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#あべさく
めかぶぷりん
8,223
29
雪月❄️
363
83
目が覚めた時、目には特に何も映ってなくて、よく分からなくて瞬きをしてから、自分の体に腕が回されているのが分かった。
少し上の方を見てみると、それが目黒だという事に気付く。
💚「めめ……?」
どうして、ベッドで目黒と一緒に眠っているのだろうか。
糸に囚われて、深澤達が来て、その辺りで記憶が途絶えている。きっとそのまま気絶してしまったのだろう。結構、血が流れていたからそのせいだと思う。
実際、まだ頭がクラクラする。
🖤「……ん……阿部ちゃん、起きた?」
💚「あ、ごめん、起こしちゃった?」
🖤「いや、大丈、夫……ぅあっ! ごめん!」
慌ててベッドから飛び起きて、フラついたせいで盛大に床に転んだ目黒に。
💚「めめっ!?」
阿部も慌てて体を起こして、すぐに力が入らなくなってベッドに倒れこんだ。
ドシンと大きな音がしたからか、ラウールが入って来た。
🤍「ちょっと、大丈夫!? 凄い音したけど……二人とも、何やってんの?」
💚🖤「な、なんでもない……」
🤍「起きたんならおいでよ。舘さんと康二くんが、二人の為に貧血回復用のご飯と飲み物用意してくれてるよ!」
💚「ありがと。今、行くね」
🖤「あ、ラウール待って。岩本くんか舘さん呼んで。多分、阿部ちゃん歩けない」
🤍「あ、そっか。呼んでくるね!」
💚「えっ、わざわざいいよ!」
🤍「阿部ちゃん、這ってくるつもり? ダメダメ。無理したらまた倒れちゃうよ。ちゃんと待ってて」
そう言って出て行ったラウールを見送って目黒が、はあーっとため息をついた。
💚「めめ、平気?」
🖤「大丈夫。ちょっと、ビックリした……」
💚「俺もだよ。めめ、急に落ちるんだもん」
🖤「あ、そっち」
💚「え?」
🖤「や、なんでもない」
そうして話していると、岩本が中に入って来た。
💛「阿部、歩けないって?」
💚「いや多分、大丈夫だと思う、けど」
🖤「今、起き上がれなかったでしょ。無理する場面じゃないよ」
💛「だな。阿部、怒んなよ」
💚「え?」
近づいて来ると岩本は阿部の体を抱き上げる。
💛「よっ、と」
💚「わ、え、照!」
💛「だから怒んなって。しょうがないだろ。起き上がれないくらい力ねえのに、おんぶで掴んでられねえじゃん」
確かに力は全く入らないから、反論の余地がなくてぷくーっと頬を膨らませる。
🖤「かわいい」
💛「漏れてるって。ってか、めめは阿部のこと連れて来れたんじゃねえの?」
🖤「いや、まあ、それは、はい……」
💛「あ、なるほど。お前も不器用だな」
💚「もういいよぉ、早く行こうよぉ」
💛「あーはいはい」
🖤「岩本くん、お兄ちゃんすぎる」
💚「同い年だからっ」
まだ言いたいことがありそうな阿部を放っておいて、応接間に行くとソファに阿部を下ろす。
その隣に目黒が座り、目の前のテーブルには料理・お菓子・飲み物が所狭しと置かれていた。
💚「すごぉい」
料理が、マグロのカルパッチョ、あさりの酒蒸し、牛肉とピーマンのオイスターソース炒め、サンマのかば焼きとひじきの炊き込みご飯。
お菓子が、ごまの黒糖蒸しパン、ドライフルーツのチョコクランチ。
飲み物が、ホットマシュマロシナモンココア。
💚「え、これ全部、舘様が?」
🧡「俺も作ったで!」
🩷「俺も手伝ったー!」
💛「まあ、できるところは」
🤍「阿部ちゃんとめめの為に頑張りました!」
💚「えー、うれしっ」
❤️「適当に盛ってくね」
💚「ありがと。みんなは食べないの?」
🩷「俺らはもう食べたよ。今ね、もう20時」
💚「うわ、めっちゃ寝てた!」
💙「それだけ消耗してたってことだろ」
🖤「あれ、康二は貧血平気なの?」
🧡「俺は全然。見た目えぐかっただけで、そんなに抜かれてへんよ」
