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※注意:涼ちゃん、若井が死にます。死ネタが苦手な方は回れ右
その日はいつもと何も変わったことがない日だった。
朝からミセスの仕事でバタバタ。
朝はTV番組の収録。
楽屋でのんびりする間もなく、用意された衣装に着替えていく。
スタッフ)「ミセスさんお願いしまーす。」
そういわれ、「はーい。」返事をし、急いで楽屋の廊下を走っていく。
司会者)「いや~、休む暇ないんじゃないの~?」
そう聞かれても、笑顔で
「休日って何ですか、って感じですw」そういうと、番組のレギュラータレントたちが笑ってくれる。
収録が終わると、いつものようにほかの仕事も淡々と済ませていく。
やっと3人での仕事をすべて終えて、チーフに車で家まで送っていってもらうことになった。
「いや〜、たまには休日もほしーよねー笑」
そんなことを言うと、涼ちゃんと若井が、
涼)「だねー、」
若)「恋しくなるよねー」と返す。
「〜ーーー?」
「ーーーー笑」
「ーーー!!」
他愛ない話は僕が降りるまで続いた。
「じゃあまた明日ね。」
涼ちゃんと若井に向かって手を振った。
「うん!元貴最近忙しかったからゆっくり休んでね!」涼ちゃんがいつものふにゃっとした笑顔で手を振り返してくれる。
「明日は元貴の家とまろっかな~、まぁいーや。おやすみ〜」若井はそう言って微笑を浮かべながら手を振る。
「なんだよそれ笑」
そう言って、振り返り、マンションの入口へと向かった。
この後何が起こるかなんて知る由もなく。
バンッ
鈍い音がした。
まさかと思い振り向くと、上野高速道路から転落してきたであろうトラックが僕がさっきまで乗っていた車におもいっきりぶつかっている。
チーフは見えなかったが、若井が頭から血を流しているのが見える。
「わ….かい?涼ちゃん!若井!」
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ。
信じたくない。
車に駆け寄るとさらに信じられない光景が広がっていた。エンジンが燃料となってか、車は少しずつ燃え始めていた。
どうして?さっきまであんな楽しくしゃべってたじゃん。笑ってたじゃん。
若井は頭から血が流れているだけではなく、足が座席シートに挟まって血がにじんでいた。
多分この状態で助けるのは困難だ。
「若井、わかい、…。」
そう言って肩をゆすってみる。けど全く反応しない、気を失っているようだ。
「…涼ちゃん?」恐る恐る聞いてみると
「元貴!元貴聞こえる?!」涼ちゃんはなんと意識があった。後部座席にいる涼ちゃんはダメージが少なかったのかもしれない。
「涼ちゃん!、涼ちゃん出れる?!」涼ちゃんが助かるかもしれない。少しだけ希望がみえてきた。
「…残念ながらそれは難しそう。」、希望が思いっきり打ち砕かれた。
「若井がどうなってるかはわからないけど、僕、足の感覚がないんだ。」まさか、そんなはずない、
ありえない、僕は、後部座席のドアの前に行ってドアを必死に引っ張るが一向に開かない。
「いっ、いや、僕がおんぶすればなんとか、」
「元貴」
「いやだ、涼ちゃん、若井置いてかないで、」
「元貴!」
びくっとする。
涼ちゃんは片手しか動かないのか左手でたどたどしく僕の手を握る。
「元貴、聞いて、若井も僕も多分助からない。」
改めて思い知らさられる。
若井も涼ちゃんもチーフも助からない。
なら
「僕も一緒に、」
「元貴は来ちゃだめだよ。」
なんで、どうして。
どうして二人がこんな目に合わなきゃいけないの?
なんで俺を一人にするの?
「元貴は、ハァッ、も…と、…く…んの、ハァッ、人に、…」
「涼ちゃん、もうしゃべらなくていいから!」
なんとか車のドアを開けようとするがびくともしない。
「元貴、…ッハァッハァッ」涼ちゃんが僕の胸へ手を置く。
「…なぁに、涼ちゃん…。」
そういった瞬間だった。
ドンッ
全力で突き飛ばされた。
聞こえなかったけど、涼ちゃんの口の動きで、「ごめんね。」と言っているのがわかった。
その瞬間、車の中がバンッと爆発して、火がさらに燃え広がった。
「ぅ、うぁぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ」
何度も車に駆け寄った。
何度も何度も。
でも周りの人に必死に抑えられて、
いくら手を伸ばしても、
窓から垂れている、力尽きた涼ちゃんの手に
血を流して気を失った若井の顔に
触れることはできなかった。
後日、病院で若井と涼ちゃんが亡くなったのを聞かされた。
チーフマネージャーは集中治療室で延命治療を受けているそうだ。
「….若井?、涼ちゃん?」
死体安置所に連れていかれると、顔に白い布をかけられた二人の姿があった。
白い布を取ってもらうと、二人の顔はメイクで綺麗にされていた。
あぁ、なんで、どうして。
少し肩を揺すったら、今にも「おはよう」って起きて笑ってくれそうなのに。
目の前で亡くなった二人のことをいまだに信じられない。
「涼ちゃん、若井、」そう呟いて
ずっとそこで泣いた。
なんで僕を一人にしたの。なぜ僕も連れて行かなかったの。
こんなの許せない…。
きっとこの時の涙は、二人が亡くなってしまったことを僕が受け入れるために必要な涙だった。