため適当に誤魔化す。
「え?
うーん⋯そうかな?」
「いつもよりも繊細さの質が違う気がした」
若井にまでそんなふうに言われて、
正直驚いた。
何でわかるの?
テレパシーか?
怖いな。
今後は勘づかれないように気をつけないとな。
無事に収録が終わってご飯の誘いを受けたが、
彼のことが気になりすぎて早く帰りたかったのでやんわりと断った。
僕は急ぎ足で自宅に帰りつくと、
カバンすら置かずに寝室に直行した。
そこで僕の目に飛び込んできたのは、
ベッド脇で彼の腕を引いて、
抱き止めるマネージャーの姿だった。
僕の中であの記事がリフレインする。
『添い寝するけどただの友達』
ねえ、
友達だったら誰でもいいの?
「これ⋯どういう状況?」
自分でも驚くほどに冷たい声色になり、
マネージャーの肩がビクリと反応した。
雫騎の雑談コーナー
はい。
星崎が望んだのはサブタイトル通りソフレ関係だったんですね。
あ、
もちろん本心じゃないですよ。
自分からの告白が恥ずかしすぎて、
苦し紛れの言い訳で藤澤を繋ぎ止めるための手段ですから。
まあ⋯回りくどすぎて結局勘違いされちゃってますけどね。
そんじゃあ本編です。
星崎にソフレ関係を要求されたことで、
恋人になりたいと言う意思がないのではないかと不安になる藤澤さん。
本当は照れ隠しの告白なんですが、
これって気づかないですよね。
本当に分かりにくすぎる。
それでも藤澤さんの中で星崎への「好き」がとめどなく溢れているのも、
彼だからでしょうね。
他の人だったら気持ちを汲み取れなくて、
愛想つかしてしまいますから。
それなのに何故かマネージャーと怪しげな雰囲気になっているんですね。
さて一体どうしてこうなったのか?
次回は星崎視点です。
お楽しみに〜