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⚠5章ネタバレを含みます オバブロヴィル様当たらなくてイライラしたので書きました(6000文字超)
第1話 - #VDC #ヴィル #姐様 #ヴィル・シェーンハイト #ヴィル姐様かっこいいです!
17
2025年08月05日
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2025年08月05日
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貴方に出会ったのは、ナイトレイブンカレッジに入学して、結構経ったある日。
アズールさんのオーバーブロットが終わった翌日だった。
本を読んでいると、隣に貴方が座っていた。
その姿がとても美しく、神のような存在が本当にいるんだと思った。
だが、話しかけることはなくそのまま本を読み進めていた。
すると、そのページに書いていたセリフを読み始めたのだ。私が想像していた声で。
『えっ!?あ、うそっ』
心の内が読み解かれたような感覚がして、恥ずかしかった。
ふと、隣を見ると少し微笑んだ彼の姿がいた。
少し経つと、彼が立ち上がって、どこかに行こうとしていた。
まだ、名前も聞いていないのにここで逃すのはいけないと思い、追いかけて彼の手を握った。
『あ、あのっ…お名前を聞いてもよろしいでしょうか?』
驚いた表情をしていたが、すぐに
「ヴィル・シェーンハイトよ」
それだけ言って、ここから立ち去って行った。
それから何日か経ったある日。
VDCという世界的音楽イベントがここ、ナイトレイブンカレッジであるらしく出演者を募集していた。
まぁ、いつもの三人は金目当てでやってるけど。あと、ついでに私も参加させられたし。
ダンスなんて得意じゃないんだけどな。
人の前で演技をするというのがとても苦手。
どうしても、今私は何をしているんだろう、と虚無状態に陥る。
そうしているうちに、中庭に行くことになった。
「なんだ?この歌」
綺麗な歌声が井戸の方から聞こえてきた。
見惚れて聞いていると
「ア”ぁッんガッ!オエッ!」
汚い声が混じって聞こえた。
『大丈夫かな?変な薬盛られたとか…』
井戸の方に近づいてみると、茂みの向こうからとても綺麗な儚げ美少年が現れた。
『あ、君って…』
そうだ、この子には会ったことがある。
ホリデー後のメインストリートで、デュースとぶつかった子だ。
「確か…エペル、だったよな」
あぁ、エペルというのか。
可愛らしい名前だな。
そう思って、会話を少し聞き流しめに聞いていると
「あら、エペル。歌の練習をサボって鳩とおしゃべり?」
どこかで聞いたことがある声が、脳に響いた。
「あ、あれは…」
ヴィル・シェーンハイト。
私が尊敬している人。
まさか、こんなところで再会するなんて。
『あ、あのっ…ヴィルさんですよね?私、オンボロ寮の』
「そこの子ジャガ達」
そこで、私の会話が途切れた。
え、覚えてない…?
