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「おーい、早く下りてこーい」

兄が弟たちを起こす、何気ない朝の日常。

優吾が階段の下から声を掛けると、少しして慎太郎とジェシー、北斗が下りてきた。

大我は、この家に来てから優吾の部屋で寝ている。しかし毎朝決まって7時に起きる。その前に起きて朝食の支度をする優吾は、規律正しいなと感心していた。

樹は当直でそのまま勤務だ。5人で食卓につき、朝食をとる。

と、慎太郎がお皿に載っていたトマトを箸でつまんだまま動かない大我に気がつく。

「ん? どうした?」

大我は半分にカットされたトマトをゆっくり口に運び、顔をほころばせた。

みんなが初めて目にした、嬉しそうな笑顔だった。

「あっ、大我くんが笑った!」

「トマト好きなのかな」

「樹に言わなきゃ」

「それ、おいしい?」

北斗が訊く。

「…おいしい」

その言葉にみんなも笑顔をこぼした。

最初は瞳に生気がなく、表情も乏しかった大我がだんだんと心を開いていくのをみんなは喜んだ。



ジェシーが英会話スクールへ、北斗がレストランへ出勤するのを優吾は見送る。そして慎太郎も大学へ出て行った。

「……ねえ大我くん、ここに来る前はどこにいたの?」

優吾がソファーに座る大我に訊く。テレビをつけているが、興味は示していない。

「…覚えてない」

そっか、と息をつく。

「樹と会ったとき、公園に一人でいたんでしょ? 寂しくなかった?」

優吾を見やり、

「…暗かった。誰もいないから…もう終わりかもって…」

意外にもすらすらと話す大我に驚く。

「そういうのをね、怖いとか、寂しいっていうんだよ」

優吾は大我の頭を優しくなでた。

「今は大丈夫だからな」

彼がどうやって生きてきたかはわからない。どんな経験をして、どんな二十数年の人生を歩んできたかは誰も知らない。

でも、今はこうしてみんなと一緒にいるという暖かさを知ってほしかった。

「じゃあ、俺仕事行くな。寂しくなったら電話するんだよ」

優吾は何かあったときのために、お下がりのスマホを渡していた。その存在自体もわからなかった大我に電話の仕方を教えると、ちゃんと掛けることができた。

病院で処方してもらったメガネも新しくかけたから、大丈夫だろう。

「いってらっしゃい」

弟たちが言っているのを見て覚えただろう言葉に、優吾は嬉しくなった。

まるでかわいい家族がもう一人増えたように思えた。



優吾は仕事の合間に、資料室へ向かった。最近の新聞記事からだいぶ昔のものまで保管されている。

隅に置いてあるパソコンの前に座り、立ち上げた。ワードを入力すると、それに関連する記事が出てくる。

検索エンジンに『アルビノ』と入れ、エンターキーを押す。読み込み中のサークルが鼓動を速くさせる。

いや、樹も言っていたように期待はほとんどしていない。今やネットのほうが情報量は多いに決まっている。

やがて出てきたのは、アルビノのモデルを特集した記事だった。

彼女の容姿は大我と似ている。白に近い金髪に、日本人離れした肌色。その人はグレーの瞳だ。

大我は顔立ちもいいからモデルもできるかもな、なんて思う。

しかしヒットしたのはそれくらいだった。

次にネットで調べてみるが、出てくるニュースの舞台はアフリカ。「アルビノ狩り」という何とも悲惨なものだった。

「金目当てで捕らえるなんて…。みんな同じ人なのに」

これ以上大我に悲しい思いはさせたくない。何としてでも守り抜こうと決めた。


続く

記憶喪失の妖精、拾いました。

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