「…て言う経緯があんねん」
「にわかには信じがたいな…」
「でも実際、コネシマさんはここにおりますからね」
「時間に遅刻したんかと思ったわ」
いつものメンバーが彼を囲うように立っている。その真ん中でベットに腰掛け、項垂れるコネシマの姿があった。
「はぁぁぁ……」
「うわ、盛大なため息」
「…。…ん」
「とにかく、ここから抜け出す方法を探さなあかんわけやな」
「せやなぁ…」
「…ん?」
「装備は確か、ここに入ってたよな」
「食いもんがここか」
いそいそと皆が冒険へ出かける準備に取り掛かる。1人を除いて。
「ん……??」
「ゾム、お前も手伝えよ…」
「ゾムさん、さっきから何を唸ってるんですか?」
「かまちょか〜?」
「……?」
じっと、ゾムと呼ばれた男がコネシマの顔を覗き込んだ。
「シッマの体が生身なら、こっちで死んだらリスポーン出来へんってことか?」
「……は?」
「俺らはキャラクターの体を『借りてる』だけやから死に戻りも安易な死も、すぐにリスポーンでやり直せるけど…。シッマのその見た目からするに、それは俺らとは別ってことやろ?」
「……。確かに、言ってることの理屈は理解できる」
「てことは、オレちゃん姫ちゃんになるってこと…?」
一同が唖然とした。
「……シッマ、お前1人で突っ走るなや?」
「おう…」
「シッマは当分、遠距離武器担当やな」
「そもそも、ここから脱出するための明確な目的はあるんですか?」
「そこよなぁ…」
「やっぱりエンドラ討伐?」
「が、妥当やなぁ…」
「とりあえず、最初の目的はエンドラやな」
てことは、オレはここから帰れへんから、こいつらが落ちるときはオレ1人になんのか。
「…ん?シッマどしたん、そんな暗い顔して」
「いや、オレ1人なんやなぁって…」
「…?アホか、みんな居るやろ」
その言葉にコネシマが驚いたように目を見開いた。それから、へにゃりと端正に作られた顔が崩れる。
「せやな」
「…。…ははーん、シッマさては1人で寝るんが怖いんか?」
「ちゃうわ!」
「コネシマさん、以外に寂しがりやなんですね」
「だから、ちゃうねん!」
くそっ、いらんこと言わんで良かった…。
「それより、エンドラ行くんやろ!準備せな!」
「そうですね、コネシマさんの防具はゴリゴリのエンチャントを付けましょうか」
「せやなぁ、死なれても困るし」
「よし、そしたら早速資源探しと、経験値集めやな」
「シッマはみんなの中にいろよー」
「絶対はぐれんとってくださいね」
「大丈夫やて!」
明確な目的が分からない上、縛りを課せられた脱出劇に一抹の不安が彼の中でよぎった。
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おもろい!次回も楽しみです