女の人に手当をしてもらって、僕たちについての話を聞かれた
「見るからに何か……事情がありそうだけれど……話せそう?」
女の人はこちらの様子を伺うようにして聞いてくる
ルーチェは僕に判断を任せるようで特に何も言ってこない
(……そうだなぁ……)
今までの事を話す、にしても
「人を殺しました」
……なんて言ってしまえば良くて家を追い出されるか、普通は警察に通報されて終わりだろう
だから僕はこう話した
『両親に虐待を受けて育ってきた
だから今日、命からがら抜け出してきた』と
そう告げると女の人は酷く目を見開いた
そして悲しそうに顔を歪め僕たちを抱きしめた
2人で驚いて顔を上げると女の人は涙を流していて、その涙が僕の顔に落ちてくる
「今まで……よく頑張ったね……
よく、ここまで……逃げてこられたね……」
何が悲しいのか女の人は僕たちを抱きしめながら静かに涙を流した
僕たちは訳も分からずお互いに視線をやる
「………ねぇ、フォンセ、ルーチェ」
「貴方たちさえ良ければ…今日からここで一緒に暮らさない?」
女の人は涙を流しながらそう提案してくる
「これからは私が貴方たちを育てるわ
貴方たちに酷いことはしないって、約束する」
「絶対に貴方たちを傷つけない、守るから…
私と一緒に、暮らしましょう」
(………どうしよう)
まさか急にそんな事を言われるとは思っていなかったので、僕はその時少し焦っていた
この女の人を信用出来る材料がない
いつ豹変するかも分からない
今はこんな事を言っているけど、内側では全然違う事を考えているとしたら?
今度こそこちらが殺されてしまうかもしれない
そう考えると安易に返事は出来なかった
しかし、そこで突然ルーチェが声を出した
「………うん」
「わたしも……いっしょに、くらしたい……」
その発言に思わず僕は目を見開いてルーチェを見る
まさかルーチェが進んで提案を呑むとは思っていなかったからだ
だっていつも、僕さえいればいいと、言っていたのに
そんな僕の感情を他所に女の人は心底嬉しそうに微笑んでより抱きしめる力を強める
「……ありがとう……本当に……」
「これからは、私が2人の事を守るからね」
そんな女の人の声はもはや僕の耳には入ってこない
ルーチェの発言がずっと頭の中で響いている
その後女の人が一言、二言呟いて僕たちの元から離れた
そうするとルーチェはにこにこと微笑みながら僕の元に近づいてきてこう言った
「やったね、これであんぜんなばしょをゲットできたよ」
僕は再び驚きの目でルーチェを見つめる
そんな様子を見てルーチェはおかしそうに笑っている
「やだなぁ、わたしがほんとうにフォンセいがいのにんげんをこころからしんようするとおもう?」
「まずまだしょたいめんでおたがいのことぜんぜんしらないのにしんらいなんてできるわけないじゃん」
そう話す姿は屈託のない純粋な笑顔をした普通の子供のように見えた
でも、僕たちは普通の子供じゃない
日常的に命を脅かされる環境にいて、ずっと死なないためだけに生きてきた
そんな僕たちの精神は普通の子供より成長し過ぎた
そんな僕たちに、普通の子供を相手するように接されても絆される訳がないのだ
その言葉を聞いて僕も真似をするようににっこりと笑い
「そうだね、やっぱりいっしょのかんがえだった」
「ふふ、あたりまえだよ
わたしたちはいつもいっしょなんだから」
2人で身を寄せあってくすくすと笑う
やっぱり僕は
(どのかんきょうだろうと、きみがいればいきていけるよ、ルーチェ)
コメント
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ほわあああああ尊い