💙「あれはビビったね。あんないっぺんに血が出んの初めて見た」
💚「そうなんだ……」
❤️「ちょっとちょっと。話し込んでたら二人とも食べられないでしょ。話したいことはたくさんあるだろうけど、後にして」
💚「じゃあ……いただきます」
🖤「いただきます」
目の前に、宮舘がよそってくれた料理たちが並び、あさりの酒蒸しを口に入れた瞬間、阿部の目が大きく見開かれた。
💚「うまぁ! 舘様すごい! めっちゃ美味い!」
🖤「うんまっ」
❤️「良かった。どれも残して大丈夫だから、食べたいもの食べてね」
阿部はビュッフェスタイルで少しずついろいろ食べていって、食べる度に美味しいと満面の笑みを浮かべている。
目黒は対照的にガツガツと、食べっぷりが男らしい。
食べているのを見ながら、向井は「それ俺が作った!」と嬉しそうに飛び跳ね、佐久間が「それ俺が皮むいた!」と元気よく手を挙げる。他の者達は微笑ましそうに見ていて、ほんわかとした空気が流れていた。
🤍「僕、またお菓子食べようかなー。食べてるの見たらお腹すいてきちゃった♡」
💛「さっきもめっちゃ食べてただろ」
🤍「えー、でも僕まだ成長期だもん。ってか、そう言う岩本くんだってご飯おかわりしようとしてるじゃん」
💛「トレーニングしたからお腹空いたの」
💙「え、これ飲んでいい? めっちゃ美味そう」
🧡「ちゃーんと、みんなの分もあるで」
🩷「よっしゃー!」
💜「お前らさ、これ阿部ちゃん達のだって分かってる?」
💚「いいよいいよ。みんなで食べた方が楽しいし。ね、めめ」
🖤「ですね。自分たちだけしか食べないのって苦手なんで」
結局、みんなで食べることになってワイワイと楽しい食卓になった。
その日は皆が帰宅する、はずだったのだけれど。
💛「阿部はダメ」
💚「えっ、なんで?」
💛「歩けないのにどうやって帰るわけ? お姫様抱っこしたまま行く?」
💚「絶対やだ!」
💛「でしょ。入院も考えたけど、今、阿部一人にするのも怖いし。だからここで静養。一週間くらいは外出禁止」
💚「そんなぁ」
💜「じゃあ阿部ちゃん、ちょっと立ってみて」
言われ、ソファに両手を置いてググっと押すのだが、プルプルとするだけで全くおしりが上がらない。
🖤「あ、阿部ちゃん、無理しないで」
💜「ほら、無理でしょ。それで家まで帰れるならなんも言わないよ」
💚「……っはぁー、はぁー……」
💙「立ち上がれもしないのに息切れとか、無理すぎるだろ」
💜「文句は受け付けません。ってことで、今日から持ち回りでここに泊まるんだけど、泊まりたい人―――は、みんなだね」
目をキラキラと輝かせながら手を挙げているメンバーに、深澤は笑ってしまった。滅多にできない事務所でのお泊りと、阿部の事が心配でというところだ。
💜「めめは外すよ」
🖤「えっ?!」
💛「いや、お前も静養する側だから」
💜「じゃあ、他みんなでじゃんけんね」
こうして始まったお泊りじゃんけんは何度も開催され、見事勝ち取ったのは。
🤍「やったー! イェーイ!」
ラウールがこれでもかという程に喜んでいる。
🤍「阿部ちゃん、今日は一緒だね! なんか修学旅行みたーい」
💚「めっちゃはしゃいでんね」
🤍「だーって、阿部ちゃんと一緒だもーん!」
ぎゅーっと阿部を後ろから抱きしめるラウールに、阿部がラウールの腕をぽんぽんと優しく撫でている。
その後、阿部は再び岩本に休憩室のベッドまで連れて行ってもらった。
💚「何度もごめんね」
💛「いいって。阿部軽いし、筋トレにもなんねえ」
💚「……」
🩷「阿部ちゃんとラウの荷物、とりあえず棚に置いとくね」
🤍「ありがとう、佐久間くん!」
🩷「足りないものあったら教えてー。またすぐ取ってくるから」
🤍「ウーバーより便利だねー」
🩷「にゃははっ! いつでも呼んでねー!」
💚「佐久間、ありがと!」
