いない。
朱虎がいない。
さっきまで居たはずなのに、どこにもいない。
こわばった指を何とか引きはがして銃を投げ捨てた。立ち上がろうとしても足に力が入らなくて、あたしは這いずるようにして手すりへ近づいた。
暗い海と波の音があたしの体ごと引きずり込んでいくみたいだった。
震える指で手すりに縋りつく。じわりと涙がにじんで、見下ろす海がぼやけた。
「ウソでしょ……やだ、やだよ……」
船が大きく震えた。
サンドラはもう逃げられただろうか。
あたしも行かないと。
でも、もう動く気力がない。
空っぽになった頭の中で繰り返し繰り返し、あたしがあたしを責め立てる声が響いた。
なんであの時撃たなかったんだ。
あたしが引き金を引きさえしたら、朱虎は助かっ*****************
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