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「はい、みんな集合ー!
間もなく送迎用の箱が来ますから」
公都『ヤマト』、その旧スラム地区で―――
新たに出来た児童預かり所へ行くため、
三才~十才くらいの子供たちが集まっていた。
人間や獣人族の大人の女性から、指示を受けた
子供たちは、
「やっぱり、あのふわふわしたものには
乗れないのかなー」
「飛べる、って思ってたのに……」
「何であっちだけなのー!?
ズルイー!!」
と、不満を隠そうともせず大声を出す。
ただ今回は様子が違っていた。
いつもなら困った顔になる保護者たちが、
ニコニコしながらその時を待つ。
「あ、来たわね」
「みんな、準備はいい?」
彼女たちの言葉に、子供たちは首を左右に振って
『来た』という何かを探すが、
「んー? どこー?」
「誰も来てないじゃん」
自分たちがいる道の端から端まで見渡しても、
何かが来る気配は無く、子供たちは首を傾げる。
「上、上」
そう獣人族の女性が空を指差す。
それにつられて彼らが見上げると、
「えっ、何アレー!?」
「飛んでるー!?」
上空から、長方形の箱型の物体が垂直に下りて
くるのが見え、
さらにその四方にはロープが伸び、その先端には
それぞれハニー・ホーネットが繋がっていた。
それがゆっくりと地面に着陸するまで、
子供たちは口をポカンと開けていたが―――
「ハイ! じゃあ乗って乗って!」
「中で飛んだり跳ねたりしたらダメだからね」
そう言いながら、保護者の女性陣が子供たちを
抱きかかえ、箱の中に入れていく。
箱の高さはだいたい一メートル半くらいだが、
上半分は格子状となっている。
これはリベラ所長からの提案で、
『絶対下をのぞいたりする子が出てくる』
『外が見えないとよじ登って見ようとする』
『だから外はある程度見えるようにしておく』
という意見に沿ったものであり、
「全員乗ったわね?」
「じゃあハニー・ホーネットさんたち!
よろしくお願いしまーす!」
女性の一人がそう言うと、今度はゆっくりと
『蜂箱』は地上から浮き上がって、
高さ一メートルほどのところでホバリングし、
「飛んだー!!」
「浮いてるー!!」
「スゲー!!」
と、乗っている子供たちは大はしゃぎで、
「身を乗り出さないでね、落ちちゃうから」
「これからこの『蜂箱』が、児童預かり所までの
往復の移動手段になりまーす」
「じゃあ行きますよー!!」
と、保護者たちの誘導&護衛の下……
子供たちを乗せた『蜂箱』は、水平に
移動し始めた。
「モンステラ聖皇国で監禁されている、
亜人・人外の救出、ですか」
冒険者ギルド支部に呼ばれた私は、
その支部長室で―――
依頼内容を聞いていた。
ただ、その話をしているのは部屋の主ではなく、
『すまねぇな、シン。
ただこれは非公式ながら、同盟諸国との
緊急会議で決定した事だ。
一応あくまでも強制ではなく、話を通して
みてくれ、との事でな。
まあもっとも、お前さんに強制出来る
存在なんて、この世界にはいないだろうが』
魔力通信機の向こうからライさん……
前国王の兄、ライオネル様が説明してくる。
「破壊だけなら、俺や既存戦力でも何とかなる
だろうが―――
敵国に潜入、かつ被害を最小限にして、
捕らえられている亜人・人外を解放する事が
可能なヤツはシンしかいないだろう」
「そうッスねえ。
正直、敵味方共に被害を出さないって、
シンさん以外にゃ出来ない芸当でしょうし」
アラフィフの筋肉質のギルド長と、褐色肌の
若い青年、次期ギルド長が父と息子のように
うなずく。
『まあ報酬はそれなりに出る。
もし引き受けてもらえるのなら、