🩷「ほーい。ゆっくり休んでねー」
バイバーイと手を振って佐久間が出て行き、その後を追うように岩本も出て行き、ラウールと二人きりになる。
ベッドに座らせてもらった阿部の近くの縁に、ラウールも腰かけた。
💚「ラウ、ごめんね。なんか巻き込んじゃって」
🤍「えー? 楽しいからいいの! 阿部ちゃんのおかげでお泊りできるんだから、ラッキーだったよ」
💚「えぇ? うーん、ラウがそう言うならいいのか……」
🤍「それにさ、僕が阿部ちゃんのお世話していいってことでしょ? 今まで、そういうのはふっかさん、岩本くん、舘さん、めめだったからさ、なんか嬉しいんだよ」
💚「お世話って……」
🤍「お世話でしょ? 僕だって、阿部ちゃんの役に立ちたいの。甘やかしたいの。いろいろやってあげたいの!」
💚「ラウは十分、いろいろやってくれてるよ。俺、ラウがいてくれてホントに助かってるんだよ?」
🤍「それはさー、わかってるけどさー。僕が特務調査局に来たのだって、阿部ちゃんの負担を減らす為だもんね」
💚「……ん? ラウ、理由ってちゃんと聞いてないの?」
🤍「え? 聞いたよ。調査できる人が足りてないって」
💚「あー……ふっか、説明省いたな。ちゃんと説明すると、俺の異能ってさ、ネットワーク経由でしか情報を拾えないんだよ。それは知ってるでしょ?」
🤍「それはもちろん」
💚「電子機器に接続したり、電波を発してる媒体を経由したり、SNSや防犯カメラや車載カメラ映像を見る。つまり、情報収集しかできなかったんだよ。それでいつも、解析や分析は外部に頼んでて、調査が止まってた」
🤍「あ、それで僕?」
💚「って聞いたよ。でもそれだけじゃなくて、俺がいなかったり機能しなかったりした時に、指示や推理ができる人もいたらいいねって話になって、それがラウだった。そんな凄い人いる?って思ってたらホントにいたから、ビックリしたんだよ」
🤍「え、なんかめっちゃ嬉しい」
💚「ホントのことだよ。もうずっと、ラウには助けてもらいっぱなしなんだから。それに、話が合うのって、やっぱり嬉しいから。いろんな話を聞くのはもちろん好きだけど、自分が好きなことをずーっと話せるのは、特別だなって思うし。考察とか議論とかも好きだからさ。それを、ラウが同じくらいの温度感でしてくれるの、実は内心でめちゃくちゃ喜んでる」
ふふっと、少し悪戯っぽい顔をする阿部。
すると、ラウールがまた阿部の体を抱きしめてくる。
🤍「もー、阿部ちゃんかわいすぎっ! そんな風に思ってくれてるの、すっごく嬉しい。大好き! もう僕とずーっと一緒にいてください!」
💚「あれ、プロポーズ?」
🤍「それくらい好きなの!」
💚「ラウからの愛はめっちゃ感じてるけど。あれもそうでしょ? 投げチュー」
🤍「そう。好きが高じて。でも、僕にチュー教えたの、阿部ちゃんじゃん」
💚「えっ、何それ」
🤍「憶えてないの? 僕らが入ってちょっと経った頃かな。依頼でさ、ストーカー対策で彼氏のフリしてほしいってやつ。で、何故かシチュエーション考えて脚本作って、それを他の人が演じてどれを採用するかって審査みたいなのやったじゃん」
💚「あー……あったね、そんなの」
🤍「その時にさ、最後に僕にチューって指示したの阿部ちゃんでしょ。まあ、相手はカメラだったわけだけど」
💚「……した。やったわ」
🤍「ほら」
💚「でもそれと、俺への投げチューがどう繋がるの?」
🤍「好きを伝える手段なんだなって思ったの。それにさ、ほっぺにチューとかはやりすぎだけど、投げチューくらいなら、愛を伝える手段にしてもいいかなって思って」
💚「今、さりげなく好きから愛に変わったね」
🤍「お、さすが阿部ちゃん。目ざといね。僕の想いはもう、愛だから! LOVEだから!」
💚「ん、知ってる。重いのも」
🤍「……重い?」
