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「ふぅ……」

 息をつくと共にぱたん、と本が閉じられる。顔を上げたエルフの青年は言った。

「一話だけ読みましたが、面白そうな物語ですね。こちら、購入してもいいですか?」

「もちろんですよ」

「手続きはこちらでお願いします」

「はい」

 購入の手続きをしているマスター達を横目に千弦先生が口を開いた。

「こう見ると、この店がブックカフェってことを再認識するね」

「こんなに本があるのに、ですか?」

「それはほら、普段カフェスペースにしか足を運んでないから」

「ここなら好きなだけ試し読みできるのに」

「考えておくよ」

 先生はいつもそう言って、はっきりとした返答をしてくれない。まあ、僕としては毎日来店してくれるだけでも嬉しいのだけれど。

「ご購入、ありがとうございます」

「こちらこそです。喉が渇いてしまったので、何か頂いてもいいですか?」

「構いませんよ」

「メニューはこちらになります!」

 僕が差し出したメニュー表を開いた青年は、僅かに首を傾げた。

「どうしました?」

「あの、これ、なんて書いてあるのですか?」

「これは失礼しました。全言語対応の電子版をお持ちしますね」

 この店にはいろんな種族がやって来るので、時々そのお客様がメニュー表の文字を読めないことがある。最近は似たような種族のお客様が多く、その問題が発生していなかったから完全に油断していた。

 マスターに叱られるようなことは無いけれど、気をつけておかないと。

「お待たせしました。こちらをお使いください」

「ありがとうございます」

「使い方はわかる?」

「えっと……?」

「先生、恐らく通じてないです」

「そうか。じゃあここはエイムくんにお任せするよ」

「はい、任されました」

 マスターや僕と違って、千弦先生は異世界の言語をほとんど使わないし、使えない。なので基本的に僕が対応する必要がある。まあ、お客様の千弦先生ではなく店員の僕が接客するのは当たり前だけど。

「どうなさいますか?」

「じゃあこの、ピーチサイダーというものが気になるのでそれを」

「かしこまりました」

「彼何にしたの?」

 マスターがピーチサイダーの準備を始めた直後、千弦先生が尋ねてきた。

「ピーチサイダーです」

「へぇ、なかなか面白いチョイスするね」

「そうですね。エルフの方にしては珍しいと思います」

「お待たせしました、ピーチサイダーです」

「ありがとうございます」

 青年はピーチサイダーを一口飲んだ瞬間、目を白黒させた。驚いた様子で辺りを見る。

「コレは大丈夫なのかな?」

 先生が心配そうな顔をしているので、本人に確かめてみる。

「お客様、大丈夫ですか?」

「は、はい。弾ける感じで驚きましたが美味しいです」

 僕は先生に親指を立てて見せた。

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