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十六夜 咲夜は完璧である。
才色兼備の主人思いなメイド。
誰もが目を惹かれ、誰もが彼女に対しての憧れを抱く。そんな存在である。
だがそれは、
“昔から”ではない。
~十六夜 咲夜編~
【完璧】
彼女は外の世界のとある金持ちな一家の長女として育った。
霞「お母さん。今日もテストで百点取ったよ~!」
母「お~!凄いわね。霞!」
咲夜には双子の妹、十六夜 霞がいた。
彼女は完璧で誰にも優しい。まさに才色兼備だった。
母「咲夜はどうだった?」
咲夜「え…あ…。98…一問、まち…がえた」
霞「あんなに勉強したのに!?咲夜はだめだな~…」
母「まぁまぁ…」
咲夜「…」
母「別にいいじゃない。充分凄いわ!」
咲夜「!…うん!」
妹の霞に劣り、いつも百点間近で間違えるという凡ミスをすることが多かった咲夜は、周りから霞と比べられることが多かった。
メイド「なんで咲夜様はなにもできないのかしら…」
メイド「食事も下手よね…」
メイド「音は立てるわコップは割るわ溢すわで…。ほんっと迷惑」
咲夜「…」
運動も対してできない。
そんな咲夜を回りは罵倒した。
咲夜は劣っている訳じゃない。ただ妹が優秀すぎた。ただそれだけだったのだ。
もっと言ってしまえば、咲夜も成績は良かった。
罵倒してくる連中よりかは何倍も。
そんな咲夜には夢があった。
それは”メイド”になること。
なんでもできるメイドに、咲夜は憧れを抱いていたのだ。
ただ自分も高い立場の人間だ。
逆にメイドを作る側の咲夜は、どう足掻いても叶わない夢だった。
小学校の自己紹介カードでも、
夢はなにかと聞かれれば”メイドになること”と書いた。
けれどその自己紹介カードを皆に見せれば、「庶民を馬鹿にしている」「ふざけないで」などと咲夜に向けての暴言が目立った。
対して霞の夢は「日本一」それに浴びせられる声は”称賛”。「頑張ってね」やら「霞ちゃんなら絶対できるよ」やらと咲夜と正反対な声を掛けられた。
夢は可能性を持ってできるものだ。
咲夜も”メイド”という素晴らしい職業にほんの僅かな可能性を持って自分でメイドとして突き進もうと、そう思っていた。
心の優しい母だけが、その咲夜の夢を称賛した。
母「咲夜ならきっとなれるよ。」
母「期待してるね」
“期待”。それは今の咲夜にとってどれだけ素晴らしいことか。
何をしても称賛されず、何をしても罵倒ばかり。期待という簡単なことが、咲夜に少しの希望を持たせていた。
けれど、夢は長くは続かなかった
母が死んだのだ。
父の会社が取引先で揉めたらしく、ドライブ中の父の車に取引先の社長の車がぶつかった。
父は幸い生きていたが、もう目を覚ますことはないそう。
母は割れた車の破片が心臓に刺さり亡くなった。
咲夜と霞は二人取り残されてしまったのだ。
施設に預けられた二人だったが、霞はすぐに引き取り先が見つかり咲夜だけが置いてけぼりにされてしまったのだ。
そんなとき、一人の男が咲夜を引き取った。
咲夜は安心したも、それは悪い方向へ進んだ。
“臓器販売”
穢れのない場所で育った咲夜の臓器は、高額で買い取れる品だったらしい。
咲夜はそれを知り、月の浮く方向へ家を出て逃げた。
裸足で駆けたせいか、足は木やらなんやらが突き刺さり、もう歩けないまでボロボロだった。
その日は満月の浮かぶ日だった。
十六夜…。
明日になれば十六夜が訪れる
中々素敵な死かもしれない…そう咲夜は心の中で呟き、スッと目を閉じた。
咲夜「もう…。死んでもいいかな」
まだやりたいこともやれてない
まだ夢を叶えてない
咲夜「死にたくないッ…!」
けれどもう歩く気力も何もなかった。
最後に一度だけ、家族の顔が見たくなった。
霞もなんやかんや言って一緒にいてくれたのだ。
霞『ほら咲夜、立ちなさいよ。』
霞『ここ、違うわ。』
霞『へへっ、あんたが百点取れたのも私のおかげね!』
霞『あんたも元はいいんだから!もっとオシャレしたら?』
霞『あ!私の服貸そっか!』
