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そこから1週間は怒涛の毎日だった
僕たちの部屋の用意、今までとまったく違う生活、新しい環境への適応
今まで変わり映えのない環境にいたせいか、ここ1週間目まぐるしく変わっていったせいで少し疲れてしまった
でも、ここ1週間で変わった事がある
思ったより僕もルーチェもあの女性に懐いているという事だ
初めは女の人の行動に疑問しかなかった
何故この人はこんなに僕たちに構うのだろう、と
だけどあの人は優しい笑みを浮かべて僕たちを抱きしめてくれた、頭を撫でてくれた
その手が、温もりが思ったよりも心地よくて、当初の考えとは打って変わって僕たちもその優しさに応えたいと思うようになった
僕たちは見よう見まねで家事を手伝うようになった
部屋の掃除、お皿洗い、食事作り、マッサージ
出来るだけ女の人の手伝いをした
手伝いをすれば、あの手で褒めてもらえる
僕たちを痛めつけたりしない優しい手で
「いつも手伝ってくれてありがとう
2人は優しいわね」
僕たちを撫でてくれるその感覚は
僕たちの心を、いとも簡単に溶かしてしまった
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「ねぇねぇフォンセ!
わたしね、あのこみたの!」
「あのこ?だれ?」
「さいしょにみかけたあのねこちゃん!
さいきんこのいえのちかくでみかけたの!」
「きっとあのねこちゃんだよ!
まちがいないよ!」
「へー、あのねこか……」
あの猫は、何かおかしい
まるで人間の意識があるみたいに、僕らをこの家まで案内した
人間が猫に化ける事なんて出来ない
ただの賢い猫だとも考えた事はあるけれど
あの目を離せない感覚
ただの物珍しさからくる感覚じゃなかった、と今なら思う
あの猫は、何者かが化けた姿で特別な力が扱えるのかな……
そんな事を考えていると窓から何か物音がした
「あ、ことりさん!」
ルーチェが嬉しそうに笑いながら窓に近寄る
どこにでも見かけるような普通の鳥だった
なのに、何でだろう
この鳥にも、あの猫のような雰囲気を感じる
何か危険だ
そう思ってルーチェに声をかけようとした瞬間
「2人とも~ご飯が出来たわよ!
今日のご飯はクリームシチューです!」
「クリームシチューってなーに?」
「ふふ、食べてみたら分かるわ!
ほら、フォンセもおいで」
(……そうだ、べつにきにしなくていいや)
僕には、今の生活さえあれば十分なんだから
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その後は3人でご飯を食べて、お風呂に入って、寝る時間になった
「それじゃあ2人とも、おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみなさい!」
いつも通り2人揃ってベッドに横たわり眠りにつく
ルーチェはすぐに寝たみたいだけど、僕は中々寝付けなかった
(………のど……かわいた……)
水でも飲もうと思って、部屋のドアに手をかけた
(………あれ?)
何か、声が聞こえる
どうやらあの人が誰かと話しているようだ
人の気配は僕たち以外に感じないから、おそらく遠隔にいる人と話せる道具でもあるのだろう
「……そう、そうなのよ」
「あの子たちが来てから、毎日が楽しくてしょうがないの」
(………あのこたちって、ぼくたちのことかな)
僕たちの存在が、あの人にとって良い方向に作用するのならそれ程嬉しい事はなかった
「……私は、子供が産めないから
あの子たちが来てくれて、本当に嬉しいの」
(………あかちゃん、うめないんだ)
「……うん、うん
来週ね」
「分かった、また電話するから」
そう言うとあの人は電話?とやらをやめた
(だれとはなしてたんだろ?)
親か兄弟だろうか
来週と言っていたしまた話すのだろうか
「……………」
(………ねむたくなってきた………)
「………ねよ………」
そうして僕はそのままベッドに戻って、眠りに落ちてしまった