「ねえ中也。もっと嬉しそうな顔をしなよ」
太宰が冷たい声で云う。
「私に死んで欲しかったのだろう? 願いが叶ったじゃあないか」
違う、違うんだ。
「何が違う? ずっと云っていたじゃないか。『殺してやる』って」
あれは、そうじゃなくて、ただ、守りたいだなんて云えなくて、
「私が嫌いなんだろう? 喜べよ、中也。私がいなくなって、解放されて、嬉しくないのかい?」
謝るから。だから、戻って来てくれ。
いつもみたいに俺をからかって、それであれは悪い夢なんだって、現実じゃないんだって思わせてくれ。
「今更後悔したって、もう遅いよ」
そこで、目が覚めた。
「夢、か……」
本当は、死んで欲しくなんてなくて。
俺が殺すだとか云っていたのは、ただ、守りたいなんて云うのが照れくさくて。
太宰が首領になって、もう”相棒,,じゃなくなっても、側についていたのは、守りたかったからで。
本当は嫌いなんかじゃなかったんだ。
何に替えても守りたかったんだ。
今更後悔したって、自分の気持ちに素直になったって、彼奴の云う通りもう遅いのに。