ランドルフ帝国も含めた同盟諸国で、
ええと……
一国の国家予算くらいにはなるだろう』
「でもそんなにもらっても、使い道が今のところ
無いんですよね。
どちらかと言うとその報酬は、それぞれの国の
国内投資や開発に回して欲しいんですけど」
私がライさんの言葉に消極的に答えると、
「そういやお前さんはそういう性格だったな」
「俺もシンさんと一緒にいると金銭感覚狂うッス
からねえ。いい意味で」
ジャンさんとレイド君がまた親子のように
うなずく。
『せめて半分くらいはもらっとけ。
それに報酬をもらわないと、今度はそれが
当然だと考える連中も出て来る。
お前さんに対する依存度も上がって来て
いるんだ。
下手な対応は止めた方がいい』
確かに、無償の奉仕など論外だ。
正当な報酬をもらわなければ、痛くもない腹を
探られる可能性もある。
「でも、シンさんの実力はわかっている
はずッスし、うかつな事はしないと思うん
スけどねえ」
「そりゃシンの力を目の当たりしていりゃな。
未だに平民だという事で、好き勝手に使えると
思っている連中はごまんといるだろう。
王族はわかっていても、その臣下まで同じとは
限らねぇんだ。
特にシンの能力は秘中の秘だからな」
二人の補足するような言葉に、今度は私が
うなずく。
私の『無効化』能力はトップシークレット。
だからこそ、何も知らない人間が暴走する
恐れはあるだろう。
『まあとにかく、今はランドルフ帝国に
兵器化施設の詳細を調査してもらっている
最中だ。
情報は逐次、ティエラ王女様が届けに来る。
それを見てお前さん自身が判断してくれ』
改めて依頼を伝えられると、私は支部長室を
後にした。
「……というわけで、またあっちの大陸に
行く事になりそうだ」
自宅である屋敷に戻った私は、家族に説明する
事にした。
「まあ、そんな予感はしてたー」
「しかし、女子供までとは。
この体でなければ、我らも同行したい
くらいじゃわい」
アジアンチックな童顔の妻と、ヨーロピアンな
豊満なボディを持つ妻が眉間にシワを寄せる。
妊婦の二人にはあまり聞かせたくない事
だったので、その部分は避けていたのだが、
再び海の向こうに行くとなれば、全て話して
おかなければと思い―――
結局は明かす事にしたのである。
「じゃーボクが行っていい?
ちょっとぶっ飛ばしてくるから」
中学生くらいの、セミショートの黒髪の娘が
赤い瞳をギラつかせて腕をブンブンと回す。
「ラッチはお母さんたちを守っていてくれ。
それに、お前の弟か妹も産まれるんだから。
しかし、この前みたいにまた一ヶ月とか、
時間を取られるのはなあ」
身重の妻二人と長期間離れるのは、
私としてもメルとアルテリーゼにしても、
精神衛生上よろしい事じゃない。
だが任務内容は救出がメインだ。
それに、ランドルフ帝国からモンステラ聖皇国へ
行くだけでも時間がかかる。
「帝国に『ゲート』はあるけど、
そこから先はどうしても、陸か海か空の移動に
なるからなあ……」
「大っぴらに出来ない、って事情もあるしねー」
「だからこそ、シンに頼むのであろうよ」
慰めるように妻たちが私の後に言葉を続ける。
「どちらにしろ、情報が揃うまでこちらも
動けないから―――
しばらくは公都でゆっくりしているよ」
「あ、そーだ!
おとーさん、あのね。
『蜂箱』なんだけど、旧スラム地区で
見たよー」
そこでラッチが話題を変え、
「ん? 旧スラム地区に行ったのか?」
「えーと、石橋の上から見たー」
その話にメルとアルテリーゼも加わり、
「ほーん、どうだった?」
「同じ空を飛ぶとはいえ、布ゴーレムとは
別モノだからのう」
心配そうに聞き返す二人に、
「子供たち、キャーキャー言ってた!
すごくはしゃいでたよー!
