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スタート
◆面会章:イタリー vs ナチ人格
1イタリーの呼びかけと、嘲笑
面会室の空気は重かった。
窓から差し込む白い光が、部屋をより一層寒々しく見せる。
イタリーは震える指先を握りしめ、
真正面に座る“ドイツの姿をした男”を睨む。
イタリー「……ドイツ……聞こえるなんね……?
なぁ、返事するんよ……ioはここにいるんね……」
しかし返ってきたのは――
どこまでも冷たく、優しい声。
ナチ「返事なら、しているよ。
でも君が呼んでいるのは“彼”だろう?
残念だね……もうここにはいないよ。」
イタリーの喉が締めつけられる。
イタリー「やめろ……!ドイツを返せなんね……ッ!」
ナチの笑みは優雅だった。
ナチ「返す?
はは、可愛いことを言うね。
彼は自分から沈んだのさ。
眠りたがってるんだよ。
“僕の歌”が、心地いいって。」
その瞬間、
イタリーの肩がびくりと震えた。
“歌”――ナチがドイツを追い詰めた悪夢の曲。
ドイツの中で永遠に響き続ける、呪い。
イタリーはテーブルを掴む。
イタリー「……お前はただの幻覚なんね。人格のフリをしてるだけなんね……
本物じゃない……本物なわけない……!」
ナチは首をかしげる。
ナチ「じゃあどうして怖がってるの?
“君は知ってる”んだろう?
二重人格の恐ろしさをさ。」
イタリーの顔が強張る。
ナチ「君の“イタ王”の声も……
まだ奥に残ってるんじゃないの?」
イタリー「……黙れ。」
ナチ「ふふ。触れられたくない記憶?
“僕”が出てきたら、君は壊れるの……知ってるよ。」
イタリーの胸が締め上げられた。
これ以上ここにいると、
本気で精神をもっていかれる。
イタリー「……もういいなんね。
ここにいるのは……ドイツじゃない。」
イタリーは席を離れようとした。
ナチは嬉しそうに、
ガラス越しの影のように微笑んでいる。
2|「ドイツの声」を使った揺さぶり
面会室のドアを職員が開ける。
イタリーが立ち上がろうとした、その瞬間。
背後から――
聞き覚えのある、弱り切った声が。
ドイツ「……イタリー……待って……
俺……ここだ……助け……」
イタリーは凍りついた。
振り向くと、ドイツの身体は、
涙を浮かべた“彼”の目がイタリーを見つめていた。
ドイツ「怖い……怖いんだ……
頼む……帰らないでくれ……イタリー……」
声も、表情も、震えも、
全部“ドイツ”だった。
しかしイタリーは動けなかった。
直感で分かる。
これは全部、ナチの芝居だ。
ドイツの人格を装っているだけ。
それにドイツはioの事イタリーって呼ばない。
イタリー「……それ以上……ドイツの声を使うんじゃないなんね……
お前は……ドイツじゃない。」
その言葉を聞いた瞬間――
ドイツの泣き顔が、ふっと消えた。
そしてナチの冷たい笑みに戻る。
ナチ「正解。」
ナチ「やっぱり君は賢いね、イタリー。」
イタリーの心が折れそうになる。
4|帰宅後の“留守電”
深夜。
イタリーは家に戻ったものの、胸の圧迫感は消えなかった。
ソファに座り込んだその時。
――ピッ。
スマホの留守電アイコンが点滅している。
io「……誰なんね、こんな時間に……」
再生ボタンを押す。
最初は雑音。
カサ……カサ……
湿った、病室のような空気音。
そして――
ドイツの声。
『イタリア……?
聞こえるか……?』
イタリーは血の気が引いた。
ドイツ『俺……助けて……
あいつが……くる……
ナチが……外に……』
ガガッ……ノイズ……
ドイツ『やめろッ!!
来るな!!やめ――――』
――プツン。
通話は切れた。
イタリーは震える指でスマホを握りしめた。
イタリー「……嘘……なんね……
こんなの……届くはず……ない……」
305号室から外部への電話は不可能。
病院は完全封鎖の通信管理。
届くわけがない。
だが――
届いてしまった。
イタリー「……ナチ……“外”に干渉し始めてるんね……
そんなこと……あり得ないなんに……!」
イタリーは頭を抱えた。
3|一方その頃:病院では
医師たちは深夜の会議をしていた。
「最近、彼は驚くほど落ち着いている。」
「暴力も自傷もなし。」
「対話能力も高い。
元主人格|元主人格より、社会復帰の可能性がある。」
彼らは結論を下した。
「薬の量をさらに減らす」
「もう1人の人格もう1人の人格を“主体”主体とする再適応プログラムへ移行する」
「退院の方向で検討」
――狂気の決定だった。
ナチは、白い病室の中で、
まるでそれを知っているかのように微笑んでいた。
ナチ「……いいね。
ようやく僕の“外の世界”が見れる。」
彼の瞳はもう、
完全に“ドイツのもの”ではなかった。
1話ハート100ありがとうございます!
励みになります!
需要あるなら続き書き貯めしてるので続き投稿しようかな