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クラスに戻ると、何事もなかったように帰って来た私へ、驚いた目が多数向けられていた。
そこでマーガレットが一喝
「皆さん、仲良くしましょうね。何だってここは学園なんですもの。それに皆様もいらぬ不興は買いたくないでしょう?」
そこからは、影口は止んだ。これこそ他の人から不興を買っていそうで怖いが、バックにマーガレットがいることを考えると少しは安心できる。
そんな風に学園初日は終わった。
帰りは寮へ行く前に、大通りを見ていく事にした。ゲームでデートを何度もした場所だ。
あの雑貨屋も、あのレストランも、あの裏路地も、全て覚えている。
とりあえず今日は時間がないので、なんとなく見ていくだけにした。
(時間があったら、次は文房具屋に行ってあのガラスペン買おーっと)
「お前!!またか!!」
突然の怒鳴り声に思わず体がビクつく。
声の方へ顔を向けると、そこには八百屋の男が大きいフードを被った小さな子供の腕をつかんで上に上げる姿があった。
「果物を盗みに来て!!」
子供は男に乱雑に投げ捨てられた後、
「二度と来るんじゃねぇ!!」
と吐き捨てられていた。
周りは見てみぬふりをしている。
その子供が悪いのだろう。盗もうとしたのだし。他の人と同じように見なかったことにすればいい。
でも、でも
ここで見捨てたら
ヒロインに
シオ・ルドーシュなれないようで
汚してしまいそうで
悪者にしてしまいそうで
だから
「大丈夫?」
気がつけば、私は子供にかけよっていた。
子供は口をパクパクさせているが、声が聞こえてこない。それほど弱っているということなのだろう。
人前で魔法を使うのには抵抗があるため、
寮に向かうことにした。
子供をお姫様抱っこして向かったのだが、
予想以上に軽かったため、全く苦にならずに着いた。
(あれ、誰もいない…?)
これも嫌がらせの延長戦なのかとも思ったが、そもそも今日は悪口くらいで済んでいるので、自意識過剰だと思い自分の部屋に行った。
自分の部屋は事前に知っていたため、普通に部屋に入った。
自身のベッドに子供を優しく寝かせる。
「さぁ、回復魔法の出番よ!!」
この世界には魔法があり、それぞれ、火、水、土、風、光、闇の6つの属性に分かれている。ヒロインは闇以外の5つの属性を使える。そのうち光は、回復・結界特化で、ヒロインの得意とする属性だ。
手に魔力を集め、その手を子供にかざす。
「ヒール!!」
子供の周りが優しい光で包まれる。暖かい光だ。
しばらくして子供が目をあけた。
「大丈夫?痛いところない?」
子供はビクッと体を震わせて部屋の端へと逃げた。逃げた勢いで、フードが外れる。
頭には、角が生えていた。黒く、小さく。
この世界で、その特徴を持つ種族を私は1つしか知らない。
「あなたは、魔族なの…?」
魔族。それは、人間の敵。忌むべき存在。悪の元凶。
そして、唯一このゲームで根絶やしされる未来を持った種族であった。