みんな喜んでいたし、しばらく文句は
出ないんじゃないかなー?」
娘の言葉に、私たちは顔を見合わせ、
「ま、まあそれは何より……」
「飛べさえすれば何でもいいのか」
「幼子はそんなものであろう」
と、大人たちは少々複雑な気分で、ホッと
胸をなでおろした。
「お久しぶりです、ティエラ王女様」
状況が変わったのはその二日後。
例の兵器化施設の情報が入ったとの事で、
彼女自らが公都『ヤマト』を訪ねて来たのだ。
ティエラ様はそのパープルの長髪を揺らし
ながら、テーブルの上に書類を置く。
「たった数日でこれだけの―――
って事はねぇな」
「モンステラ聖皇国・大ライラック国双方に
もともと潜り込ませていた、間者たちの情報も
含めてのものです」
ジャンさんの指摘に彼女は素直に答える。
「ここの応接室と支部長室は完全防音ッスから、
外に漏れる心配は無いッス。
で、資料を見る限り、場所はすでにつかんで
あるんスね?」
レイド君の言葉通り、ここは冒険者ギルド支部の
支部長室だ。
自宅でも良かったのだが、セキュリティが一番
高いところがここだったので、私もこちらへ
場所を移したのである。
(後は王家ご用達の施設くらい)
「……施設が一ヶ所で良かったです。
もし複数に分かれている施設でしたら、
さすがにどうにもなりませんでしたから」
私も資料に目を通し、軽く息を吐く。
「シンは1人しかいねぇもんな」
「いやでも、これから産まれる子供たちが
シンさんの能力を引き継げば―――」
「いや自分の複製じゃないんですから!」
軽口でからかってくる二人に、王女様も
苦笑する。
「あ、それと……
これは噂程度の事ですので、資料には
載せていなかったのですが」
「噂?」
彼女の言葉に、三人の視線が集まった。
「オイ、知っているか?
あの大聖堂であった出来事」
「ああ、いきなり全ての魔導具が壊れたって
ヤツだろ?」
モンステラ聖皇国・首都・イスト―――
そこで信者らしき男二人がささやくような声で
話し合う。
「実はな、ここだけの話……
メルビナ大教皇様、病床に伏された、
って言われているだろ?
アレ、本当は幽閉されたんじゃないかって
噂があるんだ」
それを聞いた一方は、慌てて周囲を見回し、
「オイ、めったな事を言うな。
誰かに聞かれたらどうする。
もしそれが本当なら、今大教皇代理を
務めている、レオゾ枢機卿様は―――」
「だから、あくまでも噂だって。
でな? 大聖堂の魔導具が壊れたのは……
メルビナ大教皇様が幽閉された事に怒った、
大精霊様がやったんじゃないかって。
そう、まことしやかに言われているんだよ」
いったんは咎めたが、興味を持った男はさらに
声を小さくして、
「あれが大精霊様の仕業だって?」
「まあ、あくまでも噂だからな。
それに誰一人、ケガ人も出なかったって
話だし。
もし大精霊様が本気で怒れば、それどころじゃ
すまないだろうよ」
ひそひそと小声でやり取りしながら、信者たちは
イストの路地へと消えていった。
そして大聖堂・大教皇代理のレオゾ枢機卿がいる
一室では、
「……同盟の公式発表を控えて欲しいとは、
どういう事ですかな?」
痩せすぎと思えるほど頬のこけた、白髪の青年は
軍人らしき男を前に問う。
「……まさか、今さら臆病風に吹かれたとでも」
続けて出たレオゾ枢機卿の言葉に、対面の
アラフォーと思われる男は大きく息を吐き、
「慎重論が本国で持ち上がっただけです。
その原因は貴方にある。
言われなくてもおわかりでしょう」
言葉こそ丁寧だが、威圧的な態度に聖職者は
たじろぐ。
「一部の側近を逃がした事。
そして幽閉されていた大教皇様すら、まんまと
奪還された。
こちらは今大混乱していますよ。
どれだけの方針・戦略の変更を余儀なくされて
いるか」
「……情報統制は出来ています。
未だ、メルビナ大教皇様は―――
我がモンステラ聖皇国におりますれば」
それを聞いた軍人は、再び大きく息を吐き、
「そのような事を聞いているのではありません。