まぁ、そうだよねあんな日常の片隅にも置けない会話。
忘れ去られているよね。
そこからは、あまり記憶もない。
気がつくと、オンボロ寮にいた。
翌日の昼。
体育館にいつもの三人と行った。
昨日のことが、ずっと脳に引っかかって忘れられない。
自分の脳は、ポンコツだな。とか変なこと考えていると
「おっ?お前らもダンスかぁ?オレたちも混ぜてくれよ」
前、オーバーブロットの事件があったスカラビア寮のカリムさんとジャミルさんが現れた。
『あ、こんにちは』
「あぁ!こんにちは!」
「お前…前世話になったっていうのにそんな調子で大丈夫か?」
カリムさんは、いつも元気で羨ましい。
私なんか、しょうもないことだって、すぐ処理できずバグを引き起こすのに。
色々話していると、どうやらスカラビア寮の二人もオーディションを受けるらしい。
そこで、一緒に練習することになった。
当日。
完璧ではないが、まぁ多少は踊れるので大丈夫だろう。
会場には、ケイトさんやラギーさんもいる。
とてもざわざわしていて、私には不釣り合いの場だ。
『帰りたい…』
そう呟くと同時に、ポムフィオーレの人達が現れる。
ヴィルさんとルークさん、それにエペルもいる。
どれも皆美しく、可憐で目が離せない。
そして、私たちの順番がやってきた。
ダンスは下手だが、まぁそれなりに頑張っている。
目の前のヴィルさんは、険しい表情だが。
少しでも、気づいてもらいたくて最後に頑張って自分なりに他人を演じた。
音楽が終わるとほっとする。
こんな感情音楽を聴いていて一つもなかっただろう。
会場を出る時のヴィルさんの姿は、目には見えても私には遠い世界の光だと思った。
オーディションの結果、三人は合格。私はマネージャーという立場になった。
しかも、合宿をするらしい。オンボロ寮で。
最悪だ。
だから、ダンスなんてしたくなかったのに。
マネージャーも面倒くさそう。
でも、ヴィルさんと話せるなら嬉しい。
そう思っていたのに…。
「は?アタシは今忙しいの」
そんな感じで、全然話せない…。
しかも結構マネージャーって忙しい。
今は、休憩時間だけど。
まぁ、その休憩時間にカロリーなしのプリン作ろうとしてるんだけどね。
ヴィルさんのために、研究していて良かったなと思えるレシピだ。
『よし、あとは…冷やして…』
「あら?何作ってるの?」
後ろにヴィルさんが立っていた。
『あ、いやいやいや違うんです!これは決してヴィルさんの考えているメニューなどには関係ないんです!』
意味がわからない言い訳を創ってしまった。
どうしよう、怒られる。
恐怖なのか、ぎゅっと目をつぶる。
しばらく経っても、何も起こらないので、目を開けると私の横に彼がいた。
「へー、砂糖不使用なのね、いいじゃない」
褒めて、くれた?
『みんな疲れてそうだなって…こういうつるんとして甘いものなら疲れも少しはなくなるかなと…』
怖すぎて、直視できない。
どう言われるか、本当に怖くて、足が震えていた。
『あ、そうです…もし良かったら、前作っていたの、試食しますか?』
声が震えながら、ヴィルさんにプリンを差し出した。
すると、スプーンを取って、優雅に食べた。
「ふーん、ちゃんと甘いじゃない何使ってるの?」
『あ、バナナです』
「へー、すごいわねこれ、毎日出してちょうだい」
そう言われた。
気がつくと、ヴィルさんはどこかに行ってしまった。
『やった…やっと、まともに話せた…っ』
一歩一歩きちんと進めているんだ。
そう考えたら、嬉しくて涙が出てしまう。
しばらく、マブ達が私を発見するまで、少し甘い雫をこぼして泣いていた。
文化祭当日。
私は、会場の視察に来ていた。
「美味いもんでもあるか?」
『あるんじゃない?分かんないけど』
グリムとご飯の会話をしていると、リドルさんに出会った。
『あ、リドルさん。お元気ですか?』
「あぁ、監督生か、ごきげんよう」
やっぱり、いつ見てもリドルさんはキリッとしていてかっこいい。
前はオーバーブロットしてしまったけど、それを経験して今では、とても頼もしく思える。
