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#限界メンバー
翠♪(不定期投稿)
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さて、どうしたものか。成瀬力二は今世紀トップテンに入る悩みを抱えていた。
そう、目の前の野郎二人のせいである。
「ねーえー、なんで俺まで巻き込まれてるわけー??」
「アオセン人柱にして逃げるんで。犠牲は最少に抑えてやるよ」
「なんだ生意気だなコイツ」
ひとまずどちらも手錠でとっ捕まえた。説明は何度もしたし、ここから逃げられると思うなと物理的に杭打ちにもした。
しかし、それでもうるさいので。
「…とりあえず、服着てもらいましょっか。ほら公開処刑にしてやるよ」
絶望させたほうがよほど早いことに気が付いた成瀬力二は手早い。これは必要な犠牲だったのだ。
「はい、つぼ浦さんはこれ着てくださいね」
「イヤだな、皮膚呼吸ができなくなっちまう」
「真っ裸で客の前に出たら呼吸が二度とできなくなりますよ」
「そっちのほうがマシだ」
「はいはい、黙って着る」
どうにか更衣室に押し込んで、衣装を渡す。熱情の激しい男だということを隠そうともせず、それでいて素性を知らないと思わず騙されてしまいそうな、そんな衣装を渡した。
「ゲ、これってボタン全部留めないとダメか?首詰まりすぎて頭取りたくなるぜ」
「グロいな。いったん全部留めてください、そこから調整します」
嫌そうに目を伏せてシャツのボタンに手をかけるつぼ浦は、年相応の色男に擬態できそうだった。黙ればイケメンってこのことか、と現実逃避をする成瀬は、小指だけに塗られたマニキュアが目につく。
「あれ。つぼ浦さんってそんなオシャレとか好きですっけ」
「ンー、似合わなかったか?」
「や、めっちゃ似合うんでほかの指も塗りましょってお誘いですね」
夏休みという言葉がよく似合う肌に、酸いも甘いも知ったような黒のマニキュアは案外映えた。それならと当初の計画とは少し毛色の違う服を提案してみる。
「コレ羽織りましょ、アンタには堅い黒よりこっちが良いっすよ」
「ほら見たことか。やっとカニ君もわかってきたな」
灰色のYシャツは上二つを外して、ジャケットは黒の総柄ジャケットからワインレッドのベロアジャケットに変更。細やかな光沢が、動きが大きい狂犬を悪い男に見せかける。カッチリ着てしまうより、ゆるく羽織ったほうが余白が生まれてつぼ浦も気に入るだろう。
「おーいいじゃないですか。なんか足りないんでアクセ足しますね」
「アクセェ?じゃあアレにしてくれ。メリケンサック」
「接客業でそれが許されると思うなよ」
「ダメか。カニ君は俺を何時間拘束してりゃ満足いくんだ」
「どれが良いかなー、あ。コレどっすか、金のほっそいネックレス」
小麦色の一歩手前に細い金のシンプルなネックレスを掲げてみれば、それはもうよく似合う。反射光が肌にも当たるので、近くで見るとムードっぽい何かしらも作れてしまうが。
「いいんじゃないか、俺は何もわからん」
「じゃあそろそろメイクとかも」
「アーーアオセンは全く服のセンスがないから変なことになってんじゃねえのか!?」
「ウワ無理矢理話そらしたな今」
「ほら、早く行ってこい。な?」
「らだおは既に遊んだ、違う。もう選んだあとっすよ」
「メイクもしたのか?」
「しました。途中からチベットスナギツネみてえで面白かったっすよ。写真あるけど見ますか」
「それは見たいな、どんなのだ?」
スマホの画面をつぼ浦の顔に近付ける。
「ッハハ!マジで虚無じゃねえか!こりゃ傑作だな」
「アー待って待ってサングラスでそのまま笑うの悪いギャップすぎるんでメガネにしましょっか」
「イヤだが?」
「拒否権があると思います?」
「チクショウ嵌められたァ!!」
「さー行きましょーね、らだおとおんなじ顔すんのか知りたいんすよォ」
「誰かー!!」
「お、つぼ浦おかえり。お前も若干メイクされたんだ」
「そっすよ、カニ君が強引にしてきたんで」
「あは、かわいそー」
「感情こもってないっす」
「込めてないから」
「大事な後輩なのに!?」
「つぼ浦だからだよ、どーせ許してくれるでしょ」
普段と違う空気を漂わせる青井はどこか危険な男に見えてしまった。緩やかに目を細めるだけでも、口説かれている気分に陥るような雰囲気が二人を包む。
「エ、アオセン…?」
「んー?なに?」
それが、二人を知らないなら見える世界だ。知っているなら、続く言葉はただ一つ。
「俺をおちょくってます?」
「おっまえ、ほんとにさぁ…」
「つぼ浦さん、流石に今のはないっすわ」
「カニ君、帰ってきてたんだな!」
「そこじゃないし。うわぁ、今の撮ってた?」
「撮ってた撮ってた。いい感じのとこで切って投稿するか」
「そうしよ。つぼ浦はフラグを折るのが上手って書いとこ」
「…とりあえず馬鹿にされてることだけはわかるからな?同じ言葉を使ってる時点でこっちはわかってんだよ!」
「やっべ怒った。ほらつぼ浦さん、そろそろ姫来ますよ」
「そーだそーだ、既に待ってる市民もいるからイベントテロになるぞー」
「それはめんどい。あとで何発か殴るな」
イベントが終わった後の死刑宣告が、青井と成瀬を青ざめさせた。これからが本番だというのに。