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もしかしてと思い走り出す。
家の近くまで来た時、 私は絶句した。
燃えていたのは私の家だった。
周りには大勢の野次馬とそれを整備する警察、そして必死に火を消す消防士達。
優佳「……家が…燃えて…」
男「おいやべぇぞ拡散拡散(笑)」
女「超ヤバ〜イ燃えてんだけどー再生数ヤバそ〜(笑)」
目の前のカップルがスマホを片手に動画を撮っていた。
(…………は?)
それに怒りが込み上げてきて思わず持っていた買い物袋を投げ付けた。
男「痛っ!!はあ?!」
優佳「撮んじゃねえ!!消えろ!!!」
女「もう行こ!こいつ頭おかしいよ!」
カップルは逃げるように立ち去った。
野次馬の中を掻き分けるように進み、やっと最前に出た。
立ち入り禁止のテープを潜り抜けると警察官から止められた。
警察「ここから先は立ち入り禁止です」
優佳「家族は!!どうなったの?!!ねえ!!」
警察「今消火してます。まだご家族は見つかっていません」
淡々と語る警察官を払い除け炎の中に飛び込もうとしたその時、中からの爆発で吹き飛ばされた。
薄れゆく意識の中で私が最後に見たのはただ燃え崩れていく我が家だけだった。
次に目が覚めたのは病院のベッドの上だった。
聞こえてくるのは看護師の声と心電図の音。
どうやらあれから二日間眠っていたらしい。
医者からは爆風で真向かいのコンクリの塀に頭を打ち付けたという。
すると、医者は顔色を曇らせ深刻そうな眼差しで話し出す。
医者「西宮さん、実はご家族の事なんですが…」
優佳「家族はどうなったんですか?!」
医者「ご家族は…遺体で発見されました」
優佳「へ?…遺体?」
プツッと何かが切れたように途端に周りの音が聞こえなくなって視界がぐにゃりと歪みだす。
優佳「死んだ?誰が?家族?なんで?~~~ 」
現実から目を背けたくてブツブツと自分自身に呟く。
医者「西宮さん!」
突然の声量で名前を呼ばれビクッと体が反応する。
医者「ご家族は火事が原因で亡くなりました。どうか目を背けずに聞いて下さい…西宮さん」
優佳「あぁ…あ”ぁ”ぁ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”……」
その日は一晩中泣き続けた。
翌朝、喉が枯れて上手く声が出せなかった。
あれから私はやること全てに無力感を抱くようになった。見舞いに来た祖父母や翔子から以前の私とはまるで別人の様だと言われた。
医者「西宮さん、カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか?」
優佳「大丈夫です」
医者「ですが…」
優佳「今はひとりにして下さい」
医者「分かりました。カウンセリングの件、気になったら私に相談して下さい。いつでもお待ちしてますから」
医者は心配そうな顔をしながら病室を出た。
あれから毎晩ずっとあの火事の事が夢に出てくるようになった。
皆が熱い、助けて、ここから出してくれと私に縋り付く。
その手が私を炎の中へ引っ張って行く。
優佳「っっっはあ!!!はぁ…はぁ…」
尋常じゃない程の冷や汗をかきながら目が覚める。
そんな事が続くので目の下には隈が出来てしまった。
きっと家族は私を恨んでるんだ。
(私だけ生きちゃった…なんで家族なんだよ、なんで私が生きてるの……ごめんなさい…生きててごめんなさい)
退院してから私は祖父母の家で暮らす事になった。
家で過ごしてる間、毎日翔子が様子を見に来てくれる。
翔子「隈が酷くなってる、ちゃんと寝れてるの?…ねぇ優佳、学校来れそう?皆優佳の事心配してたよ」
優佳「私行ってもいいのかな」
翔子「大丈夫、私が付いてるから」
翌朝、翔子が迎えに来てくれて一緒に登校する事に。祖父母は私のことをとても心配していた。
教室に入るなり案の定クラスメイトや先生から心配された。
先生「大丈夫…じゃな いよな…気持ちが落ち着くまで休んでもいいから」
優佳「はい…」
先生「あんま無理すんなよ」
優佳「……。」
昼食時、私はゆっくりと屋上へ続く階段を上って行く。
(もうすぐだから……待ってて)
扉の窓から指す光が私を家族の元へ導いているようで何だか安心する。
扉を開けた先に男子生徒が一人。後ろ姿で顔は見えない。
扉を閉めた音に気付いて男子生徒が振り返る。
?「君は…西宮さん?」
優佳「そうだけど。あなたは誰?」
?「僕は新島瞬。よろしく」