💚「重い。ラウのは、なんか、ドンってくる。おおってなるけど、もちろん、やじゃないよ」
🤍「あ、そういうね。みんな違うの?」
💚「違うよ。康二はまとわりつく感じで、佐久間が絡みつく感じ」
🤍「それ、違うの?」
💚「違うね。体感?」
🤍「んー、でもちょっとわかるかも」
💚「照は見守っててくれるし、舘様はゆったり。翔太はこう、陰から覗いてくる感じで、めめは真っすぐ」
🤍「あー、確かに。ってか、めめからのもしっかり分かってるんだ」
💚「え、さすがに分かるよ。なに、めめまだ隠してるつもりなの?」
🤍「ほとんど漏れてるけどね。あれ? ふっかさんは?」
💚「ふっかはね……空気」
🤍「空気?」
💚「あって当たり前って感じ」
🤍「なるほどねー。あ、ねえ、今日さ、阿部ちゃんと同じベッドで寝ていい? ここ、ベッド一つしかないし」
💚「いいけど」
🤍「やった! めめが阿部ちゃんのこと抱いて寝てるの見て、いいなーって思ってたんだ」
サラッと言われた言葉に、阿部が目をぱちくりさせる。
数秒の間。
💚「なにそれ、いつ?」
🤍「あっ。阿部ちゃん気付いてなかったの!? めめ、ごめーん」
💚「待って、どの時?」
🤍「さっきだよ。警察署から帰って来てすぐ。阿部ちゃん、警察署で気を失ってたでしょ。戻って来てベッドに寝てたんだけど、その時にね」
💚「……ああ。だから起きた時、やたらめめ近かったのか」
🤍「あれ。阿部ちゃん、そんな感じ?」
💚「何が?」
🤍「だって、抱っこされて寝てたんだよ。抱き枕みたいに」
💚「え、それだって今更じゃない? 隣に立ってて、気付いたら腰に腕が回ってることとか、背中に触れてることとか、めっちゃ顔を覗き込まれるのとか、何回もあるけど」
🤍「あー、やってるわ。めめのsecret touch、見たことある」
💚「secret touch。なんか分かる気がする」
🤍「それを阿部ちゃんに言われちゃうと、なんかめめ、可哀想になってくるかも……ってか、そろそろ寝なきゃだね。さっき寝たとはいえ、ちゃんと睡眠とらないと、良くならないよ」
💚「そうだね。俺、このまま休んでるから、ラウは準備してきていいよ」
🤍「わかったー! ちょっとだけ、三階に行ってくるね。あ、阿部ちゃん。何かあったらイヤリングの緊急信号、使ってよ!」
💚「はーい」
部屋から出て行ったラウールを見送って、阿部はベッドに横になる。筋肉がほとんど使えていなくて支えられないので、背中からベッドに倒れ込んだ、が正確だけれど。
💚「……疲れた……」
無理をしていたつもりはなかった。それでも、一人になってベッドに寝転んで出てきた自分の言葉に、阿部は苦笑を浮かべる。
無意識に出てきた言葉は正直だな、と。
仰向けに寝転んで布団をかぶっていると、段々と瞼が落ちてきてうつらうつらとしてくる。重い瞼を開けていられなくて、そのまま抗うことなく目を閉じた。
寝る準備を終えたラウールは休憩室に入って、ベッドで眠っている阿部を見て、そーっと近づいた。
靴を脱いでベッドに潜り込むと、ラウールは阿部の方を向く。
🤍「ホントにお疲れ様だよ、阿部ちゃん……」
言いながら、ラウールは阿部の体に腕を回す。
🤍「相変わらず、細いなぁ。こんなに細かったら、心配になっちゃうよ……でも、安心してね。僕も阿部ちゃんのことを守れるくらい、強くなるから。だから、ね。僕のこと、もっともっと頼って。阿部ちゃんにはずっと笑顔でいてほしいから。僕、そのためにこんなに大きくなったんだよ……は、さすがに嘘だけど。でも、今度は僕が守るんだ」
ぎゅっと、抱きしめる。
んん、と阿部から声が漏れた。それでも、ラウールは離さない。頭に回した手を、自分の方にもう少しだけ引き寄せる。
そして、静かに目を閉じた。
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