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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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「クソッ! 本当にやり辛いパーティだな……」
苦い声を洩らしながらも、ひたすら監視カメラの映像をハックする作業を続けて行くが……駄目だ、問題のスナイパーが見つからない。
たった三人だけのチームだというのに、以前はこの三人に盤面を狂わされた。
更に言うのなら、あのスナイパー。
報告を聞く限りoctopus8と共に戦闘した時に狙撃して来たのも、例の如くそのプレイヤーだったと言う話だ。
つまり、本当に油断できないのは狙撃手。
観察力、狙撃能力、そして隠れる力も馬鹿に出来ないレベルだという事だ。
「普通のプレイヤーの中にも、こういうのが混じってんだよなぁ……このゲーム」
忙しくガタガタとキーボードを叩きながら、様々な個所の映像をモニターに表示させていく。
正面の重装備と、あのふざけたテンションのハンドガン使いは妹に任せる他無く。
こちらは必死でもう一人を探している状態。
まるで9Kを連想させる程に、隠れるのが上手い。
前回エイトが彼を発見出来たのだって、そしてその前のチーム戦だって。
相手を見つけられたのは、向こうが一度“撃って来た”後なのだ。
その一発で決められてしまったら、それこそ不味い。
だからこそ先手を、もしくは敵の位置を割り出して、夢月を狙わせない位置に誘導しなければいけないというのに。
「だぁクソ! 駄目だ、下手すりゃ高所に隠れてるな……衛星の映像もリンクさせて、それから――」
『白川さん、珍しく焦ってますね』
「うるっさい、集中してんの! 滅茶苦茶厄介なチームが出て来たんだよ!」
通話を繋いだままになっているsecondのサポーターから、ハハッと乾いた声を上げられてしまったが。
『ウチの賞金首からの情報提供です。狙撃手ではないので、正確な場所までは分からないそうですが。しかし、“人が心理的に潜みそうな場所”の予測地点を共有します。それから、こっちでアクションを起こすんで。このタイミングで特定する事は可能ですか? 多分暗闇に紛れて、ろくに見えない所に隠れているでしょうから。ちょっと明るくします』
「……具体的には?」
『被弾覚悟で、“隙を作る”そうですよ。一瞬だけ相手の注意を引きますんで、白川さんは狙撃手の特定。妹さんの方には前衛二人の対処をお願いします』
「言ってくれるねぇ……流石は向こうも賞金首の一人だ。環境に一番慣れていないプレイヤーだってのに、格好良いじゃないの」
『えぇ。ウチの賞金首、実はかなり格好良いので』
そんな訳で、送られて来たポイントに周囲の監視カメラを向けて行く。
6key周辺の映像だったら、結構自由度高く見渡せるのだが……視界外への監視となると、やはり街中のカメラなどをフル活用するしかなく。
本日は家で仕事させてもらっている為、数多くのモニターへそれらの映像を表示させてから。
「夢月、secondが隙を作ってくれるそうだ。そのタイミングで、前衛二人を片付けろ」
『相変わらず……無茶言ってくれて』
「だが、やるしかない。お前なら出来る筈だ。そんでもって、その間に残りの狙撃手は俺が絶対に見つける」
そう宣言してから全てのカメラの映像に神経を尖らせる。
普通だったらこんな仕事を任せられた場合、ふざけんなって言いたくなるところだが。
俺がミスれば、その結果は全て妹に降りかかるのだ。
頑張った云々の自認では意味が無い、確かな結果を残してやらないと……また、妹が泣くかもしれない。
だったら、やれ。
出来る出来ないの話ではなく、やれ。
俺は兄貴で、可愛い妹が俺を頼ってくれるのなら。
120%でも200%でも底力を引っ張り出せ。
『白川さん、カウントします。6keyさんの通信にも繋ぎますよ?』
「頼みます、どうぞ」
相手方のサポーターの声に合わせて、刻まれていく数字を聞きながら。
全力で、全ての映像に集中した。
ほんの僅かな違和感でも、絶対に見逃さない様に。
忙し過ぎて、作戦の詳細さえも聞き出す暇すらないが。
でも今この瞬間にも夢月が戦っていると言うのなら、何が起きても対処してやるのが兄貴ってもんだろう。
そしてカウントが終わると同時に……カッ! と。
フィールドの夜空に強い光が迸るのであった。
「っ! 見つけた! 狙撃手発見!」
『流石白川さん、アレで見つけられるって相当ですね』
「ポイントを送るから、secondにも情報共有! 夢月、そっちはどうだ!? 逃走ルートを指示する! スナイパーの死角へ逃げるぞ!」
『もうちょっと、待って! すぐ終わらせる!』
