壮吾「昨夜の記録を読み上げます。相川先輩、香山先輩の地域で吸血鬼1体。詩島先輩と一之瀬先輩の地域で吸血鬼4体。合計5体の吸血鬼が出現しました」
恵里香「…一夜に5体もの吸血鬼が出るというのは、あまり聞きませんね」
参考書類に目を通しながら、恵里香が言う。
一夜に出現する吸血鬼は、ほんの1、2体くらいしかいない。
なのに、研究所の者たちが見回りを始めたその夜のタイミングで、多くの吸血鬼が出現した。
圭一「…黒幕が、いるんじゃないか」
その言葉を聞き、全員が一斉に圭一を見る。
圭一「あまりにもタイミングが良すぎるよ。まるで僕たちに狙いを定めたように5体の吸血鬼が動き出した。みんな、吸血鬼にない物は何かわかるか?」
由依「…知能…」
由依が圭一の目を見てそう言うと、圭一は大きく頷いた。
圭一「そう、僕たちが相手にしている吸血鬼には知能がない。奴らの背後には黒幕がいて、知能のない吸血鬼たちを自由に操っていると、僕は予想してる」
研究所内がしん、と静まり返る。
口を開いたのは、颯だった。
颯「黒幕が吸血鬼を操ってるってことは…そいつは知能があるってことだよな」
圭一「そうなるね」
颯「じゃあ、吸血鬼じゃねえ可能性もあるって訳か」
颯が発した言葉に、全員が驚きを隠せなかった。
彩「それ…どういうこと!?」
颯「何も吸血鬼を操ってるのも吸血鬼とは限らねえだろ。…他の生物か、或いは人間か」
吸血鬼を操っている黒幕は人間かもしれない。
その説は否定出来なかった。
彩「ていうか…まだ黒幕がいるって決まった訳じゃ…!!」
圭一「でも、僕たちが見回りを始めた夜に吸血鬼が多く出たんだ。たまたま多い数が街に出たと考えても、都合が良すぎる。しかも僕たちの担当地域にしか吸血鬼は出ていないんだ」
疑いの余地はない圭一の主張に、彩は黙りこくった。
将斗「…だとすると、次にやるべき事は、黒幕の捜索ですか」
彩「そう、ね」
将斗の問いに彩が頷く。
由依「でも、どうやって…?」
その時、菫が言った。
菫「私の神社に、吸血鬼の参考書物があるの。何か手掛かりになるかもしれない」
圭一「それなら、菫は午後にその書物を取りに行ってくれないか」
菫「わかったわ」
颯「必要なこともわかったし、会議はこれで終わろう」
「はい」
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