テラーノベル
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注意→呪鬼2夢の2話です。1話から見るのを強くオススメします。
かくかくしかじか「──ってわけで、ここの校門も窓も全部閉じられてて、外には出られない。俺たちは今、“鬼化した猿山らだお”に狙われてる。さっきも音楽室で襲われかけて……子どもたちも巻き込まれてんだ」
天野絵斗は珍しく真剣な口調で語った。
彼の向かいに立つ赤ジャージの男──雉野柊は、腕を組んで頷いているようで、どこかぼんやりしていた。
そして、ひと拍おいて口を開いた。
「えぇ〜……出られんのか……」
そこまで言うと、なぜか顔をほころばせて、にこにこと笑った。
「まぁええわ、暇やし。夜の小学校探検とか楽しいに決まっとるし。俺も着いてく!」
「だーかーらー!!!」
絵斗が爆発した。
「命が危ないからやめろって、俺、さっきから5回くらい言ったよなァ!?一回ごとにちゃんと“わぁ大変やな〜”とか言ってたやん!?あれ何!?」
「え〜でも、鬼て言うてもらだおくんなんやろ?俺、久しぶりに会いたかったし!」
「お前、話聞いてた!?」
絵斗はもう泣きそうだった。
「“鬼”になってんだぞ!?マジで“正気じゃない”の!俺らを笑いながら襲ってきたの!刀持って!わかる!?」
柊は、逆に目を丸くして口を開いた。
「かまへんかまへん。……あいつもとより正気かどうか怪しかったやん?」
「だめだこりゃ」
その会話を聞いていたトントンが、そっとゾムの袖を引いた。
「……思ったよりやべー人かも……声掛けんかったらよかった……」
ゾムは小声で答えた。
「おせぇよ、もう“やべぇ”ってレベルじゃねぇよ」
「さーーーて!」
柊が両手を広げて勢いよく振り返る。
「止まっとっても仕方ないわな!!ガキんちょ①!②!③!④!そしてロボちゃん!それからあまーの!探検いっくぞー!」
「えええええ!?番号呼びぃ!?」
コネシマが天に向かって叫んだ。
「せめて名前とか聞くとかしてぇや!」
「おいおいおいおい!!!」
うつ先生も半ば本気の声を出す。
「この人大バカなん!?校内に猿山先生うろついとるんやで!?ヤベェって、マジでヤベェって!」
「おいロボロ!!」
ゾムが睨む。
「止めろ、こいつを!!お前知っとるあんちゃんなんやろ!?」
「止めれたら苦労してないよ!!!」
ロボロが涙目で叫ぶ。
「……雉野さん!落ち着いてください!」
トントンが必死に前へ出る。
「状況を理解しましょう!行動には計画性が必要なんです!今は情報収集と防衛が先──」
「……あ、ごめん、なんか言った?」
柊は満面の笑顔でグルグル逆上がりをしていた。
トントンが膝から崩れ落ちる。
「通じる気がしない……!」
「じゃー決まり!俺が先頭でいくから、ついてこーい!」
柊はまるで遠足の引率者のように、何の躊躇もなく昇降口の方へ歩き出す。
「いやいやいやいやいや!!」
子供たちの悲鳴が響いた。
絵斗は頭を抱えながら呟いた。
「……なんでこんなに強キャラなのに安心感がゼロなんだよ……」
「さーーーっ!」
赤ジャージが軽快に回れ右して、両腕をびしっと広げる。
昇降口前、夕闇に沈みかけた廊下にその声が響きわたった。
「ガキんちょ①②③④ッ!そしてロボちゃん!あまーのも!いざ!!探検いくぞー!!」
「もしかして俺らずーーっと番号呼びぃ!?!?」
一番に悲鳴をあげたのはコネシマだった。
「せめて名前とか、聞こうとする姿勢とかないん!?」
「おいおいおいおいおい!!!」
うつ先生が手を振り上げて抗議する。
「この人大バカなん!?今、校内に猿山先生おるんやぞ!?俺らさっき死にかけたばっかやねんで!?!?」
「おいロボロ!!」
ゾムが鬼気迫る勢いでロボロに詰め寄る。
「止めろ!!こいつお前の知り合いなんやろ!!責任取れや!!」
「ムリだよぉぉぉ!!」
ロボロが本気泣き寸前で叫ぶ。