側近、そしてメルビナ大教皇様……
彼らに立て続けに逃げられた事、それ自体が
問題なのです。
貴殿や貴国の能力に疑問を持たれても、
仕方がありますまい?」
「…………」
返す言葉もなく、彼は黙り込む。
「ご心配なく。
兵器化用の亜人や人外の調達は、滞りなく
行いますよ。
一定数の戦力がまとまれば―――
大ライラック国との同盟発表の件も、前向きに
進むでしょう」
「……感謝します。
……引き続き、ご協力を……」
レオゾ枢機卿の言葉に軍人は深々と頭を下げ、
退室していった。
「……というようにですね。
どうも大聖堂のあの一件は―――
大精霊様の怒りによるもの、という噂が
広まっているようなのです」
「宗教国だからなあ。
影響はそれなりにあるのか」
ティエラ王女様の話に、ギルド長がうなずき、
「それ、どれくらい本気で信じられて
いるんスか?」
レイド君が聞き返すと、
「半々、ではないでしょうか。
あくまでも噂の域を過ぎないくらいには。
基本、そこそこの者は聞き流すでしょうが、
あそこは布教という名の下に、周辺国を
圧迫してきた国でもありますので……」
「あー、信心がそっちに向けば―――
かなり面倒な事になりそうですねえ」
信仰の力は侮れないが、それは絶対的、
盲目的ともいえる信じる力の裏返し。
もしそれが揺らげば、根底から崩れる事もある。
「その……レオゾ枢機卿の周辺は?」
「さすがに忠誠心が高い者たちで固められて
いるのか、動きはありません。
ただ、メルビナ大教皇様と側近の脱出を許した
事で―――
大ライラック国では、未だ関係は秘密裏の
ままにしているとの事」
いろいろやらかしてしまった結果、裏の関係は
続けるが、表立って支援・協力するのは躊躇して
いるって事か。
「そりゃそうか。
組織の頂点を確保して乗っ取ったと思ったら、
いきなり奪われているんだから。
俺じゃなくとも、『コイツ大丈夫か?』って
なるだろうよ」
「あちらさんにしてみれば―――
突然最強の手札が無くなったような感じ
ッスからねえ」
ギルド長と次期ギルド長がうなずきながら語る。
「しかし、『洗脳による自動戦闘化』および、
『魔導具による自爆攻撃含む兵器化』、
ですか。
決戦兵器というか、使う気満々という意思が
伝わって来ますね」
書類に目を通しながらため息をつく。
これを見るに、ランドルフ帝国はまだマシな方
だったんだなと思う。
「宗教国でもあるので、ある意味極端な傾向は
あると思います」
ティエラ様が私の言葉に返し、
「大ライラック国も乗り気なんだろ?」
「あの国でも、もともと亜人や人外に対する
扱いは酷いものがありましたが……
思いつかなかっただけで、抵抗は無いので
しょうね。
多分、純粋に戦力増強になるから興味を
持ったのかと」
この部屋の主の問いに、彼女は両目を閉じて
答える。
「それでシン殿。
この資料から、何か手立てはつかめそうで
しょうか」
王女様が私の目を貫くように見つめる。
この施設に捕らえられている、亜人・人外を
救出出来ないか、という意味なのだろうが、
「正直、力押しは難しいでしょうね。
それに潜入や何らかの勢力が介入している事が
バレた時点で、最悪、殺せという命令が出て
いてもおかしくありませんし……」
メルビナ大教皇様救出の際、彼は体を
魔導爆弾に繋げられていた。
さらに今回の救出目標は一般人―――
しかも奴隷に近い扱いを受けている。
そして兵器化という事は軍事技術でもある。
逃げられるくらいなら証拠隠滅のために消せ、
というのは十分考えられる事だ。
「シン殿でも難しいですか……」
彼女視線を落とすと、短くため息をつく。
「そうそう、おとぎ話のようにはいきませんよ。
前回も、いろいろな方々の協力があってこそ
ですし―――」
そこで私は自分の言葉に引っかかり、
「おとぎ話……
あの、アリウス様―――
もとい、ベッセルギルドマスターの協力は
得られますか?」
「あのエルフの方ですか?