この瞬間、一気に事態が動き始めるのであった。
◆
『second、白川さんがスナイパーを発見しました。お見事、ナイス投擲。場所を共有しますが……どうします? シックスは射線から外れる方向で進めるみたいです』
「ハッハッハ、お役に立てた様で何よりです。それでは……予定から随分とズレ始めましたからね。どうにかして、私の方で狙撃手を対処しましょうか」
軽い声を返しながら、グリングリンと肩を回した。
こちらがやった事は非常に単純。
私が予想した狙撃ポイントが照らされるであろう位置に向かって、思い切りスタングレネードを投擲したのだ。
空中で炸裂するタイミングを見計らい、連続で投下。
結果夜空が照らされ、監視役が残る一人の敵を発見出来た御様子だ。
『了解です。狙撃手の位置まで少し距離がありますから、攻撃を受け辛いルートをすぐに割り出します。にしても……飛びましたねぇ、スタングレネード。筋力、そんなに振ってましたっけ? というか数字だけじゃ意味無いんで、先生意外と運動得意ですか?』
「実は昔、ずっと野球部でしてね? 大人になってからも、度々妻とキャッチボールをしているのですよ。向こうはストレス発散の為にやっているので、この歳でも剛速球を求められまして。スパーンっとグローブに入って来るのが気持ち良いそうです」
『ぶはははっ! 相変らず、奥様の方はアクティブですね。夫婦仲が良好な様で何よりです。それから、ナイスピッチング』
「私でもお役に立てたのなら、これくらいいくらでも」
随分と緩い会話をしながらも、回復銃を背中に回し。
普段使っていたサブマシンガンを準備し始める。
こっちに関しては、本当に下手ですからねぇ。
妻にも相談して、なるべく当たる様に色々とパーツをつけてもらったが。
それでもやはり、他の賞金首達の様には戦えないというのが正直な所。
しかしながら、私は人間の精神というモノをひたすらに勉強してきたのだ。
これらの知識を使い、“この状況だったら相手はどう考えるのか”を瞬時に想像する訓練を繰り返して来た。
その結果とも言って良い実績が……敵プレイヤーの“誘導”。
緊張の連続である戦場において、誰もが精神的には冷静ではいられない。
所詮ゲームだからと、リラックスしているつもりでも……やはり相手を前にすれば、特にこういう見通しの悪い場所で索敵しながらとなれば。
誰も彼もが、簡単なミスを連発するもの。
これを誘発する形で囮を設置したり、視線の誘導で注目点を此方から逸らしたり。
こういった手法を使いながら、何とか生き残って来たのが……secondという名の賞金首だ。
戦果としては、他と比べれば大した事は無い。
私自身が“戦う事”に特化していないからこそ、当たり前だ。
でも賞金首である以上、無様に負け続ける訳にはいかないからこそ。
私は私の武器を使って、この世界を生き残ると決めたのだ。
「さて……それでは。もう少しくらい格好良い所を見せて、シックスの信頼を勝ち取っておきませんと。今後の診断に響いてしまいそうです」
『精神科医の仕事は、まず相手の信頼を勝ち取る事。ですもんね。相変わらず、“先生”でいらっしゃる。ちょっと戦場に立ったりしますけど』
「私など端くれですよ。実際“戦士”の心境というのは、今まさに勉強中と言ったところです」
『こちらも先生のお役に立てる環境が作れたようで、鼻が高いですね。是非このゲームを、先生の練習台にして下さい』
などと会話しつつも、マップに表示されたルートを進んでいくのであった。
一応身を隠しながら進行はしているのだが……今のところ、狙撃の心配は全く無さそうだ。
それどころか、新しく投入されたチームすら避ける道筋を選んでくれている様で。
流石は私のサポーター、私が弱いのを良く知っておられる。
こういった判断能力は、こちらこそお見事ですと言ってしまいそうだ。
「全体的にシックスに任せきりですから、あまり格好は付きませんねぇ」
『それじゃ狙撃手をこっちでどうにかして、白星上げるしか無いですね。期待してますよ、セ~ンセ』
「ハッハッハ、それでは……おじさんも、少しばかり頑張るとしますか」
そんな言葉と共に、手に持っているサブマシンガンを準備するのであった。
さぁて、此方でも見えましたよ? やけにシックスを狙って来るスナイパーさん。
そこまで大きな銃では、隠れるのも大変そうですねぇ?
コメント
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第105話、おつかれさまです…! 裏方たちの奮闘がすごく丁寧に描かれていて、白川さんの「自分がミスすれば妹に降りかかる」っていう責任感、グッときました。second先生のスタングレネード投擲もカッコよくて、戦闘よりサポートに特化したキャラの活躍って良いですね。狙撃手との駆け引き、どうなるのか気になりすぎます。