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ライラ からぴち・シクフォニ♡
20
「……ごめん」
「謝んないでよ。今の、めっちゃ傷ついた」
あー……。俺が悪かったわけじゃなかったのに、結局俺のせいで拗ねさせてるじゃん。でも「気楽にいこうよ」なんて言ってたのはりゅうせいの方だろ? 難しいわ。りゅうせい、女の子並みに難しいわ。
「そんな顔しないで。怒ってるわけじゃないし」
「でも、ごめん」
「……ともやはどう思ってる? 俺のこと」
まっすぐ俺を見てくる。そんな澄んだ目で見つめるなって。そんなもん、答えなんて決まってるだろ。
「……あの時、俺が反応しなかったの、りゅうせいからは空っぽに見えたかもしれない。けど、ちゃんと中身は詰まってる。いっぱい好きだって気持ちが、ここに詰まってんだよ」
心臓をとん、と叩いて真っ直ぐに伝える。
あ、ヤバイ。ちょっとカッコつけすぎたかも。俺らしくなくて、急にめちゃくちゃ恥ずかしくなってくる。
「なに、その熱い告白」
りゅうせいが「ぷはっ」と思わず吹き出した。
ほんと、マジでカッコ悪いわ、俺。言い訳と告白をセットにした挙句カッコつけてんのなんなんだよ。
顔中が熱い。恥ずかしい。あーもう、今すぐ帰りたい。こんな憂鬱な放課後ったらないわ。
「……でも、それが前にともやが言ってた、心が熱くなるって事なんでしょ?俺の事ほんとに好きって事なんでしょ?」
「りゅせ……」
「……ねぇ、俺のどこが好きなの?」
ふわっと抱きしめられ、耳元で囁かれる。そんなもん、初めっから決まってる。
「……顔」
「……だけ?」
「……最近は、一緒にいると楽しいとこ。いつも笑ってるとこ。笑うと目がなくなるとこ。ほんとはめっちゃ優しいとこ。めっちゃビビりなとこ。身体が綺麗なとこ。ストイックなのにそれを見せないとこ。あとは……」
「なんなの。めっちゃ俺のこと好きじゃん」
「……うん、今気づいた。俺、ずっとりゅせのこと、めっちゃ好きだったわ」
「しかも俺も、ともやの好きなところ、ほとんど一緒なんだけど」
似たもの同士の俺ら。初めから惹かれ合わないはずなんてなかったんだ。
「……あと、全部漏れなく可愛いところが、だぁいすき!」
「えっ!? なに、急に甘いじゃん!」
俺を見ながらニヤニヤと嬉しそうにするその顔を引き寄せ、キスをする。何度しても物足りない。ヤバいな、このままここで押し倒してしまいそうだ。
「……ねぇ、これ以上はダメだよ。多分だけど、誰か見てる」
「えっ!?」
背中をトントンと、りゅうせいが叩く。
どこからかクスクスと忍び笑いが聞こえてきて、振り向くのが死ぬほど怖いんですけど。
「……何人いるかだけ、教えてくれる?」
「……2か3かな。デカいから一人、背中が半分隠れてないし。あと教壇の中に誰か入ってると思う。まぁ、確実にいつきはいるよね」
「……ねぇ、趣味悪くない?」
「え? 俺ら、やり返しただけだけど」
振り返ると、教壇からひょっこり顔を出して笑っているのはいっちゃん。
……背中がはみ出ていたのは、やっぱりいつきくんだった。
「は? 俺、覗きの趣味なんてないけど」
いっちゃんの言葉に、俺はぽかんと口を開けた。よく見れば二人の目線は、俺を通り越して明らかにりゅうせいに向けられている。
「ふふっ。でも、あれはしゅうとに誘われたんだよ?」
「こら、りゅせ! 人のせいにしたらダメじゃん。悪いことしたら自分に返ってくるんだからな? もう二度とやっちゃダメだぞ、わかったか!」
「やだ、ともやお父さんみたい。こわい~」
「だめじゃん、ともや。だぁいすき、なりゅせたんにそんなこと言っちゃあ」
「……そうだよ。だぁいすき、なりゅせたんのことは、全肯定してあげないと」
なんなんだ、この空間。覗きという軽犯罪を犯したのはおまえらだろうが。なんで俺がおちょくられながら責められてるんだ。
「……ごめん。でもさ、二人とも俺の誇張モノマネするのやめて。恥ずいから」
「え、俺もよく言うよ? だぁいすきないつきたん、って」
「……うん。よーく言ってるね」
二人でニヤニヤ顔を見合わせてるけど、いつきくん、いっちゃんの冗談に本気で照れるのやめてほしい。絶対嘘だ。絶対言ってない。俺の話し方のエッセンスを悪意を持って抽出しすぎだろ。
「あれ? しゅうと、絶対いると思ったのに」
俺いじりを見ているのに飽きたりゅうせいが、二人の方へ近づいて教壇の中を覗き込んでいる。いくらなんでも、いつきくんといっちゃんのコンビに加えてしゅうとまでそこに入るとか、テトリスじゃないんだから。
「……最近しゅうと、すぐ帰っちゃうんだよ。彼女でもできたのかな」
「え、いつきくんフラれたの?」
「……おい、りゅうせい。なんで俺が二股してる前提なの?」
「え、そうなの?」
「いっちゃん!!なわけないでしょ?! 俺、いっちゃんだけだよ!!」
やめてくれ。いっちゃんの一言で冷静さを失う、カッコ悪いいつきくんにはいまだに慣れない。
「だってしゅうと、いつきくんしか眼中になかったじゃん」
「てか、なんでしゅうとってあんなにいつきくんのこと好きだったの?」
三年になってからずっと疑問だった。一年の頃、あいつはいつも後ろの席で一人でいて、その頃からすでに垢抜けてたし、幼稚な俺らとつるむのが嫌なのかな、なんて勝手に思ってたけど。
「……入学してすぐの頃さ、初めて話しかけたやつに関西弁を笑われたらしいんだ。それで話すのが嫌になって、ずっと一人でいたんだって」
「で、俺っちといつきくんが二年の時に同じクラスになって、話しかけたの。サッカーチームのキーホルダーがついてたからさ」
「ほんと、りゅせのコミュニケーション能力はすごいと思う」
「俺っちもともやのこと、好きだよぉ」
「好きとか言ってないじゃん!」
二人でデレデレし始めた俺たちを見て、「……きもちわる」という小さな呟きが聞こえた。頼むから今のはいっちゃんであってくれ。もしいつきくんの声だとしたら、俺は本気でへこむから。
「……たぶん俺、その前にもちょっとだけ話しかけてるんだよ。何だったか、内容はもう忘れちゃったけど」
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