咲夜「…。」
咲夜「…みんなに会いたい…」
せめて、せめて最後に…
人間の温かさを知りたい
でももうだめだ
視界がぼやけてる。
体が冷えてきてる
死ぬんだ
わたし…ここで誰にも見られずに死ぬんだ。
咲夜「助けて…誰か…」
?「あら、こんなところに人間?ボロボロじゃない。可哀想に。…連れていきましょうか」
目が覚めると大きなシャンデリアが見えた。
咲夜「あ…れ…?」
咲夜「え…?なんで私…生きて…。ていうかここ何処?」
自分の家よりも豪華な室内を見渡して、誰かに拾って貰ったんだと脳が錯覚する
咲夜「ここの主さんは誰だろう…」
?「目が覚めたのね」
咲夜「わぁ!!??」
?「ふふ…。驚いた?」
目の前には紫髪の幼子?がいた。
コスプレしているのだろうか…。背中に羽が生えている。
レミリア「私はレミリア・スカーレット。この館の主よ。あなたは?」
咲夜「え?あ…い、十六夜 咲夜はです…」
レミリア「そう。咲夜って言うのね。」
咲夜「あ、は、はい!」
ぐぅ~
腹が空いていたから腹の音が鳴った。
咲夜「あっ…///」
レミリア「ふふっ。お腹が空いているのね。少し待っていて」
ドーン
目の前に置かれた食の面面に咲夜は目を惹かれた。
咲夜「美味しそう…!!」
レミリア「でしょう?沢山食べて元気を出して。水もあるから」
咲夜「い、いいんですか…!?ありがとうございます!」
レミリア「ふふっ…。ゆっくり食べなさい」
咲夜「はいっ!!!」
久しぶりのちゃんとした食事に、咲夜は口へ食べ物を運ぶ手が止まらなかった。
レミリア「いい食べっぷりね。」
咲夜「へ?はい!」
幸せそうに食事をする咲夜に、レミリアは健やかな笑顔を浮かべた。
咲夜「これ…誰が作ったんですか?」
レミリア「ん?うちのメイドよ。すごいでしょう?」
咲夜「あ…メイドさん…ですか」
レミリア「?どうかしたの?」
咲夜「あ…いや…。私夢がメイドなんですけど…。周りの人からそれを批判されてて…。」
レミリア「なんで?いい夢じゃない」
咲夜「!…私、結構お金持ちな家庭でして…。メイドも居たんです。だから…。庶民を馬鹿にしているとか言われてたんです」
レミリア「そう…。あ、なら…」
レミリア「うちでメイド、やってみない?」
咲夜「…え?」
レミリア「素敵な夢なのに、諦めるなんて勿体ないわ。なんならうちでメイドとしてやってみないかなって!」
咲夜「い、いいん…ですか?」
レミリア「えぇ!」
咲夜「や、やります!私やりたいです!!」
レミリア「ふふ、大歓迎よ。住み込みでオーケーだから。部屋も用意するわ」
咲夜(なんていい人なの…!)
レミリア「それじゃ、今日からあなたも私の家族ね」
咲夜「へ?」
レミリア「ん?あぁ…。私、この家にいる人みんな家族だと思ってるのよねー」
咲夜「そ、そうなんですか!」
二つ目の家族ができた咲夜は、これまでにないほどの嬉しさで溢れていた。
レミリア「そうね、運命がこう言ってる、」
咲夜「運命…?」
レミリア「あなたは世界一のメイドになるってね」
咲夜「世界…一!」
レミリア「えぇ。保証するわ。」
レミリア「あ…それと…“地下室”には絶対に行かないで」
咲夜「?何故ですか?」
レミリア「…。私の、妹がいるの」
?「新しい人間の匂いだぁ…。お姉様が玩具を買ってきてくれたのかな?」
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次回 フランドール・スカーレット編 ~牢獄~
こちらは完全不定期となります。
不定期の代わりに、長いお話とします。
次回のあらすじ
「私フランドール…あなたが新しい玩具?」
「壊れない玩具は楽しいなぁ」
「ずっと…ずっとずっとずっと…地下に閉じ込められてるの」
「私お姉様が大嫌い」
「なんでお姉様はいつも私ばっかり独りにするの!!?」
「壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して、地獄に落としてあげる」
「お姉様なんか大っ嫌いだぁ~!!うわぁぁん!!!」