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__其れは、何時もの口論で起こった事件。
「だから!君のその無責任で自己中心的な作戦じゃ何も上手くいかないのだよこの単細胞!!」
「手前のチンケで嫌味ったらしい作戦よか十分マシだこの人間失格野郎がァ!!」
まさに小学生の喧嘩と言えよう。
「そもそも!君は知能が低すぎる!!何?身長と比例して知能も低くなっちゃったんでちゅか〜??」
「あ゛ぁん?手前……もういっぺん言ってみやがれ!!」
「だから君はダメなんだよ!身長だけでなく脳ミソも小さ過ぎるね!」
「てんめぇぇぇぇぇ!!!」
「何さ!事実だろ?」
今回の口論も私の勝ちが確定したのだから、私は更にトドメを刺してやったのだ。
「あ〜ぁ、君みたいな莫迦が”相棒”だなんて。僕も運が無いなぁ。」
「ッ……!」
そう云った途端、僕は後悔した。
だって、あんなに傷ついた中也の顔、初めて見たんだもの。
「あ、いや、その…」
「……悪かったな」
「は……?」
「手前の気分を害したなら、謝る。」
「……え?」
そう、顔を合わせることも無く
中也は部屋から出て言った。
「……は」
拙い、絶対やらかした。
僕、最低過ぎない?ちょっと、本当に。
え〜…何であんな事云っちゃったんだろう……。
「……あ〜、もう!」
後悔先に立たず。
もう後戻りなんて出来ないんだから、仕方ないよね……。
僕はその日一日頭を抱えていたのだった。
「はぁ……」
あの事件から数日経ったけど、中也とは未だ一言も言葉を交わしていない。
いや、だってさ?僕悪くないし。でも、あんな事云っちゃった手前、謝るに謝れないし……。
「なんじゃ、溜息ばかりつきおって」
後ろから不意に、聞きなれた声がした。
「姐さん……」
そう、其処には紅葉の姐さんがいた。
「何か、悩み事かえ?」
「……まぁ」
「話してみよ」
「いや……その…」
不味い。姐さんは中也をすごく愛でている。
そんな中也を僕が傷つけたと知ったら……。
「……真逆じゃが、わっちの中也を泣かせたかの」
「エッ、」
姐さん鋭すぎじゃない!?
「なんじゃ、図星かえ?」
「……ハイ」
姐さんに嘘はつけない。僕は素直に認めることにした。
「何故泣かせた?」
「……その……僕、酷い事云っちゃって……」
「ほう、そうかえ。」
駄目だ、殺られる。
「ん?なんじゃ、殺られるとか思うておるのか?」
「えっ」
なんで分かったの。
「わっちは別に怒っておらぬよ。ただ、理由を知りたいだけじゃ」
「……はい」
僕は姐さんに事のあらましを全て話した。
「ふむ……成る程な」
姐さんは顎に手を当てて何か考えているようだ。
「先ずは、謝るべきじゃの。」
「はい……」
「謝れば、中也は許してくれるじゃろ。まぁ、中也が怒っているかどうかは知らぬが」
「……多分、怒ると思います……」
「うむ、そうじゃな。だが謝る意思はあるのじゃろ?」
「……はい」
僕は姐さんに誠意を見せるようにしっかり目を見て返事をした。
「……よし、ならば行って来い!」
「え……?」
姐さんはそう云うと僕の背中を思い切り押した。
すると次の瞬間には誰かにぶつかった。
「っわ!」
「った、何すんだよ手前!」
え、中也……?!僕は咄嗟に中也に謝ろうとしたが……。
「あ、あの……」
「……チッ」
中也は僕の顔を見るなり舌打ちをして何処かへ行ってしまった。
「あ……」
僕はその場に呆然と立ち尽くした。
そんな僕に姐さんが近付いてくる。
「……ふむ、かなり御立腹のようじゃのぉ」
「そんなぁ……」
「何じゃ、まだ判らぬのか?」
「だって……」
もう泣きそう。
そんな僕に姐さんが更に追い討ちをかける。
「……太宰や」
「は、はい……」
「わっちの中也を泣かせた落とし前はしっかりつけてもらうぞ」
うわぁ……云い方怖いよ姐さん……。でも、中也のためだもんね……仕方ないよね?
僕は覚悟を決めて再度中也を追った。
「…中也、その……」
「……」
中也はまた直ぐに見つかった。
僕は中也の腕をやっとの事で掴んで、声をかけた。
「えっと……その……この間はごめん……」
僕はやっとの事でそれだけを云った。
中也は顔を背けたままだ。
どうしよう、怒ってるよね?最悪殺されるかも……。
そんな僕の考えとは裏腹に、中也が口を開いた。
「手前は」
「……え?」
「手前は俺の事、邪魔だと思ってんだろ」
声が震えている。
僕はハッとした。
中也は、泣いているんだ。
「え?ちが……そんな訳ない ……ごめん」
「ッ……」
あぁ、なんて最低なんだろう。僕は君の相棒なのに、そんな事も云えなくなってしまったのか。
「……あのね」
僕は続ける。今云わないと、ダメな気がしたから。
「僕は、中也が好きだよ」
「…は……」
「好きだから、素直になれなくて、あんな事云っちゃったんだ」
「……」
中也は無言のままだ。
僕は続ける。ちゃんと伝えないと。
「本当にごめん……酷い事言って、ごめん……。」
もう情けない声しか出ない。なんて不甲斐ないのだろう。
「……ばか太宰」
「え?」
中也は突然振り返ると、僕を抱き締めた。
「……ちゃんと云えよ……莫迦野郎……」
「あ……えっと……ごめん……?」
え〜???何何何…泣き顔可愛い……じゃなくて!え、何これ??
「ったく……手前は本当に……」
「その、中也……?」
「んだよ」
中也は涙で潤んだ目で僕を見る。
「……怒ってないの?」
「…そりゃ、怒ってるけど……」
「けど……?」
「手前の気持ちは、伝わったから」
中也はそれだけ云うとまた僕の胸に顔を埋めた。
「……何それ」
「あ?」
僕は堪らなくなって中也を思い切り抱き締める。そして……。
「可愛い……」
「……っ」
あ〜ぁ、やっばいなぁ……可愛すぎるよ君は。もういっその事食べちゃおうかな?え?だめ?全年齢作品だから?
「あんま…調子乗んな莫迦……っ!」
照れ隠しのパンチも可愛いね。
僕はこれからもっと甘やかそうと決心したのだった。
(ヴォエッ!ゲロ甘ッ!なんだあれ!なんだあのバカップルは!)
モブ山モブ太郎は目撃してしまった。
太宰治と中原中也が、イチャコラしている所を。
ポートマフィアに入って以来、二人のことは仲の悪い犬猿の仲だと認識していた。
だが、そんな印象が今目の前で見事に打ち砕かれたのである。
しかもこのバカップルは人目も憚らずイチャコラするのである。
(やっぱ俺……ヨコハマ出ようかな……)
モブ山モブ太郎は深く溜め息を吐いたのだった……。
END