大丈夫だと思いますよ?
メルビナ大教皇様救出の件も、非常に感謝して
おられましたから」
私とティエラ様のやり取りに、
「おっ?
何か考えついたか、シン」
「俺たちも出来る事があれば、
協力するッスよ!」
と、ジャンさんとレイド君が申し出てくれて、
「ありがとうございます。
その前にまず、土精霊様と氷精霊様を
呼んで頂ければ……」
「あの2人を?
多分、児童預かり所か『ガッコウ』に
いるんじゃねぇかな」
「じゃ、ちょっと行ってくるッス!」
こうして、私の頭に浮かんだ策の実現に
向けて、状況が動き始めた。
大ライラック国、首都・マルサル―――
その王宮の一室で、いかにも軍服、という衣装に
身を包んだ武人たちが、長テーブルに座って
会議を進めていた。
議題内容はモンステラ聖皇国。
レオゾ枢機卿がクーデターを起こし……
メルビナ大教皇を幽閉したのも束の間、
あっさりと大教皇は外部勢力により奪還され、
これにより、レオゾ枢機卿を実質上トップに
据えた上での、大ライラック国との同盟締結に
暗雲が立ち込め始めていた。
「計画通りいかないのは常だと理解して
いるが―――
レオゾ枢機卿とかいう男、少々頼りなさ過ぎ
なのではないか?」
「とても軍王ガスパード様に、ご報告出来た
ものではないぞ」
「側近だけではなく、大教皇の脱出すら
許してしまうとはな……」
苦々しい表情で、彼らは現状を語る。
「静まれ。
起きてしまった事を悔やんでも仕方が
あるまい?
そもそも、モンステラ聖皇国の戦力など
最初からあてにしてはいない。
今回の亜人・人外の兵器化技術―――
そして万が一の際、我らの防御壁になって
もらえばいいのだ」
彼らの中で最も身分が高そうなアラフィフの
男が、周囲に冷静になれと促す。
「しかし、これは……」
比較的若い青年が独り言のようにつぶやくと、
「どうした?」
身分差からか階級差からか、彼はビシッと
背筋を伸ばし、
「いっいえ!
た、たいした事は無いかと思いますが、
気になった事がありまして」
そこで周囲は彼に興味を示し、
「何でもよい、言ってみよ」
「同盟発表も見送られた今―――
どうせ出来る事は少ない」
発言を催促された青年は立ち上がり、
「は、はい!
以前、ウィンベル王国に潜入した間者たちが、
見破られた上に戻された……
という事がありましたが、
確か王国内で、自爆用の魔導具が故障した、
との報告を受けております」
(■229話 はじめての おりがみ
■235話 はじめての せいれいか参照)
「うむ、それは聞いている」
「確か、未だ故障原因は不明だとか」
その事を思い出したのか、会議場はざわめく。
「そして、メルビナ大教皇奪還を受けた際、
大聖堂全ての魔導具が故障したとの事。
となると、あちらには―――
魔導具を故障、もしくは不具合を招く
何らかの手段があるのではないでしょうか」
『なんだと』『まさか』と、室内はさらに
騒然となる。
「うむ……」
先ほど、場を静めたアラフィフの軍人の一言で、
再び部屋は無音と化し、
「確かに、自爆用の魔導具―――
そして大聖堂にあった魔導具が動作しなく
なった、これは事実だ。
だが規模が違い過ぎる。
それに、一斉に一つの施設の魔導具を故障
させれば、敵に合図を送るも同然だ」
続けて出た指摘に青年は身を縮めるが、
「だが着眼点はなかなかのもの。
確定ではないが、心の片隅にでも
置いておいた方がよかろう。
何せあちらには、まだまだ何があるか
わからんのだからな……!」
「ハッ!!」
「ハハ……ッ!!」
彼の言葉に会議に参加している全員が頭を下げ、
議論は続けられた―――