そんなこんながあって豚の夜の呼び出しの時間になった。サペンタに「さ、本館に行きますよ」と言われたが気が重い。
サペンタに「やっぱ殺していい?」と聞くと「さっきも言いましたけど、死刑になりますよ」と言われた。
サペンタの暗記しているこの国の法律によると「貴族を殺したら広場で見世物にされながら拷問されて殺される」らしい。
サペンタも見たことがあるそうだが皮膚を少しずつ剥いで行ったりするそうで、それはそれは無残らしく、直ぐにその場から駆け出して吐いてしまったそうだ。
見せしめにすることで、「貴族を殺したいけど、あの拷問を受けることになる」という抑止力になるだろうし、刑罰としては良いものだろう。
実際効果はあるそうだが、私にとっては邪魔でしかなかった。
豚の部屋に一歩一歩近づく。そのたびに、体が重みを増していく。処女喪失の精神的な苦痛だけだと思っていた行為前と違って、あの惨めさ、苦しさを知った後だと全く違う。ベッドというのもおこがましいベッドだが、あの自室のベッドがすごく恋しい。サペンタの母の遺室と知ったのもさらに体の重みを増して、歩く速度がだんだん遅くなり、いつしかあの部屋直前で足を止めてしまった。
「サペンタ、本当にどうにかならない? そう、私と変わってくれたりしない?」
少し涙目になりながら言う。普段ならこんなことは貴族の矜持として許せるものではないのだが、それを飛び越えるほど嫌だった。
「旦那様は娘には興味ありませんよ。私以外にも旦那様の娘はいますが、誰も夜に呼ばれたという話は聞いたことないので。どうにもならないので諦めてください。妊娠すれば、その時点で子供を産むまで自由になるので、そこまでは頑張ってください」
止まっていた足はサペンタに背を押されたことによって進んだ。
「平民と違ってあなたは貴族なんですから。頑張れますよね? 応援してます」
さっきした平民マウントがそこまで嫌だったか、と思ったが前半は皮肉を込めたジョークで、後半は本当に激励だった。字をなぞるだけの会話では読み取りにくいが、確かにそこには感情が籠っていた。
なんとなく、しょうがないなと思いつつドアを開ける。なんとなく、サペンタと喋っているときのように明るくなれた気がする。
まったくそんな状態になっている暇ではないのに、サペンタの激励はありがたかった。溺れる者は藁をも掴むってのはこういうことなんだろう。
「来たな、まだベッドに乗らなくていいぞ」、と全裸の豚がこちらを見ている。お前は服を脱がなくていいぞ。え、じゃあなんだ、見てるだけでいいのか、と思ったがベッドから降りて、私に近づく。服を脱いで四つん這いになれと言われたので従う。これくらいなら、もうへっちゃらだ。あーもう、私これで人じゃないなー、と思ったが、こちらに男性器に近づけて「舐めろ」と言って来た。嫌悪感をしっかりと感じ、そんなことはない、と再認識させられる。ソレを舐めるのは抵抗感しかない。娼婦ほどの経験でもなければ、誰だってそうだろう。一度体に受け入れさせられたからと言って、私はそれを舐める度胸はなかった。
言葉は理解できたが、実行がめちゃくちゃ嫌だった。助けを求めようと、後ろをチラッと見てみると、サペンタがこちらを凝視するでもなく、かといって目を離すわけでもなく、ぼーっとした感じでこちらを見ていた。あーかわいそうだなーくらいにしか考えてないだろう。
どうもしたくないので、しばらく見つめる。私がやりたくなるまで、私は待ち続ける。
しかしその様子に、豚は苛ついたのだろう。いきなり私の頭を掴んで、私の口に押し付けてきたのだ。反射的にうぇ、と言う直前にその口が開いた隙を見逃さず、豚は喉奥まで押し込んできたのだ。
そのまま喉を使って扱き出す。反射で吐きそうになるが、そのスペースもないほど私の口の中は蹂躙されていた。身体強化を使えばこいつを殺すことだってできるのは前回もわかっていたし、その危険性もわかっていたが、サペンタのあんな話を聞いた後ではさらにやろうとは思えなくなる。結果的に、耐え忍ぶ他ないのだ。
舌を使ってさっさと終わらせてやろうかとも思ったが苦しみで舌が動かない。声も上げられず、んぐ、ンぐ、と嗚咽しか出せないまま時は過ぎ、「出るぞ」と言われて喉に汚物が吐き出された。
喉の部分の圧迫物がなくなり、私は吐いてしまった。それはもう、無残に吐いたのだが、「ちゃんと飲まないとエサを無くすぞ、少なくとも今回は舐めとらなければエサは無い」と豚は言うのだ。
命綱を握られているのはこんなにも恐ろしいことなのか。私はしょうがなく、やけに白い胃液と、昼に食べた野菜の残骸らしきものを前にして、ぺろぺろと舐めるほか無かった。
屈辱とか、汚いとか、そういうことは考えてる場合じゃないのだろう。この屋敷ではこの豚が絶対で、逆らったら死ぬ。
多分、サペンタの母親もどこかで堪忍袋とかの尾が切れたんだろう。サペンタの考え通りなら、それで殺された。考えていると、見せしめって本当に効果あるんだな、とわからされる。
飲み込むときに、酸っぱくて、それでいてドロッとしている。もう一度サペンタに助けを求めて後ろを除くのだが、「掃除するのめんどくさそう」くらいしか考えてない感じの顔だ。さっきまで私を激励してくれたサペンタはいったいどこに行ったのだ。
舐める途中、豚は髪を使って汚い棒を扱き出した。気持ち悪い感触が二重で感じられ、不快というレベルではなかったが、何とか舐め切ると、それと同時か少し後に発射し、私の背中に精を吐き出した。
気持ち悪くて背中を触るとぬめぬめしていて床で拭こうとしたらやはり「舐めろ」というのだ。しかも、豚のほうを見ながら、という条件付きで。もちろん断れば飯なしだ。
胃液を舐めるよりもさらに嫌だった。しっかりとした、純度100%の汚物だ。生産者の顔というのは基本的に見えてうれしい物のはずのなのに、こいつの顔は全く見たくなかった。できるだけ視線を外して、舐めてみるのだが、それでも苦痛なのは変わりなかった。
何も痛くないのに、心をズタボロにさせられるのだ。調教。そう調教だ。心にぼんやり浮かんだ言葉だが、しっくり来た。相手が豚なのが逆だが、確かにこれは調教なのだ。
舐め終わるとニヤニヤこちらを見て、豚がベッドに寝転がる。反り立つ汚物を見て、またなめさせられるのかと思ったが、「動いて楽しませろ。言わないとわからないのか」と言う。わかるか。
だが不快感は意外と感じなかった。もうすでにやったことだからだろうか、すっと、「嫌だけど入れるか」という思考に移れた。
よし、と体をベッドの上に上げて一気に入れる。しかし思った一〇倍は上の痛みに、体が串刺しにされたかのような錯覚に陥った。慣らしてもないのに、入れて動けるはずはなかった。動けないまま茫然としていると、また豚がイライラしだして、腰をつかんで動かす。結婚式のときに感じた「処理道具」とは、こういう状態のときに言うんだ、とわかるほど痛い。
槍が腹から、胸あたりまで、何度も刺されて、血まみれになっている気がして下を向く勇気がなくて、死ぬんじゃないか、という幻想に至った時、私は意識を失った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!