そんなリドルさんと一緒に視察をすることになった。
山を愛する会という変な展示があることを知らずに…。
VDCがいよいよ始まる時。
リハーサルを見て、何故か成長を感じた。
でも、やっぱりヴィルさんが美しい。
いつ見ても、やっぱり憧れは輝いて見えるのだと改めて再確認する。
ナイトレイブンカレッジ生のリハーサルが終わると、次はロイアルソードアカデミーの番だ。
以前、CMで見たネージュ・リュバンシェという子がセンターだ。
愛嬌があり、ファンは多いそうだ。
そのステージは、とても可愛らしいナイトレイブンカレッジ生とは違う魅力があったステージだった。
そのリハーサルが終わり、ヴィルさんの横顔を見て、なにか嫌な予感がした。
ヴィルさんの身に何かある。
そう感じてしまった。
「おい!子分!どこ行くんだゾ!」
『ヴィルさんのとこ!』
グリムも連れて、ヴィルさんの元に行った。
やってきたのは、この会場の地下。
「あ、ヴィルいたんだゾ」
『静かに。まずは様子、見よ?』
壁に隠れてヴィルさんの様子を伺うことにした。
すると、ネージュさんの元に行っていることが分かった。
ヴィルさん…何をするつもりなの…。
そう思って見ていると、ネージュさんにリンゴジュースを渡していた。
確かあれ…マジカメに載せていたやつ…。
ネージュさんが飲もうとする。
その時のヴィルさんの表情が、恐ろしい程に微笑んでいた。
それで反射的に声を出してしまった。
『ダメです!飲んじゃダメ!』
その声と同時に、瓶が誰かの手に渡っていた。
不審者かも。と思い見てみると 、ルークさんが居た。
『ルークさん!?どうしてここに!?』
ヴィルさんも驚いていた。
気づくと、ネージュさんはどこかに行っていた。
そして、ルークさんはそのジュースを飲もうとしていた。
『ダメです!ルークさん!』
「ダメだ!ルーク!」
私とは違う誰かの声がした後、パリーンと瓶が割れる音がした。
『カリムさん!?どうしてここに!』
ふと、見るとカリムさんが居た。
「なんか、嫌な予感がしたんだ」
どうやら、カリムさんも私と同じ理由でここに来たらしい。
相変わらずヴィルさんは、恐ろしい表情をしている。
『ヴィルさん!どうしてネージュさんを……』
そう言うと、ふふふ、と笑って下にこぼれたジュースがゴポゴポと音を立てて蒸発した。
「おげっ…くるしっ」
「ゴホッゴホッ…なんだ、これ…っ」
私は、苦しくて話せなくなっていた。
やばい。ヴィルさんが。ヴィルさんが。
オーバーブロットしてしまう。
その時。
ブロットの化身が現れた。
リドルさんやレオナさん、アズールさんやジャミルさんがオーバーブロットした時と同じ。
「血も凍りついて…もう二度と目覚めることはない」
美しく、その恐ろしい姿に圧倒される。
毒の空気で動けなくなったその時。
ヒュウッと何かが飛んできた。
あれは…魔法の絨毯だ。
それに乗っているのは…ジャミルさん!
「ジャミル!!」
「みんな!乗れ!」
それに乗って脱出した。
外は雨だった。
『ひゅっ、ごほっ、けほっげほっ…』
毒の霧を沢山吸ってしまったせいか、まだ痺れが取れない。
「監督生君!大丈夫かい!」
意識が朦朧としている。
「監督生!」
打ち付ける雨がとても冷たい。
そこで、意識を失った。
毒が回るってこうなのか。と思ってしまう。
何故か走馬灯はなかった。
気がつくと、VDCは終わっていた。
「監督生君!大丈夫かい?」
一番最初に目にしたのは、ルークさん。
『るーく、さん?ぶいでぃしーは…?』
「終わったよ。私達は2位だったけれどね」
「ルークの一票でロイヤルソードの連中に1位を取らせちまったけどな!」
膝の上にグリムが寝転んでいる。
『あの、ヴィルさんは?』
ヴィルさんが気になっていた。
オーバーブロットして、体調が悪いか。
それだけ、気になっていた。
「ヴィルかい?ここにいるよ」
視界が開けて、目にしたのは椅子に座っているヴィルさん。
「はぁ…アタシのせいで…」
表情は…良いとは言えない。
『ヴィルさんのせいじゃないです、よ?』
頑張って、微笑んでみせた。
