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「うわぁ~……あんなにおっきい魔物がどこから入ったんだろ~?」
「そんなの知らないのだ! そんなことよりドワーフは何匹倒したのだ? シーニャ、負けていられないのだ!」
「え、え~と、さっきので二十五匹くらい?」
「そんなんじゃアックが褒めてくれないのだ! もっともっとやっつけまくるのだ!!」
「ええ~? でも、もう近くには見えないですよぉぉぉ? 見えるのはおっきい魔物だけで~」
魔物のニオイを感じ別行動を取ってから数分後。
シーニャとルティは、うっそうとした森林にまで魔物を追いかけて来ていた。現時点では数にモノを言わせた獣集団との戦闘を繰り返している最中のようで、ノートリアス《悪名高い》と呼ばれるハイクラスの魔物とは未だ戦ってもいない。
「残っているのはアレだけなのだ! ドワーフはどれからやっつけるのだ?」
「え、え~……見渡す限り、全部おっきいですよ~? どれと言われても~」
シーニャとルティは、それぞれで猪やグリズリーといった獣を倒しまくって競っていた。彼女たちは実力を全然出し切れてもいなかった。そこに、大きさが明らかに異なる魔物の群れと遭遇。
二人は徐々に近づくにつれ、天をも覆い尽くさんばかりの巨体であることが判明する。これにはさすがのルティも戸惑いを隠せずにいた。
「あんなの、ただおっきいだけなのだ! シーニャ、ツノが長い奴をやるのだ。ドワーフは上にいる奴を叩き落とせばいいのだ。ウニャッ!」
「う、上~……ワイバーンじゃなくて、どう見てもドラゴンというやつなのでは~」
「ごちゃごちゃうるさいのだ! 上から先にやっつけてこいなのだ!!」
「はへぇぇぇ!? わ、わたしがお先に~!? で、でもどうやって空にいる相手を……って、シーニャ!? まだ攻撃もしていないのに早すぎですよぉぉ!!」
連携が取れているようで取れていないシーニャは、地上を闊歩している巨躯に向けて駆けだす。山のような巨体と特徴的なツノと牙を持つゾウとも羊とも取れる獣の足元に、シーニャは意気揚々と先制攻撃を仕掛けた。
「ウウニャッ!! 図体だけで大したことが無いのだ!」
シーニャが手にした爪により、巨躯の足からは滲むような鮮血がほとばしる。攻撃を受けていることを認識しながらも、シーニャの攻撃は獣が反応するよりも素早く、鈍足の動きをさらに鈍くした。
「ガグォォォォォ……!!」
巨躯の獣は攻撃してくるシーニャを捉えられず、野太い足を揺らし、振りほどこうと足掻くだけ。憤怒の叫びをあげ、悲鳴に似た声を洩らしているものの、小刻みに切り傷をつけるシーニャの攻撃は休まることを知らない。
主人であるアック・イスティの強さに及ばないシーニャだが、獣や魔物相手では本来の強さを発揮。足下から右に左に近接攻撃を繰り返す。
「グゴアァァァァァァアァァ……!!」
すると、
獣の咆哮とも呼ぶべく叫びが、うっそうとした森林に衝撃を与え始めた。すでに獣の四肢はバランスを崩し、まともに立っていられなくなっている。
「ガウゥ……息絶えの時なのだ! アックの為に、シーニャがやっつけるのだ!! ウニャッ!」