この間までの異次元な暑さが嘘かのように、冷めたい空気が体に触れた。
今日は11月並の寒波が流れ込むので、暖かい格好を…と朝、垂れ流していたニュースで言っていたのを思い出した。
上に羽織っていたカーディガンを手先まで伸ばし、なるべく暖を取れるようにする。
どうも、寒いのは苦手で出来れば外に出たくない。家の中がいい。
しかし、今日はそうもいかず、やらないといけない事がある。
話を…つけるべき人が。
お洒落な店が並ぶ、センター街の一角のカフェで待ち合わせをする。
先に着いた俺は、自分の席を連絡し、それからホットコーヒーを一杯頼んだ。
外では、雨が降り始めたようで、窓ガラスに水滴が付いては垂れてを繰り返している。
これは長続きしそうな雨だなと、スマホで適当に天気予報を見ながら思った。
『雨、憂鬱?』
『っえ、あぁ、お前か。ビビったわ』
『ごめんごめん笑 お待たせ』
気配なく流れるように、話しかけて来たのは今日、俺と待ち合わせをしていた相手。
『てかなんで、憂鬱って聞いたの』
『え?笑 なんかさとみくんの顔、外見ながら険しかったから笑』
『そんな顔してた?笑』
『うん、結構』
険しい顔をしていたのはあまり自覚はないが、とてつもなく今は心臓が早鐘を打って緊張している。
対して何も知らないこいつは、にこにこといつもの笑顔を振りまきながら、ホットカフェラテとパンケーキのセットを店員に頼んでいる。
『今日、寒いですよね』
『急に寒くなるから、急いで長袖出しましたよ』
『本当にそれはそう』
『でも、また明日からは暑いって…体調管理が難しいですよね笑』
『るぅとはすぐ体調崩し気味だからな…気を付けろよ』
『ですね』
そんなたわいのない話をしていると、先程頼んだホットコーヒーと、るぅとの物が運ばれてくる。
『わぁ…美味しそう』
『あ、写真アップしていいですか?』
『インスタ?』
『はい』
『どぞー』
すると、上手く撮れる角度を探し、素早く写真を撮ると、すぐにストーリーへとアップする。
『よし、おっけー』と言うなりスマホを置いて、さっといただきますをし、一口頬張る。
ちゃんといただきますをするところだとか、一口食べては口元をナプキンで拭うところだとか、育ちの良さがよく出ている。
『そういえば、話ってなんですか?』
『あー…まぁ、それ食い終わってからでいいよ』
『分かりました』
急に話をされると思ってなくて、まだ心の準備が出来ていなかったので、少し先延ばしする。
あと、こいつが美味しそうに食べる姿を見たかったのもあるけど。
そんなこんなで、パンケーキをぺろっと食べあげ、満足そうにしているので、話を始めることにした。
少し冷めたコーヒーを飲み干し、深く息を吸って一言。
『あのさ…俺、お前のことが好きなんだわ』
『…ッへ?』
当の本人はまさか斜め上を行く話を切り出され、上掠れた腑抜けの声を出す。
『そ、れは…恋愛?でいいんだよね』
『うん』
『そっ、かぁぁー』
『え?』
なんだかニヤニヤと笑い、何か色んな意味を含めたような返事をされ、反応に困ってしまう。
『実を言うとね?』
『僕もさとみくんのこと、好きだったりするよ?』
グイッと距離を縮められ、敬語が外れた言葉を言いながら、首を軽く傾け、唇に人差し指を置く素振りをした。
余裕そうに見えたが、耳はとてつもなく真っ赤で。
その姿がまた愛おしいと、好きだと思った。
『まじで言ってる?』
『まじ』
『はぁぁぁーー。 良かったぁぁーー笑』
『まーじで嫌われたと思ったわ笑』
『そんなことないですよ笑』
一気に緊張の糸が切れて、机に突っ伏した。
そして、告白が成功した事実の喜びがラグで来て、更に胸が高鳴る。
『え、じゃあ…付き合うってことで、?』
『いいよ。これからよろしく、さとみくん』
『あぁ。よろしくな、るぅと』
そう2人で笑い合って言った。
いつの間にか、外の雨も止んだようで、雲の隙間から、まるで祝福されるかのように光が射し込んでくる。
改めて、今日言って良かったなって思った。
外の温度は冷たいが、俺たちの間はこれからもずっと温かいものでありたい。そう願って。
秋雨とコーヒー【END】
《作者より》
作品をご覧いただきありがとうございました。
最初の第一作は、自分のテーマ?モチーフでもある【雨】を題材に書かせていただきました。
全国的に急激な寒さが来ているので、皆様体調崩されませんよう、お気を付けください。
それでは、そろそろこの辺で。
雨宿りしてくれてありがとう。
あなたの空が晴れますように。
さようなら☂
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