「…ルーク、グリム退出して」
「ウィ」
「あぁ〜!ルーク!痛いんだゾ! 」
あんなに騒がしかった部屋は、私とヴィルさんだけになった。
『ヴィルさん…えっと…』
「それとは違うアタシの呼び名があるでしょ」
一瞬、よく分からなかったが、少し経って理解した。
裏で、ヴィルさんのファンとしてマジカメをやっている。
その時にヴィルさんのことは、 ヴィル姐様と呼んでいるのだ。
『ヴィル、姐様』
本人の前で言うのは、少し恥ずかしい。
「そうよ、いい子ね」
そう言われて、何故か撫でられる。
『ヴィル姐様!?何してっ』
「何って…撫でてるの」
『言われなくても分かりますけど!』
突然すぎる。
あんなにも塩対応だったのに。
忘れ去られたと思ったのに。
「…意識を失っているって聞いて…どれだけ心配したか……ほんと、ごめんなさい」
こんな彼見たことがなかった。
ずっと、完璧で美しい憧れの先輩だと思っていたから。
『…大丈夫ですよ今は、元気で、っゴホッケホッ』
「アンタ安静にしてなさい!っ、まだ毒が回っているかしら」
大丈夫なのに、咳き込んだだけで心配される。
あぁ、私って幸せ者だな。
こんな美しい彼に看病されて。勘違いだけど、愛されているように思える。
「…ごめんなさい、失礼するわよ」
そう言って、唇にキスをした。
あまりにも突然の展開に、驚く。
だが、これは序盤にも過ぎなかった。
なんと、私の口内に彼の厚い舌を入れてきたのだ。
『え、ちょっ…んむ…ぁ』
「はぁっ、っふ…」
蕩けそうなほど、丁寧なディープキス。
ふと、瞳を開けて目に映った彼は、美しいの領域を超えていた。
「…これで、少しは楽になれるかしら…」
別の意味で、楽になれそうだが、黙っておくことにした。
『ふぇ…ゔぃる、さん…?』
「大丈夫?アタシに出来ることがあれば何でも言ってちょうだい」
どうしてか、私の目にはあの時のヴィルさんが映っていた。
微笑みが優しく、甘い毒を含んだ薬。
ずっと前から、私の体をいい意味で蝕んでいたのかもしれない。
『あ、の…なでなで…いや、やっぱりなんでもっ』
ぽすっと私の頭に暖かい何かがおかれた。
それは左右にゆっくりと優しく動かし、ときどき、毛先をすりすりと触っていた。
「アンタの髪綺麗ね…どんなケアしてるのかしら?」
優しい…いや、甘く、どろどろの声が私の耳と脳を癒す。
『ヴィルさん、そのっ…こんなこと言っちゃ、ダメだと思いますが…』
「いいわよ。言ってちょうだい」
私だって、言ってはいけないのは分かっている。
分かっているけれど…。伝えないと、一生悩むことになるかもしれない。
たとえ…その関係に深い亀裂が入ったとしても。
『だ、だいすきっです…ヴィル姐様大好き』
目を開き、映ったのは、見た事のない彼。
少し照れている貴方だった。
「っ、ばか…なんで今言うのよ」
『チャンスなくなっちゃうかなって』
「そんなのまた作ればいいじゃない!この小ジャガがっ!」
ペシッと優しく、頬を叩かれる。
その痛みも、今は心地いい。
『それで、お返事は?』
少し、ニヤッと微笑んでしまった。
だって、先程の表情で分かってしまったから。
「はいはい、分かったわよ!」
そう言うと、私の手を優しく握って
「…アタシも好き。監督生」
ただそれだけ言った。
それだけでも…嬉しかった。
あれから結構経ったある日。
相変わらず昼間の私は、読書をしている。
けれど、その隣に貴方がいる。
そして、その隣にニコニコ微笑んでいるルークさんがいる。
『ルークさん。もしかして…この本が気になるんですか?』
「ウィ!読ませてくれないかな?」
「おバカ。アンタそれ、昨日読み終わったでしょ」
昼間はずっとこの調子。
最近は、ルークさんとも仲良くなってすぐ色々喋ってしまう。
ヴィル姐様が嫉妬しちゃうから程々にしたいんだけど…。
…まぁ、とにかく、色々ハッピーエンドに終わったのは確かだ。
……この物語も来年続編が発表される。
それまで、ゆっくりヴィル姐様とこの学園生活を楽しみたい。そう思って、今日もポムフィオーレ寮に行くのだ。