TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

気が付くと私はベッドもどきの上にいた。サペンタが私の顔を覗き込んでいる。ドアが開いていたので外の景色が見えるのだが、外はかなり真っ暗だった。月の位置的に前回よりは早いが、深夜に終わったらしい。


「あ、気が付きましたね。大変でしたよ、下のほうが血まみれで、しかも泡吹いて倒れた状態で旦那様に奇麗にしろ、って言われたので」


体を起こしてそこを見てみると包帯が巻かれていた。というか、背中のほうが痛い。聞いてみると「引きづって持ってきました。重かったので」と言ってくる。怪我人に何してるんだふざけんな。


「というか、体の痛み位治せますよね? スキルって、『体の中のものを強くする』スキルでしたよね。

それで治癒力とかを強くすれば一瞬で治ると思うんですけど」


詭弁にもほどがある、と思ったが心臓だけを狙って強化させられるようなスキルに、治癒力を上げるのが「絶対にできない」かと思うと首をかしげることになる。

試しにそう念じてスキルを使ってみるとじわじわ、と背中の痛みが和らぐ。


「え、ちょっとこれ、どうなってるの? サペンタ、ちょっと背中見て」


「…驚きました、ほんのちょっとづつ青くなってるのが治っていきます。マジで治るんだ」


思ってたよりこのスキル、すごいかもしれない。このまま普通に身体能力を上げれば、傷が早く治って、しかも割と強い最強の戦士になれるかと思ったが、同時に使うことはできないらしい。

身体能力を上げるか、傷を早く治すかのどちらかのみ。うーん、ちょっと微妙…


「割と応用が効くんですね。体の疲れを軽減したり、あ、あと足だけを異様に早くしたり、体を固くして痛みを軽減とかできるんじゃないです? 旦那様との行為中に意識を失うこともなくなると思いますよ」


「意識を失ったほうが楽だから別にしないけど、なるほど」


「というか一生スキル使ってればいいんじゃないですかね? スキル使ったからって、疲れたりはしないように見えますけど」


……普通に盲点だった。言われなかったら永遠に気付かなかっただろう。身体強化すれば鍛えた兵士ちょっと手前まで強くなれるのだから、その状態で普段暮らしていればとても楽なはずだ。

しかし身体強化の応用は本当にいろいろできるか気になる。試しに外に出て一個ずつやってみようと思ったが、股のあたりが痛くて歩けない。しょうがないのでスキルを常時発動させつつ、サペンタと雑談をしながら回復を待った。

ちなみに話題は「なぜ私のことを行為中に冷めた目で見ていたのか」で、

答えは要約すると「どうにもできないので」だった。納得。


――


「回復! さて、試すわよ」


「そうですか」


まずは疲労軽減を試す。その辺を走ってみたところ、あまり疲れなかった。息切れはしたが、足に疲労感はない。めっちゃ便利。普段使いするならこれだろう。

次に足だけ身体強化を試す。その辺をまた走ってみたところ、めっちゃ早かった。それはもう早い。調子に乗ってサペンタの周りを回ってみると、「何してるんですか」と言われるくらいには早い。割と便利。ちなみに足は普通に疲れる。めっちゃ疲れるわけでもなく、走った分だけ疲れた。息切れもする。

ついでに呼吸器だけ強化をして走ってみると息切れはしなかったが普通に疲れる。微妙。

最後に硬化と痛みの軽減だ。サペンタにビンタしてもらって試すと、痛くない。また調子に乗ってサペンタに全力で殴ってもらったらちょっと痛いくらいで済んだ。むしろ「いっっっった!!!!」と返されるほど固くなっているらしい。

いや、これほどまでに応用が利くのか。いや、これはすごい。

というか、こんなのを思いつくサペンタは完璧超人じゃないだろうか、いや、私の考えが足りないだけで、ふつうはこれくらい考えられるのだろうが。

サペンタと二人なら、世界取れる気してく――


「いや、手が痛いんですけど。とりあえず謝ってください」


申し訳ないと思って「ごめん」と謝る。

あ、でもそうだ。体の中に入れたものにも身体強化は使えるんだから、サペンタの痛みも治癒力を上げて治せばいいんだ、と短絡的に考えて、ボスコボルトにやったように口を重ねて使う。

……いや、使おうとしたけれど、顔を近づけて右手で口を開けさせた瞬間、自分がしようとしていたことに気が付いた。

それって要するにキスだろう。私はアホなのか。

しかも舌を入れてくるのはサペンタからじゃないと私の体に入ったと言えないだろう。入れるとしても、指とか。その辺でいいのに、私は何をしているのだ。

唖然としたサペンタに「………、とりあえず、何をしたかったのか説明してください」と言われてさっきの考えてたことを説明したが、「嫌ですよ、嘔吐物と旦那様の精液舐めた口に指入れるの。せめて口をゆすいでください」と返される。私もそれは嫌だ。サペンタが持ってきていた水筒の水を口に含んで、ぐちゅぐちゅと口をうがいしてから、その辺の地面に吐き捨てる。

「待ってください、やっぱり人の口の中に指を入れること自体が生理的にアウトです。痛みももう消えたのでやめてください」

コロコロ意見を変えてるのにイラついて手を出しそうになった。

だがまぁ、介抱をしてくれた上に、スキルの能力の検証まで手伝ってくれたのだ。

腕の強化のテストとして、持ち上げてぐるぐる回すだけで許してあげた。「まぁまぁ楽しかった」と言われたので多分罰になってないががとにかく気は晴れたのでセーフだ。

最近のお嬢様は身体強化くらい軽く使えるらしい。マジ?

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

31

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