「止めれたら苦労してないってば!!兄さんですら頭抱えてるのに、なんで僕に言うの!!?」
「雉野さん!落ち着いてくれェ!」
トントンが最前線に立ち、両手を広げる。
「探検じゃないんです!脱出と自衛なんです!!今、最も必要なのは計画性であって──」
「ん?なにか言った?」
柊は満面の笑みでグルングルン逆上がりをしていた。
トントンはそっと地面に膝をついた。
「この人……ガチで通じない……ッ!」
「よーし!んじゃ俺が先頭いくから、みんな続いてなー!」
柊はずんずんと昇降口方面へ歩き出す。
「らだおぉ〜!おるか〜?めっちゃ会いたかってん〜!」
「会っちゃダメぇぇぇ!!!」
子供たちの叫びが廊下に木霊した。
「……なんでこんな明るいのに、安心感がゼロなんだよ……」
絵斗はそっと頭を抱えた。
探索効率を上げるため、天野刑事の提案で、子供たち+柊を二手に分けることになった。
昇降口前で、緊張感ゼロのジャンケン大会──が、運命を分けた。
「…チョキ、の人──負けね」
天野刑事が静かに言うと、三人の子供が崩れ落ちた。
ゾム「うわあああああ!負けたぁぁぁ!!!」
うつ「代わってくれぇ〜!!ほんまに代わってくれぇ〜!!」
トントン「絶対半々行動ダメやって!この人!この人に随行させたらあかん!!天野刑事しか制御できひんのに!!」
一方、勝ち抜けた二人と大人一人は──
ロボロ「……やった……勝った……」
コネシマ「生き残り確定やわ……」
天野刑事「いや全員で帰るからね!なんか命の優劣みたいな空気になってるけど!」
「おっしゃー!こっちのチーム決まりやな!俺とガキんちょ①②④や!」
柊が腕を組んでニカッと笑った。
ゾム「せめて番号呼びやめろや!!」
うつ「ほんまに死ぬって……マジで死ぬって……」
トントン「これは絶対、二手に分かれちゃダメなパターンの人や……!」
「いざとなったら散開して逃げるからな」
ゾムが沈痛な面持ちで言った。
「ひどっ!!」
トントンが即座に反応。
「ほんまやで!?ゾムだけ逃げそうやし、うつ先生は泣き叫んでその場から動かへんし!!僕だけや!冷静に判断して柊さんの服の裾掴んででも逃げようとするの!!」
「おお~なんか結束深まってるやん!チームの絆ってええよな~!」
柊はまるで遠足の引率のような笑顔で、赤ジャージをひるがえした。
「……誰もお前についていきたいとは言ってない……!」
三人の少年たちの心が、完全にひとつになった。
しかし、ひとつになっても大の大人のアホみたいな暴走は止められない。
校舎2階の廊下を駆け抜ける赤ジャージ。
ピョン!と軽々と窓枠を飛び越え、壁を蹴って着地──もはや忍者か。
「うひゃー!こっちの廊下は真っ直ぐでええわ〜!」
柊はスキップしながら叫んだ。
「おいおいおいおいッ!!」
トントンが叫ぶ。
「雉野さ、おい!あいつ今どこ行ったんや!!?」
「まってって言ってるやんけ!!!」
ゾムも息を切らせながら怒鳴った。
「おいキジィ!落ち着きもてや!目的とか意識しろや!!」
「はぁっ、はぁっ……」
うつ先生はもう駄目だった。
「俺ら……猿山から逃げるより、キジ探してる時間の方が長いで……」
「つかれた!休憩!」
唐突にキキッと音を立てて柊が止まった。
「お、パソコン室あるやん!クーラー効いてへんかな!あ、鍵しまっとる!①〜鍵ない?」
ゾム「誰が①やねん!せめてゾムって呼んでくれへん!?」
「ん?ゾム?ええ名前やな〜ゾム!でもガキんちょ①の方が呼びやすくてさぁ〜」
「やめてくれぇ……!誰やか分からへん……!」
トントンが頭を抱えてうずくまる。
「雉野さん……頼むから目的持とう?俺ら鬼から逃げてる最中なんやで……?」
うつ先生が泣き声で訴えると、柊はぴょこんと振り向いた。
「えっ?俺ら今、鬼ごっこしとったん?」
「うん、オレらだけ違う意味で命がけな……!!!」
次回へつづく→
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続き楽しみにしときます!