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#夢小説
彩★☆(*´з`*)☆★
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保科は昔から、戦地に出る時、いつも同じことを言う。
絶対倒してきます、でもなく。
死なずに帰ってきます、でもない。
心配しなくても、僕がおりますから。みたいに私を元気付けたあと。
行ってきます、って一言だけ。
保科は前衛。
私は一番遠いところ。
保科がいなかったら、私の得意はなかなか難しい。
いつも、彼がぼろぼろになって私のために道を切り開くのを、一番危険から遠い場所で眺めることしかできなかった。
それでも。あいつは毎回、どれだけ傷ついても、死にかけても、必ず帰ってきた。
必ず、帰ってきたんだ。
だから、私には保科が帰ってくることが当たり前だった。
だから、私は保科が帰ってくることを疑ったことがなかった。
今日も、いつもと変わらない。
いつもと同じの、過激な業務。
スーツを着込む私に、また保科が声を掛けた。
「亜白隊長。今日もよろしくお願いします」
今日は、行ってくるって言わないんだな。
若干の引っかかり。
怪獣発生アラートにかき消される程度。
ほんのわずかな違和感だった。
今思えば、行ってきますという言葉は、帰還を約束する御呪いだったのかもしれない。
「行って」「来る」
最初から、戻ってくることありきの言葉だった。
別れの挨拶に見せかけた、帰りを約束する呪いだった。
保科は、
もう帰ってこなかった。
歩いていて無意識に開く、人一人分ほどの謎の空間。
街を歩いていて、コーヒーの香りがした時。
本屋から真新しいインクの香りがした時。
あいつが好きだといった、モンブランの香りがした時。
なまった関西特有のイントネーションが耳に入った時。
いつも自分の前にいた最強の副官を思い出す。
自分がもっと早かったなら。
もっと強かったなら。
もっと保科の言動に気を配っていた、なら。
あいつは死ななかったんじゃないか、と思っている。
いつだってこうだ。
私が撃つまでには、いつだって足止めしてくれた誰かの犠牲がある。
今回はたまたま、保科が犠牲になっただけだ。
そう思うには、少々無理があった。
保科が今回、行ってきますと言わなかったのは、ただの言い忘れかもしれない。
でも、あいつに限ってそれはないと、そう思わざるを得なかった。
以前、保科は言っていた。
『亜白隊長が撃ってくれるって信じとるから、僕は安心して前にでて、足止めに徹せるんですよ。』
『亜白隊長まで繋げば、どんな犠牲を払っても繋げれば、亜白隊長が倒してくれる。まぁどんな犠牲も払うつもりはないですけどね』
言い忘れなら、どれほどよかっただろう。
もし、彼が何らかの理由で帰るつもりがなかったとしたら。
あるいは、言い忘れたまま前にでて、毎回欠かさなかった御呪いのせいで帰れなくなったとしたら。
あの一言が、なかったから?
世の中には言霊という言葉がある。
もちろん、そんな言葉一つで人の生死が決まるわけじゃない。
それでも、たまたまだと思うのにはあまりに苦しい偶然が積み重なっていた。
保科は、最後まで私を信じて前に出た。
それなのに、自分はその信頼を裏切ってしまったのではないか。
私は保科を信頼しているし、保科もきっと私を信頼していた。
一方通行なんかじゃない。
自分は、信頼に応えられなかったのかもしれない。
もし、この場に彼がいたなら。
亜白隊長のせいちゃいます、なんて責任を自分が持っただろう。
保科宗四郎はそういうやつだ。
あいつは誰かに頼られるために動いていた。
道を私までつなぐために傷ついていた。
自分がもしいなくなっても部隊がまわるように考えていた。
とんでもない、嘘つきだった。
違うな。
嘘つきは、私だ。
せっかく繋いでもらった道を無下にした。
彼が命を賭して繋いでくれたのに、失敗した。
隊長である価値なし、だ。
私には保科が必要だ。
保科が私のために無茶をしていたことも。
隊服の下にいつもどこかしら傷を隠していたことも。
いつか、彼の無理にも限界がくることも。
見えていた。
気づいていた。
わかっていた。
必要だった、から。
もっと労るべきだった。
すまない。保科。
本当にありがとう。
保科のおかげで、私はここまで歩いて来られた。
お前を失ったのは、私のミスだ。
保科が抜けたことのよる防衛隊へのダメージは計り知れない。
それでも、繋いでもらった道を。
託された未来を。
お前が育てた若芽たちを。
これからは私が引き継ぐ。
もう、戦力は摘ませない。
それが、ここまでずっと守られてきた私の罪の清算になれば幸いだ。
見ておけ、保科。
コメント
1件
保科……。読んでいて、胸の奥がぎゅっとなりました。「行ってきます」が帰還の約束だったっていう視点、すごく刺さります。亜白隊長が「見えていた。気づいていた。わかっていた」と認める場面、ああこれだ、って思いました。守られてきた側の、それでも託されたものを受け取る決意。短い中に、ふたりの積み重ねた時間がぎっしり詰まっていて、じんわりと熱くなりました。素敵な作品をありがとうございます。