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(薄暗いアパートの一室。雨が窓を叩く音が絶え間なく響く。カーテンは閉め切られ、外の光は一切入らない。床の上に、吉田仁人が膝を抱えて座っている。頰に古い痣が残り、唇の端が切れて乾いた血がこびりついている。)
……また、怒らせちゃったんだ。
(声は掠れて、ほとんど囁きに近い。震える指で自分の腕を抱きしめる。袖が捲れ上がって、青紫の痕が何本も見える)
俺が悪いんだよな。
いつも、君の機嫌を損ねる。
君が優しいときは、俺もちゃんと笑えるのに……
俺が少しでも目を逸らしたり、返事が遅れたりすると、
君はすぐ……こうなる。
(ゆっくり立ち上がって、鏡の前に立つ。鏡の中の自分を見て、歪んだ笑みを浮かべる)
今日も、君に「可愛い」って言ってもらいたかった。
でも、俺の顔見て、君は「醜い」って言った。
だから、俺はもっと綺麗になろうと思って……
でも、鏡に映るのは、いつもこんな顔。
(指で頰の痣をなぞる。痛みが走って、息を詰まらせる)
……痛いよ。
(でも声は出さない。出せば、君がまた怒るから)
君が帰ってきたら、謝ろう。
「ごめんね」って、何度も言う。
そうすれば、君は少しだけ優しくなる。
少しだけ、抱きしめてくれる。
その瞬間だけは、俺、生きてるって感じがするんだ。
(ベッドに戻って、膝を抱え直す。体が小刻みに震える)
でも、最近思うんだ。
このままじゃ、俺……本当に壊れちゃうかも。
君に全部捧げて、全部許されて、全部愛されて……
それでも足りないなら、もう、いらないかも。
(引き出しから、小さなカッターを取り出す。刃先が蛍光灯に光る)
……これで、終われるかな。
(腕に刃を当てる。皮膚が薄く切れて、赤い線が引かれる。血がぽたりと落ちる)
痛い……けど、君に殴られるより、ずっとマシ。
(もう一度、深く入れる。血がどんどん溢れて、シーツを赤く染める)
ごめんね、君。
俺、弱いんだ。
君の愛に、耐えられなかった。
(体が傾いて、床に崩れ落ちる。血が広がっていく)
……ありがとう。
君と一緒にいられて、幸せだったよ。
(息が浅くなって、目が虚ろになる。唇がかすかに動く)
……さよなら。
(血の海の中で、吉田仁人は静かに目を閉じる。
部屋に残るのは、雨音と、止まらない血の滴る音だけ)
(可哀想で、壊れて、でもどこか安堵したような、最後の表情)