テラーノベル
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夜の帳が静かに降りるころ、部屋の中には微かなシーツの擦れる音と、低く甘い息づかいが混ざり合っていた。
「……みこと、もっとこっち見て」
すちの声は、喉の奥で震えるように低い。ベッドの上、乱れた髪を額に貼りつけたまま、みことはぼんやりと彼を見上げた。目尻がとろんと垂れていて、何もかも無防備にさらけ出している。
「……へへ、なんか今日は……すち、やけに優しい……」
すちの唇がピクリと動いた。笑みと、独占欲の混じるそれは、彼の中にいつも燻っている欲を隠すどころか、あらわにしていた。
そして──その指先が、枕元にさりげなく置いたスマートフォンにそっと触れた。
録画ボタンに、そっと指が落ちる。
「……優しいの、嫌?」
「ん……やだ、じゃない……でも、なんか……ふしぎ」
すちは、笑った。
「ふしぎでも、気持ちいいんだろ」
「ん……うん……」
その表情を、声を、目の奥の潤みまでも──すべて逃さずに残しておきたいと、すちは思っていた。誰にも見せない。絶対に、自分だけのもの。
撮っていることに、気づかないままでいてくれたほうがいい。
けれど、みことが不意に首をかしげて、小さくつぶやく。
「……ねぇ、なんで携帯……赤く光ってるの……?」
一瞬の沈黙。すちは動揺など見せず、ただ唇を近づけ、みことの耳元で囁いた。
「それも、みことが可愛すぎるせい」
赤く染まった頬のまま、みことは何も言わず、ただすちの背に手を回した。
それが、拒絶ではないと知って、すちは深く口角を上げた──
独占欲の檻の中、みことは今夜も、知らずにすちのものになっていく。
ベッドの上、すちはみことの脚を両腕でしっかりと抱えたまま、揺れる身体を逃さないように動きを刻んでいた。
「……っ、ん……すち……、また深く、……っ」
「……声、我慢すんなよ。今夜はちゃんと、全部……残したいから」
みことが、ふと瞬きをした。汗に濡れた睫毛がかすかに震える。
「……え……?」
すちは返事をせず、代わりにみことの首筋に舌を這わせた。
その隙に、手元でスマホのカメラアングルをそっと調整する。みことの乱れた表情、赤く染まった肌、揺れる身体のすべてが枠に収まっているのを確認しながら──
「ほんと……綺麗。……誰にも見せないけど」
吐息のような声。
「……すち、なに……言って……」
言葉の意味を完全には理解していないみことが、甘くかすれた声で問い返す。けれど、次の瞬間、腰の奥をぐっと突き上げられ、彼の問いは蕩けた声へと変わった。
「──あ……っ、ん……、も……やだぁ……」
「やだ、って言いながら……ちゃんと締めてんじゃん。……カメラ越しでも、わかるくらいに」
「えっ……カメラ……?」
みことが、やっと理解したように目を見開く。その頬に、羞恥と快感とが混ざった赤が濃く広がっていった。
「……とってるの……? ほんとに……?」
「今さら消さないよ。ほら、こんな顔してるの、めちゃくちゃ……エロい」
片手でカメラを操作しながら、もう片方の手でみことの腰をしっかりと抱え直し、奥へと深く──深く──
「すち、……んぁ……、そんなの……、だめ……」
「だめじゃない。俺だけのものなんだから……いいよね?」
記録されることに気づいたみことの目が潤む。それでも彼は、すちを拒まなかった。
いや、拒めるはずもない。ずっと、甘やかされて、快楽に溺れて、すちだけのものとして育てられてきたのだから。
──ピントの合った画面の中で、みことの身体はすちの腕の中で揺れていた。
それは、どんな宝石よりも価値のある、彼だけの「証拠」。
決して、誰の目にも触れさせない。
だけど、すちはそれを──何度でも、繰り返し見るだろう。
甘く濡れたその声を、涙混じりの顔を、すべてを愛し尽くすように。
「──やっぱ、可愛すぎ。……見返すたび、俺……我慢できなくなるな」
みことは、恥ずかしさに身をよじらせながらも、すちの腕の中から逃げようとはしなかった。
泣きそうに揺れる目が、真正面からレンズを見ている。
「……すち、……そんなの、ずるいよ……」
「なにが?」
「だって……そんなの……撮られてたら……変になっちゃう……」
「いいよ、変になって。そういう顔も、もっと撮る」
すちの手が、いつになく丁寧に──けれど容赦なく、みことの敏感なところを撫でていく。
映像越しにもわかるほど、彼の肌が汗と涙で濡れていた。
「……んっ……や、っ……すち、も……おかしくなっちゃう……っ……」
「もうとっくになってる。それに、みことに狂わされてんのは俺の方だ」
そう言いながら、すちはスマホを一度置き、両手でみことを抱きしめた。
そのまま上体を引き寄せ、背中を抱えたまま、膝立ちの姿勢へと持ち上げる。
「──やっ、な、に、これ……っ……やだ、すち……恥ずかしい……!」
「カメラの前で泣きながら感じてんの、自分で見たらどんな顔するんだろうな……」
そんな囁きを耳元で吐きながら、すちはみことを上から、下から、まるごと貪るように愛撫した。
脚を絡め、奥まで一体になって。
逃げられない、いや──逃がさない。
「……声、ちゃんと出して……ほら、そう。もっと……俺のためだけに……鳴いて」
耳元で囁かれ、腰を強く引き寄せられて、みことの声が高く跳ねた。
「んぁっ……! だ、めぇ……っ、も、ムリ……っ、ほんとに……壊れちゃう……っ!」
「大丈夫だから」
すちの瞳は、みことしか映していない。カメラの中でも、現実でも。
そして──画面の中で、みことはすすり泣きながらも、またすちの名を甘く呼んでいた。
画面越しに揺れる、みことの泣き顔。
頬を濡らす涙と汗、艶のある唇からこぼれる声──すべてが、すちの欲を煽って止まなかった。
「……ほら、ちゃんと映ってる。今、みことが俺のを……奥まで咥えてるの、丸わかり」
「……っ……そんなの、やだ……っ、恥ずかしいよ……すち……」
みことは、言葉では抗うけれど、身体は素直だった。
奥まで満たされるたび、声を漏らし、ぎゅっとすちの背中に爪を立ててくる。
「でも、イってたよね。さっきも……撮られてるってわかった瞬間に、めちゃくちゃ締めてきたじゃん」
「っ……ちが、……それは、……」
「ねぇ、映ってる自分……見てみる?」
すちはみことの顎に指を添え、ベッド脇に置いたスマホの画面を向けた。
そこには、涙で濡れながら快楽に崩れる自分の姿。ぐったりと力が抜け、背を仰け反らせる直前の──絶頂の瞬間が、鮮明に映し出されていた。
「っ……いやっ、やだやだやだ、見たくない……!」
「……ほんと、かわいい」
すちは動画を止め、スマホを脇に置いた。そしてその手で、みことの頬を包み、優しく、でも逃がさないように口づけを落とす。
「怖くない。……誰にも見せない。俺だけのために……残してる」
「……すち、ばか……」
みことは涙声でそう言いながらも、すちの腰に腕を絡める。
「ばかでいい。……ずっと、みことしか見れなくなるくらい、狂ってたい」
そう呟いた瞬間、すちはみことの脚をもう一度大きく開かせ、カメラを向けることもせず、そのまま奥へと貪るように沈んでいく。
「やぁ……っ、そこ……も、もうっ……むり、壊れちゃう……っ」
みことの髪を指に絡め、首筋を吸い上げ、脚を抱えて、さらに深く──深く突き上げる。
「……声、もっと出して。俺だけの、俺のもんの声……聞かせて」
「……っ、すちっ……すち、すき……っ、こわれても……すちの、だから……っ」
その言葉が、すちの理性を焼き切った。
部屋中に淫靡な音と、甘すぎる声が響き渡る。
幾度も果て、満たされ、それでも、まだ欲しいと感じてしまうのは、
この快楽が「記録された」証明──
自分が誰かに“見られてしまうかもしれない”という背徳と、
でも絶対に「見せてもらえない」安全の中にいるからこそ。
すちだけのものとして、みことは今日も深く刻まれていった。
肌の奥に、記憶の底に、そして──レンズの奥に。
すちの腕の中、みことは荒い息を吐きながらシーツに指を絡ませていた。
背中に滲む汗が冷え、心臓の音だけが耳に響く。
けれど、それでも──すちは終わっていなかった。
「……まだ終わらないよ。もっと、撮りたい」
「……っ、もう、十分でしょ……さっきから、ずっと……っ」
みことの声は掠れている。けれど、拒否の意志はなかった。
ただ、受け入れすぎて身体が追いつかないだけだ。
すちはスマホを手に取り、カメラの画角をみことの顔に寄せた。
涙に濡れた睫毛、ほんのり開いた唇、潤んだ瞳がレンズに映る。
「……いい顔してる……今までで一番……」
「やだ……見ないで、そんなに……」
「見てんの、俺だけだよ。……お前の全部、俺だけが知ってる」
そう囁くと、すちはスマホを左手で構えたまま、右手をみことの脚の間に滑らせた。
「──っぁ……っ、やっ、また……っ、さわんないで……!」
「やだ。見てるだけじゃ足りない。触りたい。中も、声も、ぜんぶ記録しておきたい」
みことの脚がびくんと跳ねる。
敏感になりきったそこを、愛撫されながら、レンズ越しに自分を見られている。
恥ずかしい、なのに……やめてほしいと思えない。
「すち……っ、だめ……、……でも、……きもち……っ」
「……ねぇ、みこちゃん。撮られてるって思うと、興奮するんじゃねぇの?」
「そん、なわけ……っ……!」
否定しようとした瞬間、すちの指がぐっと先端を擦った。
「──ひっ……ぅん、っ、っ……ああ……っ」
「ほら。こんなに、トロトロになって……」
画面に映る自分の顔が、ゆっくりと欲に崩れていくのを、みことは見てしまった。
──怖い。だけど……気持ちいい。
「……やだ、こんなの、やだのに……っ、また、っ、イっちゃう……」
「イって。カメラの前で、いっぱい感じて、もっと可愛くなって」
その言葉に、みことの奥が甘く震えた。
羞恥、屈服、快感、愛情、全部が混ざり合って、意識が白く染まっていく。
「──すち、すち……すき、……すき……っ、やだのに、すきで、こわれる……っ!」
「 ほら、最後、もう一回……カメラに見せて」
ずぶずぶと深く満たされたまま、みことの身体が小刻みに震え、
その瞬間、画面の中で顔を仰け反らせる彼の姿が、すちの目にも焼きついた。
「……よく出来ました」
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